転職10回、51歳で大学院へ。総決算は老舗企業改革(後編)
GLOCAL MISSION Times 編集部
2022/07/22 (金) - 18:00

茨城県水戸市に本社を置く「亀印製菓株式会社」は、創業は1852年(嘉永5年)、江戸時代から水戸藩御用達のお菓子を作り続けてきた水戸を代表する老舗企業です。そんな亀印製菓の経営改革に奔走しているのが、数々の大手企業で活躍後、51歳で大学院に進みMBAを取得した吉川康明さんです。都会育ちの吉川さんは地方に暮らし、いかに企業再生に向き合ってきたのでしょうか。後半は地方で働くことの魅力や働き方についてお話いただきました。

所詮はよそ者。上から目線は摩擦を起こす

吉川さんは神戸出身で、物心ついた頃から東京で育ちました。水戸には30年前に仕事で3ヵ月ほど駐在していたことがあるだけだと言います。

地方に転職する場合、そこの人間関係や文化になじめるかが不安…という声をよく耳にしますが、吉川さんは「地方も都会も関係がない」ときっぱり。

「違う会社から来たら、所詮よそ者です。上から目線で命令口調になりがちな人は摩擦を起こします。自分は会社のことがわからないんだから、いきなり偉そうなことは言えませんし、私はそこに最も気を使いました。従業員のモチベーションを上げるのは私の仕事です。従業員たちには、今までと同じことをやっていてもうまくいかないことを伝え、会社を変えていかない?自分たちでもうちょっと良くしたいと思わない?といつも語りかけてきました。初めは心配していた従業員たちも、今では私の改革案を受け入れ、素直に取り組んでくれています。」

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亀印製菓株式会社 マーケティング本部 本部長 吉川 康明さん

地方に出て感じた人に支えられている実感

長く都会で活躍してきた吉川さんですが、地方企業ならではの魅力を感じているといいます。

「お客様との距離が近く、組織がコンパクトなので、良いことも悪いこともすぐに聞こえてきます。解決するスピードが速ければ、改革や再建もどんどん進めていくことができると思っているんです。社長からの指示待ちではなく、自ら問題点を見つけて、どんどん解決していく。そのほうが早いです。仕事の幅は広く、課題が多いからこそ、数年後にどうありたいかのイメージが大切です。そして、企業への情熱がなければ、この仕事は務まりません。」

今、吉川さんが蒔いてきた改革の種は、少しずつ芽を出しつつあります。

「少しずつ成果が表れ、やっていける!という手応えを感じています。初めて地方の企業で働いてみて、いろいろな人に支えられていると実感するようになりました。お客様や従業員だけじゃなく、行政や銀行にまで支えてもらっている会社は、本当に貴重な存在です。だからこそ、なんとしてでもこの企業を再生したいと思うのです。」

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地方移住をマイナスに感じたことはない

吉川さんが、水戸に本格的に暮らすのは今回が初めて。これまで、都会に暮らしてきた吉川さんですが移住によるマイナスを感じたことはないと言います。

「インターネットの環境も進んでいますし、今の時代はなんでも標準化されていて、生活に困ることはありません。むしろ自然がプラスされているだけ、暮らしやすい。大事なのは、自分自身で地方のいいところを探しながら、いかに都心にいた時のペースに持っていけるかだと思います。」

都内にすぐに行けるのは水戸の魅力。東京の「デパ地下」は格好のマーケティングの場と捉え、吉川さんは思い立ったら東京へ足を運ぶようにしているのだとか。「都内では様々な情報があり、最先端をいっているので刺激になります。気になる商品があれば、味を確認して、次の商品企画のヒントを探すんです。」

吉川さんは、転職を決断するときは、その充実に重きを置くべきだといいます。

「24時間の中で最も多く占めているのが仕事。自分が本当にしたい仕事は何なのかを、確立することが大切です。東京のビジネス街を颯爽と歩くのはかっこいいけれど、それは仕事ではありません。東京の大きな会社では、思い通りにいかない部分もかなりあります。一方、地方は発展途上の会社が多く、何かを変えていこうというときは、自分の持っているものをいくらでも引き出せます。転職は決して後ろ向きな決断ではなく、自らを磨き、自らの力を活かすチャンスなのです。」

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「茨城県は知名度が低いと言われ、県や市もイメージアップに必死ですから、そこには全面的に協力したいと思っています。」と吉川さん。ロケーションが良い本社には、テレビや映画、ミュージックビデオでの撮影の申し込みがあり、亀印製菓は水戸のちょっとしたシンボル的な存在になっているのだそうです。

「これからも活力のある地元づくりに貢献していきたいし、ここのお菓子は絶対買わなきゃ損だよね、と言わせるぐらいにしたい」と語る吉川さん。企業再生を通して、地域の活性化にも繋がることを原動力に、これからの活躍が期待されます。

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