仕事は変えずに地方暮らし!遠距離通勤のススメ
浅賀 桃子
2018/12/05 (水) - 12:00

地方暮らしを考えるにあたって、仕事の問題は大きいでしょう。これまで都心の会社で積み重ねてきたキャリアをリセットしたくないが、地方には都心ほど求人がないと悩み、地方暮らしに踏み切れない方も少なくありません。このモヤモヤを「遠距離通勤」が変えるかもしれません。

茨城県つくば市に住むS夫さんの例

S夫さんは茨城県つくば市から東京駅まで毎日通勤をしています。結婚前は都心に住んでいましたが、結婚・奥様の出産を機に生まれ育ったつくば市へ戻ることを決めました。距離にして約60㎞、茨城・千葉・埼玉と3つの県を通りながらの通勤をしています。

「つくばエクスプレスが開通したおかげで、通勤時間は片道1時間15分ほど。距離は遠いですが、時間はそこまで長いとは感じませんね。始発から座っていけるので読書もできますし、家に帰れば都心よりも広い空間でのびのび暮らせます。毎月の定期代は会社の上限を超えるのでその分は自己負担ですが、家賃含め生活費が安いので、プラス面のほうが強いですね」とS夫さん。確かに1時間~1時間半くらいであれば、十分通勤圏内といえそうです。

静岡県熱海市に住むN江さんの例

N江さんは生まれも育ちも神奈川県横浜市。社会人になってからも実家から都内の会社まで通勤していましたが、結婚を機にご主人の田舎である熱海市で暮らすことになりました。新卒で入社した現在の職場では、同期入社の先陣を切って主任に昇進したほど仕事ぶりを評価されています。仕事を辞めたくなかったN江さんは片道2時間あまりをかけ通勤することになりました。通勤時間は約2倍になりましたが、現状の生活に満足していると話します。

「朝は5時前に起きていますし、夜も会社の飲み会を途中で抜けて帰らないとならないという点は確かに大変だと感じることもあります。とはいえ、朝早い分通勤ラッシュになる前から移動できる点はメリットにもなると思っています。また終電が他の社員に比べ早いですので、ダラダラ残業していては帰れなくなるかもしれないと、以前に比べてきぱきと仕事ができるようになったように思います。生まれ育った土地を離れることには初め不安がありましたが、職場環境は変わらないので、そこは安心感がありますね」

税制改正で新幹線通勤も視野に

先述のS夫さんが「定期代の一部金額は自己負担」と述べているように、会社によっては定期代の上限金額を設けるところもあります。通勤手当は本来「使用者(会社)に支払義務はなく、労務を提供する従業員側が負担するべき」とされているため、手当を支給するかどうか、またいくらまで支給するかは会社の裁量によるものです。

千葉県労働局が調べた通勤手当支給状況データ(※1)によると、「通勤手当に支給制限なし」としている企業は55%。およそ半数の会社が支給制限なしとしているものの、特急料金を対象外にしている場合もあります。遠距離通勤に踏み切る前に自分の会社の支給制度を確認すると良いでしょう。

また、N江さんの例で「熱海から東京なら、新幹線通勤してもいいよなあ」と思ったあなたへ、知っておきたい通勤費の「非課税限度額」についてもご紹介します。

これまで通勤手当の月額10万円を超える部分は課税対象になっていましたので、新幹線通勤の方の多くが当てはまっていたのではないでしょうか。しかし、税制改正によりこの非課税限度額が月額10万円から15万円に引き上げられました。この引き上げの背景には、政府の推し進める地方創生があることは間違いないでしょう。

ちなみに「新幹線で東京駅まで非課税限度額以内で通勤できる」この条件には、軽井沢(長野県)、越後湯沢(新潟)など、都心から200㎞圏・リゾートとして名が上がる駅も含まれます。今回の税制改正によって新幹線通勤も十分視野に入れられるようになったといえるのではないでしょうか。「平日は都心で働き、週末はリゾート地でゆったりした休日を過ごす」といった地方移住のメリットが仕事を変えることなく得られる点は魅力になります。国土交通省の統計(※2)でも、年間の新幹線定期利用者数は直近1年で4.7%増、利用距離も4.4㎞増となっており、遠距離通勤者が増加傾向にあることが伺える結果になっています。

都心に住まずとも、今のキャリアを維持することはできる

キャリアをリセットせずに地方暮らしを実現するための壁である仕事と通勤費の問題をクリアできる可能性のある、通勤費非課税限度額(月額15万円)以内での遠距離通勤。都心に住まなくとも、今の仕事を続けながら自然豊かな地方暮らしが実現できるとしたら、一気に選択の幅が広がるのではないでしょうか。

※1 平成22年賃金事情調査結果 千葉県
http://www.pref.chiba.lg.jp/koyou/toukeidata/chuushou/documents/h22.pdf

※2 鉄道輸送統計年報(平成27年度分) 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/k-toukei/10/annual/index.pdf

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