人生100年時代のキャリア設計の選択肢になり得る「複業」をテーマにした一般社団法人SIDELINEの設立後初イベント「複業で人生100年時代を切り拓く」が開催されました。
告知はFacebookのみだったにも関わらず、受付開始の18時間後には満員御礼!「複業」というキーワードに対する興味関心が非常に高いことを実感し、事前に行ったアンケートからも「生の声を聞いてみたい!」という参加者の熱が伝わってきました。
「登壇者の皆さんは、そもそも何故複業(副業)をやろうと思ったのか」
「実際にやってみてどんな変化があったのか」
「苦労した点は?その際にどうやって乗り越えたのか」
「複数の仕事に関わる際の時間の使い方は?家族との時間は?」
皆さんの熱量に身が引き締まり、同時にどんな熱量が集まる場となるのかワクワク感が高まる中、当日を迎えました。(会場ご提供:数年前から複業を解禁のサイボウズ株式会社様)
参加者の大半は大手企業の社員
「会社員の方??」開始直後、参加者の皆さんに質問。7割の参加者が「企業の社員」。中でも大手企業からの参加が多いことがわかりました。次いで「フリーランサー」、数人の「起業経営者」という内訳。複業をすでに実践されている方は数えられるほど。「複業/副業に興味がある」にはほとんどの方が挙手されていました。
イベント前半 トークセッション
イベントの前半は、それぞれ立場が異なる「実践者」「当事者」の4名の登壇によるセッション。複業実践に至るまでの背景や現状の本音など、当事者ならではの、極めて臨場感のあるお話が展開されていきました。
|複業は選択肢のひとつ。やってみると自分の価値がみえてくる
中村 龍太さん。「新しい働き方」の人体実験社員複業家。サイボウズ株式会社社長室デジタルビジネスプロデューサー、他。NEC?マイクロソフトを経て、現在はサイボウズ、NKアグリ、コラボワークの3社で同時に働く復業家、ポートフォリオ・ワーカー。共著「フク業もせずに、働き方改革なんてできるわけないじゃん!: 未来の働き方のヒントがここに!
「複業は決してやらなければいけないものではありません。人生の時間を使って、したいと思えることが複数あるかどうか。私個人が感じたことで言うと、複業を経験したとき、手に入るものはお金だけではありません。新しい人脈やコミュニティ、スキルアップなど、一つの会社、一つの仕事に従事していたら決して手に入らなかった人的資本や社会資本を手に入れることができます。やってよかったと思えることの一つですね。仕事や人生がとても楽しくなりました」
|ワークと、ライフは切り離さない。自分の時間をどう使っていくのか
鷹野 舞さん。一般社団法人SIDELINE監事、フリーランサー。グリー株式会社事業戦略室長、社長室勤務などを経て、現在はフリーランスとして複数の会社やプロジェクトに参画。一般社団法人SIDELINEの起ち上げメンバーの一人
「会社員をしていた時よりも、タイムスケジュールは大変です。家事をしながらチャットで複数社のプロジェクトに対応したり・・・私生活と仕事の垣根はどんどん無くなってきていますが、これは望んでのこと。自分の時間の可能性が広がりました。今の立場を楽しんで自分実験を続けています。大切にしていることは「余白」。何もかも余白なく詰め込んでしまうと、面白そうな仕事が降ってきても、飛び込むことができなくなってしまいますから」
|知識、知見を広げるために行動を起こすことが大切
渡邊 信彦さん。株式会社Psychic VR Lab取締役 COO、事業構想大学院大学教授、株式会社日本人材機構 シニアディレクター、オープンラボSpiral Mind パートナー、ハイパー地方創生音楽プロジェクト「one+nation」Founderなど兼務。ファッションxVRというニッチでリッチな未来を妄想中。
「私は性格的に、常にやりたい仕事が増え続けるし、全部やらないと死んでしまうタイプ。気の合う仲間とディスカッションしていると、「お、それ面白いね」とか「一緒にやろうよ」という話になる。それら全てをビジネスとして成立させていく。その繰り返しで、今は常に7つ8つの仕事を掛け持ちするようになりました。大事なことは、数が増えても、それら全てに横串を刺す「ぶれない軸」を持っておくこと、自分のやっていることにロジックを持って自分自身腹落ちしていることだと思います」
|副業を禁じる理由を問われる時代へと変わっていく
矢倉 芳夫さん。ロート製薬株式会社広報CSV推進部副部長。副業解禁の旗手、ロート製薬社内においていち早く、その意義を社内に発信、制度設計に関わった実践者の一人
「2年前、ロート製薬は副業解禁をしました。周囲から「何故解禁したのか」と数多く聞かれてきましたが、私は逆に「何故あなたの会社は解禁しないのか」と問うていくべきだと思っています。今年は、間違いなく節目となる年となり、多くの企業で解禁がされていくはず。解禁後、私たちの社内でも大きな変化がありました。それは、社員一人ひとりが「自分が本当にしたい仕事って何だろう?」と真剣に向き合い始めたこと。目標設定や社内異動の精度までもが増し、従業員の満足度も高まっているように感じています」
矢倉さんの、「人は、選択肢があったとき自分の本質と向き合い始める」というメッセージに深く頷く参加者の皆さんが印象的でした。
Q&A:副業を解禁したら会社は危険にさらされるのか?
いくつかいただいたQ&Aの中から会場一同「確かに」と納得した質問をご紹介。
参加者の方:うちの会社は情報漏洩が理由で副業が禁止されています。副業を解禁して情報は漏洩していませんか?
矢倉さん:副業をした途端に情報を外に流出するのでしょうか。防ぐ必要があるが、副業は関係ないのではないだろうか。たとえば社外取締役という職業。あの方々は副業/兼業をしているし、企業の大変コアな情報を持っている。それが良くてなぜ社員はいけないのか。このように考えてみてはどうでしょうか。
イベント後半 一般社団法人SIDELINEのお披露目
イベント後半では、代表理事篠原より私たち一般社団法人SIDELINEをご紹介させていただきました。
何故この団体を起ち上げたのか、その想いと共に、既に進行中の具体的な複業プロジェクトについて説明をさせていただき、あっと言う間の3時間が終了しました。
おわりに
私たちを取り巻く“働き方”が、急速に多様化しています。1つの会社、1つの仕事という「閉じられたコミュニティ」で職業人生を終えることは最早考えにくい時代となりました。だからこそ、複数のコミュニティと繋がり、自分らしい仕事とパラレルに向き合う「パラレルワーク(複業)」への関心が高まっているのではないでしょうか。「複業に興味関心があるものの会社に禁じられている大手企業在籍者」の参加も多く、噴火直前のマグマのような、転換期特有のエネルギーが室内に満ち満ちていたように思います。
複業は一つの選択肢でしかない。自分がやりたいことは何か、自分の実現したいことは何なのかに向き合い、自ら自分のキャリア設計を行っていく・・・
今回のイベントが、「自分らしい働き方・生き方と向き合い、再定義するための活力」となれば幸いです。
(2018年6月29日掲載)