ここ十数年、働く際の問題を解決したり、仕事の目標に向かったりするビジネスで、心理学の活用が進んでいます。今回は、NLP(神経言語プログラミング)トレーナーの筆者が、どのように仕事に活用できるのか、自分自身と向き合う方法について紹介しましょう。
1.人間関係を大きく改善できる
NLPとは実践心理学の一種で、もともとは心理療法を中心にセラピーなどで用いられていましたが、特に心身が不調、ということではなくても、活用すると、人間関係を大きく改善できるという効果があります。
NLPでは、自分のものの見方、捉え方というものは客観的な事実ではなく、あくまで視覚や聴覚、実際に触ったり臭いを感じたりする体感覚、という自分の認知の仕方を通して外からの情報を捉えた主観的なもの、と考えます。これを人に対する捉え方に活用していくと、どうなるでしょうか。
たとえば、「あの人はいつも私に冷たい」と感じていたとしたら、自分自身に「それは、本当に真実?」「いつも、ってどんなときでも100%そうなの?」「冷たい、とはどんなことが冷たいと感じるの?」「誰が見ても、どの方向から判断しても、いつもそれは冷たいの?」というような質問をしていきます。そうすると、「うーん、いつもじゃないかもしれない」「冷たい、というのも、別に他の人から見たらそうでない場合もあるかも」と別な見方が出てくるのではないでしょうか。このように、人が陥りがちな「〇〇さんがしてくれない」「〇〇さんのせいだ」という一面的な考え方から離れることができるようになります。
2.自分の気分や状況を短い時間で変えられる
次におすすめの方法は、自分の気分や状況を短い時間で変えられる、というものです。人は、「自分にはできない」「自分なんてどうせだめだ」のようなネガティブな思考回路に陥ってしまうことがあります。一面的な物の捉え方をしていると、なかなかそこから出られず、次の行動に移ることが難しかったりするものです。NLPには身体を動かして行うワークの手法があり、数分程度で自分のネガティブな思考から抜け出すことができます。
たとえば、このようなワークを試してみてください。
・いまいる場所で、自分がいまどんな気分なのか、自分で確認します
例:ちょっと疲れている、つまらないと思っている
・その場所から数歩歩いたところに、足を肩幅に開いてリラックスして立ちます
・目をつぶってもよいので、以前のことを思い出しましょう
昔、自分が「すごく何かをやり遂げたとき」「やったー!できたー!」と思ったときのことを1つ鮮明に思い出してみてください。そのとき感じた場所に戻ったつもりで、そのときの気分に充分ひたりましょう。
例:中学のとき、部活の大会で初めて勝った!、大学受験に受かった!
どうでしょうか。最初にいた場所で、さっき感じていた気分とはどう違ったか、感じてみてください。充分にひたると、あのときの高揚感、達成感に満たされた気分になれるのではないでしょうか。
人は、場所を変える、立つ、という身体的な動作の変化を行うと気分が変わります。また、以前に記憶された、自分の感情を伴うモチベーションというものを思い出すことによって、現在の行動にも活用することができます。仕事の前にいつも思い出して使ってみるのもよい方法です。
3.目標に向かう進み方をセルフコーチングできる
次の活用法は、目標に向かってどう進んでいけばよいか、セルフコーチングができることです。コーチングの手法をご存じの方も多いと思いますが、セルフコーチングとはコーチのような質問を自分自身に行い、気づきや解決方法、決断を見つけていくやり方です。
人は成し遂げたい目標がある場合に、漠然とそれを思っているだけではなく、
・いまどのような現状なのか
・何が問題なのか
・自分がもつリソース(活用できる手段、資源、サポートなど)は何か
・足りないものは何か
・どのようにすればそれを補強できるか
などと課題を分解し、行動の計画を立てていくことが必要です。コーチングではこのように目標達成や課題解決に対して多くの質問をし、行動を変化させていきますが、NLPを活用すると、さらに
・メンタル面でどのような精神状態でいることが必要か
・その目標を達成できたら、さらに何が得られるのか
など、その先にある価値観や自分の生き方といった深層の部分までセルフコントロールをすることができます。
人が目標達成や課題解決をするためには、行動していくことがもちろん必要ですが、その前に「自分自身のモチベーションを保ち、集中してその行動に向かえるメンタルの状態をつくる」ことも非常に重要です。その部分を変化させることができるため、NLPを活用することは有効なのです。みなさんも、ぜひ仕事や人生に使ってみてはいかがでしょうか。