4月に入り、読者の皆様の中にも新たに管理職になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。異動や入社などバタバタした日々が過ぎるとあっという間にゴールデンウィーク休暇がやってきますが、その後いわゆる「5月病」になる方も増える季節です。いまからできる5月病対策・対処法をご紹介します。
中間管理職の心理的負荷
会社の中には一般社員、中間管理職、役員・経営層など様々な立場があり、それぞれの立場での悩みやストレスを抱えています。その中でも読者の皆様に増えてくるであろう「中間管理職」の心理的負荷は一般社員や役員・経営層と比べても高いとするデータがあります。実態把握のために、データの一部をご紹介します。
イギリスの医学誌「the bmj」に2012年に掲載された調査結果(※)によると、いわゆる働き盛りである30~59歳男性の死亡率を1980年から2005年までの25年間で比較したころ、2000年代に入ってから管理職の死亡率が上昇し、死亡要因の中でも「自殺」によるものに限定すると、それまで多かった肉体労働者を超え職種別トップになっています。上昇割合も25年間で271%となっています。もちろん「自殺=精神要因」とは限りませんが、寝ている時間を除けば1日の半分かそれ以上を過ごす職場での時間が要因にまったく含まれないとは考えづらいでしょう。
また、1980年代当初に比べ、2000年代に入ってからは管理職の割合が減少していることが報告されています。高度経済成長下にあった頃から時代が変わり、低成長社会の中において組織階層がフラット化したことや、派遣社員をはじめとする非正規雇用者の増加などが影響していると考えられます。先述のbmj調査によると、1980年代当初8%台だった管理職の割合が、2000年代に入り3%台になったとされています。
いわゆる中間管理職の場合、部下のサポートをしながら自身のタスクもこなす「プレイングマネージャー」であることが多いでしょう。少ない人数で仕事の量は増え、上からも下からもプレッシャーがかかる立ち位置であることから、心理的負荷が特にかかりやすい層であることは容易に想像できます。
中間管理職と5月病
ゴールデンウィーク後に会社に行きたくない、体調がすぐれない、仕事に集中できないなどの状態になることを「5月病」と呼んでいます。5月病は正式な病名ではなく、医学的にはうつ病や適応障害などに代表される「抑うつ状態」とされています。4月の研修期間を経て現場配属が決まる時期に「理想と現実のギャップ」に悩む新入社員が増えることから注目されるようになり、研修期間が長期化している現在では5月病ならぬ「6月病」ともいわれることも増えてきています。
先ほど新入社員と書きましたが、新人以外も5月病になる可能性があります。特にこの春から管理職になった方や、管理職でなかったとしても昇進して新たな責任が加わった方は要注意です。
5月病の予防・対策とは
5月病にならないようにするためには、連休前から予防していく必要があります。以下、代表的な予防法をご紹介します。
・生活リズムを整える
5月病対策に限りませんが、生活リズムの乱れは5月病を悪化させがちです。朝起きるときには朝日を浴び、ストレスを緩和する働きのある脳内物質である「セロトニン」を増やしましょう。うつ病は、ストレスが強くかかり「セロトニン」などが不足することが主な原因だと言われています。
このセロトニン、体内にアミノ酸の一種「トリプトファン」を取り入れることで作られる物質です。トリプトファンは肉や魚、大豆や乳製品などに多く含まれているため、毎回の食事で意識していきましょう。
・運動の習慣化
ウォ―キングなど無理のない程度の運動を習慣化することが、ストレスマネジメントにつながります。1回は2-30分程度と短くとも、毎日続けることを目標にするとよいでしょう。それまでの運動習慣に応じて、自分が続けやすいものを取り入れていくことが大切です。
・他人との交流
上司からも部下からもいろいろ言われて板挟み、相談しようにもなかなか自分の立場を分かってもらえないと思い、悶々とひとり悩む…カウンセラーの筆者のもとにも、これまで周りの人に悩みを相談してこなかった管理職の方からの相談が届きます。「直接の問題解決に至らずとも、話すことで心が整理され気持ちが軽くなった」といった感想は少なくありませんし、第三者の視点で物事を捉えてもらうことで、新たな糸口が見つかったというパターンもあります。他人と交流することで、自分ひとりだけで考えていた時よりもバランスよく、前向きに考えられることが多いといえます。
いかがでしょうか。連休を前に自身の「5月病」へのリスクを考えストレスへの理解を深め、ぜひ今日から「5月病予防・対策」をとっていきましょう。