2016年4月に女性活躍推進法が施行され、女性社員の定着・活躍のため取り組んでいる企業の割合も少しずつ増加しています。しかしながら、当初政府が目標としていた「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」に関しては事実上断念し、「中央省庁の課長・室長職7%、民間企業課長職15%」と下方修正されているなど、なかなか思うように進んでいない現状があります。
地方創生取り組みを考えるにあたっても、この女性の活躍は切り離せないものです。例えば内閣府では、女性活躍推進法に基づく各自治体の取り組みを加速させようと「地域女性活躍推進交付金」制度を設けています。なぜ今、女性の力が必要とされるのか考えていきましょう。
男女間の「定着」の違い
都市部への人口集中が問題になっていますが、特に東京圏への転入超過数の大半は15歳~24歳の若年層となっており、進学や就職のタイミングで地方から都心へ移住していることがわかります。かつ、総務省の人口統計などから、単身赴任での地方移住などが比較的多い男性に比べ、女性は年を重ねるごとに移住希望者が減っていくことも明らかになっています。転勤などで地方への「単身赴任」が比較的多い男性と異なり、女性は「若いころに移住した地にそのまま定着する」傾向が伺えます。さらに女性の大学進学率の上昇に伴い、東京圏への移住割合も若年層の場合男性よりも女性のほうが多くなっており、そのまま東京圏へ「定住」する割合も高くなる傾向が続いています。
ダイバーシティと企業発展
日本の人口は減少局面に入っています。さらに団塊世代のリタイヤ、少子化などの影響もあり、必然的に労働力人口の減少も予想されています。企業・経済の発展、労働力確保のためには、これまで以上に「眠れる労働力」である女性の力が必要になってきます。
近年耳にする機会が増えた「ダイバーシティ」という言葉をご存知でしょうか。多様な人材を積極的に活用しようとする考え方のことを指しますが、長らく「男性偏重」型であった企業にとっては、ダイバーシティの一環として女性の目線を取り入れた商品開発を行うことにより、業績アップにつながるケースも多く報告されています。IMF(国際通貨基金)からも「日本女性の活躍は、経済に計り知れない恩恵を持たらす」と、人口のほぼ半分を占める女性の活用を推し進める必要性を指摘されています。
女性の社会進出が進むことは、女性が消費者の声を代弁する可能性が増えるということでもあります。筆者の知人のある既婚男性は、「基本的に財布のひもは妻が握っており、家庭のものを買う際の決定権はほとんど妻が持っています。我が家では、買いたいと思ったものは妻にお伺いを立て、合意が取れるまで買えないルールになっています」とし、「だからこそ、妻が喜ぶ商品なのか?ということを考えるようになりました。企業側も新しく商品開発をする際など、男性が男性的な視点だけで考えたものでは女性ウケという面で今後問題になってくるのではないでしょうか」と語っています。
女性を地方へ呼び戻すための企業・自治体の動き
これまでみてきましたように、女性は進学や就職のタイミングで地方から都心へ移住し、移住先で結婚・出産しそのまま定住してしまうことが少なくない現状があります。よって、一度地方から出てしまった女性を再び、できるだけ早い段階で地方に呼び戻すことを考えることが求められます。そのために、企業・自治体はどのような動きをしているのでしょうか。女性が活躍し、生活しやすい環境のための制度を設けている企業・自治体を以下でご紹介しましょう。
・鳥取発の地方創生
経営理念に「鳥取発 ITで、地方創生」を掲げている株式会社LASSIC(※1)は、「地方創生採用」を実施したり、働きやすい職場環境づくりの取り組みとして勤務条件の変更希望などを社員から申し出ることができる「社内フリーエージェント制度」を設けたりしています。本社は鳥取ですが、拠点は全国にあるため、希望する地域での勤務も柔軟に対応しているとのこと。出産後の社員もシフト変更で子育てと仕事の両立がしやすかったり、体調を壊しやすい子供の看護休暇もとりやすかったりと、女性社員にも好評です。
・自治体の女性起業家支援
長崎県諫早市では2011年度から「女性起業塾」(※2)を仕事で独立したい女性向けに開講しています。塾卒業後開業した女性たちのネットワーク「女性起業家の会」で月1回の自主勉強会も実施し、開業後の仕事継続につなげています。 岡山県岡山市でも、県男女共同参画推進センター内に「県女性創業サポートセンター」を開設し、女性の創業促進のためのアドバイスや創業後の悩み相談を実施したり、女性起業家の創業意欲を高める目的で「創業塾」を開催したりするなどサポートを行っています。
女性が活躍できる場所を色々な形で増やすことで、地域の経済が活性化し人口減少にもつながることから、地方創生と女性活躍は今やセットで考えるべき課題であるといえるでしょう。
※1 「ワーク・ライフ・バランス女性活躍推進 企業の取組事例紹介」にて男女共同参画推進企業としてご紹介いただきました 株式会社LASSIC 2017年4月11日
http://www.lassic.co.jp/info/3560/
※2 女性の創業をサポート「センター」開設、コンサルタントがアドバイス 岡山 産経ニュース 2015年6月10日
http://www.sankei.com/region/news/150610/rgn1506100073-n1.html