日本政策金融公庫総合研究所では、日本公庫総研レポート『地方発ベンチャーの現状と課題』を発行した。さまざまな地域活性化策が展開されるなか、地域における雇用や活力創出の担い手として、地方発ベンチャーへの期待が高まっている。その一方で、地方は都市部と比べ、ヒトやモノ、カネといった経営資源を調達する環境が十分に整備されていないことも指摘されている。
本レポートは、地方発ベンチャーへのインタビュー調査を通した現状と課題を把握するとともに、成長に向けたポイントを明らかにしている。
地方発ベンチャーが成長するうえで、特に重要だとされたポイントは以下の三点。
1:地域を活かしたビジネスモデル
地方では都市部と比べ、地域資源の活用や地域の課題解決をはじめとした特色あるビジネスモデルを展開しやすいといえる。地方発ベンチャーにおいては、そうしたメリットがあることを認識し、行政をはじめとした外部からの支援をもとに、ビジネスモデル(モノ)を磨き上げていくことが望まれる。
2:地方でも可能なヒトの確保
地方では、行政との距離感が近いという特徴もあり、補助金や助成金(カネ)をうまく活用するケースが多くみられる。また、地方で独自の製商品・サービスを提供することは、マスコミなどからの注目を浴びやすく、認知度の向上にも寄与している。一方で、人材(ヒト)の問題については、地理的理由などから解消しにくいという側面があり、事例企業の取り組みを踏まえると、地元の教育機関などへの出張授業やインターンシップ制度の活用が有効な対策と考えられる。
3:期待される地域への積極的な支援
地域の中核を担う企業は、積極的に起業家支援や地域人材の育成に取り組んでおり、そうした取り組みは設立後間もないベンチャーにとって心強いものであるほか、地域における技術力などのボトムアップにもつながる。地方発ベンチャーにおいては、次世代を担う人材や新たなベンチャーの育成に向け、地域への積極的な支援が期待されている。
都市圏でみられるようなベンチャーキャピタルからのハンズオン支援を受けている事例は少ない一方、行政をはじめとした外部からの支援をもとに、事業を展開して成長していく地方発ベンチャー企業が多い。
また地方発ベンチャーでは、地域資源の活用や地域の課題解決といった特色あるビジネスモデルを展開しやすい。行政との距離感が近いこともあり、メディアで取り上げられるチャンスが多く、補助金・助成金に関する情報も得やすい。
一方、最大の課題は人材確保であるが、地元の教育機関への出張授業やインターンシップの実施などによって、その克服も可能といえる。地域経済活性化のためにも、今後、多くの地方発ベンチャーが誕生することが望まれる。