DBJが「日本版CCRCから『生涯活躍のまち』へ~進む地方への移住誘致施策と地域活性化政策~」レポートを発行
BizReach Regional
2017/08/30 (水) - 07:00

株式会社日本政策投資銀行(代表取締役社長:柳正憲、以下DBJ)は、「日本版CCRCから「生涯活躍のまち」へ~進む地方への移住誘致施策と地域活性化政策~」と題した調査レポートを発行した。

CCRC(※)は米国発祥の高齢者居住生活スタイルであり、米国においては介護保険制度が無いために介護予防のオプションとしての側面が大きいものとなっている。

一方、日本版では、アクティブな老後生活を送る場所の提供というような、日本の社会・制度に適合し、かつ地域社会に開放された「日本版CCRC」の実現が期待されている。

進展する少子高齢化・人口減少とこれらに対応する医療・介護体制の確保などと地方創生などのまちづくりに関する施策の観点から、自治体が主体となる「生涯活躍のまち」(日本版CCRC)構想が注目されつつある。

内閣府の「生涯活躍のまち」構想に関する意向等調査結果によると、推進意向のある自治体が236に達しており、現在も各自治体で取り組みが進められている。


【自治体の取り組み事例 一部抜粋】

◯長野県佐久市
(1)地域医療の歴史を活かし、医療連携を通じて健康づくりを推進する
・食育など保健予防活動への熱心な取組みが継続されていることを背景に、訪問診療で実績のある佐久総合病院や浅間総合病院を中心とした「世界最高健康都市」構想を従来から掲げている。
「生涯活躍のまち」構想においても、医療連携・健康づくりを今後の「生涯活躍のまち」構想の基本コンセプトに位置づけている。

(2)対象エリアは都市型と農村型の併用で幅広い層を受入れ
・佐久市では、事業エリアを商業施設が多く立地し交通アクセスも良い「佐久平駅周辺地区」を「都市型」(利便性重視)
、田園風景が残り、伝統行事や地域活動も盛んな「臼田地区」を「農村型」(生きがい重視)として移住者の選択のタイプに対応した事業展開を企図している。佐久平駅周辺地区では、公共施設等に近い地域でこれまでの経験を活かした就業やボランティア等の活動をしてもらうこと、臼田地区では、農業や地域活動による地域への溶け込み、積極的な健康づくりを志向してもらうことを想定している。

(3)大都市圏からの移住者誘致
・平成25年度には全国初の取組として、JR東日本、長野県、当市が連携して「大人の休日倶楽部」とタイアップして移住体験ツアー等を実施している。平成26年度には、「移住体験住宅」の運用を開始するとともに、「移住促進サポートプラン」で住宅取得費や新幹線通勤費を支援しており、首都圏からのアクセスが良いという特性を活かして首都圏など大都市圏からの移住者を主たるターゲットとしている。


◯山梨県都留市
(1)大学を核とした構想
・平成27年10月に都留文科大学、健康科学大学看護学部、山梨県立産業技術短期大学校の3校が連携し、
「大学コンソーシアムつる」を組成、相互交流や地域貢献事業を展開している。また、各大学の特色を活かした生涯学習プログラムを実施しており、都留市の最大の強みである大学を核に様々な生涯学習プログラムや地域住民と学生との
合同サークル活動など地域に深く根ざし、相互に学ぶ機会が数多く設定されている。

(2)民間事業者の巻き込み
・「都留市CCRC構想研究会」は行政、地域金融機関が連携して施設の整備・運営や多様なサービスプログラムの担い手を市内、県内外から募るため民間事業者を対象とした研究会を設置したものである。平成28年2月に第1回研究会を開催し、参加者は介護福祉、建設、福祉、金融、大学、IT関連など多岐にわたる。これによって当事業の事業主体となる組織の立ち上げを狙うものである。幅広い業種から地域内外の50~60社が参画して、熱心に議論を継続している。

 

本レポートは、この「生涯活躍のまち」構想の概要や事例を整理する中で以下のような注目すべき点があることなどを取り纏めている。

(1)事例で取り上げた地域では、自然環境や交通アクセス等地域に固有の多様な資源を洗い直し、これらをうまく情報発信することで、一定の移住等の成果に結びつけている。

(2)スマートフォンや通信販売、交通利便性の向上等から地方圏の一部の地域で生活利便性が向上し、移住に関する情報も得やすくなっていることから、移住という行為への垣根が低くなってきている側面が見られる。

(3)従来の短期的効果を狙った施策ではなく、自地域に移住者を呼び込むというより深い目線での自地域の強み分析により、より総合的な地域課題解決の手段となりつつある。


日本版CCRC構想としてスタートした「生涯活躍のまち」構想は、こうした医療・介護機能を合わせ持つ移住まちづくり政策として成果を挙げつつあるが、上述の継続的なケアの確保は課題として残されており、「地域包括ケアシステム」政策を踏まえた今後の展開に注目したい。
 

※CCRC:「Continuing Care Retirement Community」の略称。


参考:
・日本政策投資銀行
日本版CCRCから「生涯活躍のまち」へ ~進む地方への移住誘致施策と地域活性化政策~

日本版CCRC構想有識者会議 日本版CCRC構想(素案)

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