熊本や福島の企業経営にハンズオン 現場で学び、人と真摯に向き合う、地方事業再生の道を生きるリーダー
福島交通株式会社 武藤 泰典さん
BizReach Regional
2017/06/12 (月) - 08:00

「支援会社へハンズオンで入りたい」と、産業再生機構の転職の際、面接官に伝えた武藤さん。監査法人で事業計画などを机上で作る日々のなか、「一度、事業会社に」という思いが募ったそうです。その後は、熊本の運輸会社で、そして現在の福島のバス会社で、地方事業再生の道を歩む武藤さん。そこには、常に現場で学び、人と真摯に向き合い、経営を牽引していくまっすぐな姿勢がありました。

会計士の資格取得後、監査法人に就職。国際部M&Aチームへ配属

会計士になりたいと思ったのは、大学3年生のときでした。「公認会計士になると、1年の半分は遊んで暮らせる」と先輩から、半分冗談みたいな話を聞いたことがきっかけです(笑)。「そんな仕事があるんですか先輩!」といった経緯で3年生から勉強を始め、大学卒業後1年浪人して資格を取得し、中央監査法人に就職しました。

配属されたのは国際部。当時、外資系企業の日本マーケットへの参入が盛んになっていて、その中でのM&A関連の仕事をするチームでした。この部署はタコ部屋みたいに法人内でも隔離されていて、とにかく厳しい職場でしたね。ただ、本当に優秀で個性的な先輩が多かった。社会人一年目であまりにもハードな世界を経験したのですが、何でも吸収してやろう、覚えてやろうという思いで、けっこう楽しんでいました。もともと高校時代から柔道部に所属していたせいか、上下関係の中でやっていくのは特に苦じゃなかったですね。

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机上の事業計画を実行してみたくなり、事業会社へハンズオン

監査法人に約6年いたのですが、その間レポーティングから企業価値の評価や事業計画など、M&Aに関する様々な仕事をさせていただきました。それに対して何百万、何千万というフィーが発生するわけなのですが、果たして自分が作った計画や事業は、実際にその対価に値するのだろうか。自分で事業をやってみたら、実際はどうだろう。自分でできないことを提案するのは恥ずかしいし、申し訳ない、そんな迷いが生まれてきました。
そして胸に沸き起こったのが、「事業会社に一度行ってみたい」という思い。その転職活動中に出会ったのが、当時できあがったばかりの産業再生機構です。この流れにのって事業会社の中にハンズオンで入っていくのも面白いなと感じました。

転職後は、幸いなことに翌日から「きみ、九州に行きなさい」と言われ、熊本の九州産業交通の再生支援チームに入れていただきました。まず関わったのは、金融支援。その構築に今までの事業再生やプロジェクション、レポーティングのノウハウが生かされたことは良かったですね。

“その人と、どう働くか”を考え、常に勉強するつもりで現場へ行く

総勢10名以上の支援チームだったのですが、私は一番若手で下っ端。そのお陰か、ずっと熊本にいさせてもらえました。当時主に私が担当していたのは、九州産業交通の傘下・産交運輸という事業会社だったのですが、そこに入り込んでいきました。会社の人たちといろいろな話をするうちに意気投合し、叩き上げの社長に非常に可愛がっていただきましたね。それから再生事業が終わった後も、産交運輸に転職する形で、熊本に残ることになったんです。

当時30代前半という若造なのに、役職としては専務。再生支援の段階では接触することのなかった従業員のみなさんと、今度は経営という立場で対峙していかなければならないわけです。でも、今から省みて良かったかなと思うのは、私は常に勉強するつもりで現場へ行っていたという点。現場を学ぶために、トラックへの荷物積込みから、早朝のホームの掃除、作業員として引っ越し業務に参加するなど、現場と一緒になってやりましたね。「現場ってどういう形で動いているんだろう」ということを肌で感じたかったので、楽しみながらやらせてもらっていたのですが、結果的にそれが良かった。社員との距離も近くなって、じゃあ一緒に頑張りましょうという雰囲気に繋がりました。何でも教わるつもりで自分から現場に入っていくこのスタンスは、福島交通の取締役になった今も変わっていません。

生まれ育ったのは修善寺の山の中。どの地方も住めば都

当時私は結婚をしており、妻はアメリカのニュージャージー州に赴任していたのです。熊本で3、4年過ぎた頃、妻が赴任先から帰国することになって。折しも経営共創基盤の立ち上げの話があがり、そちらからオファーをいただいたんです。短期的に大金持ちになることを目指すのではなく、長期的・本質的に企業や地域のために頑張ろうというポリシーが良かった。妻との生活を叶えたいということもあり、一旦東京に戻り経営共創基盤の設立に参加することになりました。

入社後すぐに取り組んだのが、福島交通の支援案件。妻と長女と共に福島へ移転し、その後次女が生まれました。そもそも私が生まれ育ったのは修善寺の山の中。山水を汲み、薪で風呂をわかすといった少年時代でした。熊本も福島も遥かに都会で、地方暮らしに不自由を感じたことはありませんね。毎朝バス10分で出社できて、果物は美味しいし、温泉も近い。福島は本当にいいところだと実感しています。

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原動力はやっぱり“人"。その道で生きる人から教わることは多い

福島での現在、自分を動かす原動力になっているのは、やっぱり“人"でしょうか。そこで働いている人たちの心意気や、頑張ろうという思いを感じると、どうにかしてあげたいなという思いにかられます。

地方では有能な人材が不足していると聞くことがありますが、実際にそうでしょうか。私は、学歴や経歴、ポストなどに関係なく、人はみな同じだと思っています。その道で一所懸命に生きている方に現場で教わることは非常に多くあります。教わりながら自らも勉強して、そこから自分なりの価値観の中で考えを深めていくんです。そのうえで「この方がいいんじゃないか」と、今度は現場に返していく。それを繰り返していくうちに、組織内のコミュニケーションが円滑になってきて自らの成長も実感できますね。

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事業は商売。喜びが生まれる価値で、地域を元気に、人を元気に

「商売というのは、売って悦び、買って喜ぶというのが基本」と、ある方に教えられたことがあります。実際に事業に携わってみて思うのは、“事業"というのは、やはり“商売"だということ。事業をやっていれば当然、何らかの商売に関わっているわけですよね。
売り手も悦んでサービスや商品を売り、買い手も提供してもらって喜んで帰るというように、お互いが悦び・喜ぶことができて、価値を生み出していけたらベスト。そこに、仕事が楽しくなる原点があると思っています。

どの事業でも、どの業界でも、商売という観点で見れば、非常に生き生きと面白くなってくる。一般の事業会社の商売そのものが、地方を元気にするし、人を元気にする源になると思っています。

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福島交通株式会社 取締役社長

武藤 泰典さん

静岡県修善寺出身。平成8年、中央大学法学部政治学科卒。卒業後、会計士試験合格後、中央監査法人へ。国際部にてM&A業務を経験。平成15年、産業再生機構に入り、企業再生支援チームの一員として熊本へ。平成17年、九州産交運輸株式会社 専務執行役員に。平成19年、東京にて株式会社経営共創基盤に参加。平成21年、福島交通株式会社 取締役副社長として福島へ。平成25年12月、取締役社長に就任。

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