就職・転職はきわめて個人的な事情で行うもの。応募理由はひとりひとり違って当然です。しかし「何としてもここに入りたい」「ここで決めたい」という熱意がなければ、最終面接突破は厳しいでしょう。「想い」が人を動かします。「ここに入りたい、ここで働きたい」というエネルギーの強さが成功のカギです。
相手が何を求めているかから考えてみよう
応募書類の作成は、その企業で求められる能力を理解することから始めます。自分が持っている経験や能力を洗い出し、求められる能力と自分の能力がマッチしているかをチェックするのです。どんな自分を出したら書類選考時に「会ってみたい」と思わせることができるか。面接時に「一緒に働きたい」と思ってもらえるのか。応募活動は言ってみれば「営業活動」です。自分の言いたいことを言う場ではなく、相手が聞きたいことを伝える場なのです。
次はその能力があることを相手に伝える方法を考えます。営業なら契約件数や売上数字、チームリーダーならチーム業績や人数、育成実績など。具体的な事実やエピソードなど証拠となるものを準備します。
「私、営業でトップでした。」と言われても、営業が数人しかいない会社の話では評価しづらいですね。やはり数字が有効です。相手に「なるほどそういう実績があるなら仕事ができそうだな」と思わせないと伝えたことになりません。
過去を語るのが職務経歴書。丁寧に誠実に
履歴書や職務経歴書は過去の仕事を伝えるその人の“ラベル”のようなものです。顕在能力とその能力を発揮してなし得た成果について書かれています。履歴書や職務経歴書はどう見られているか。人事の方に聞いてみました。
1.ルールに則り「きちんと丁寧に書かれている」……社会性・性格的な部分をチェック
2.必要な経験を積んでいることがわかる……手がけた仕事、果たした役割、成果等
3.必要なスキルを持っているか確認……経験や実績、仕事内容で判断
4.必要な資質……組織やチームで必要とされる志向やタイプ、コミュニケーションスキル
職務経歴書には営業なら業績データや取り扱い商品・サービスなど、守秘義務に触れない程度の証拠物が用意できるといいですね。オリジナルの自己PR文やPR動画なども有効です。クリエイターなら過去の作品をポートフォーリオファイルにして提出するといいでしょう。応募書類は一次選考資料となり、基準に達している人だけ次のステップに進むのが一般的です。
書類通過後は面接。内側の勝負です
仕事に対する考え方や人間性や性格、価値観や志向など、その人の内側を知るために直接会って話を聞くのが「面接」。本当に必要なスキルを持っているかどうかなどもダイレクトにチェックされます。企業はその人のやる気や潜在能力(ポテンシャル)、どんな価値観や志向を持った人なのかを知り、自社に適した人か、入社後活躍してくれる人かを見極めます。
面接でしか伝えられないものがあります。人を引きつけたり感動させたりするのは基本的には内面の話です。面接官はあなたの人間性を知り自分の会社に合う人か、職場になじみ定着し活躍してくれる人かどうかを判断します。一緒に働く仲間として迎え入れたい人かどうかが最大の関心事です。
相手の五感を刺激し、印象に残るストーリーを探す
面接では一般的な質問の後に「自己PRしてください」「あなたが自慢できる仕事をご紹介下さい」「失敗談とそれをどう乗り越えてきたか、お話ください」などと聞かれることがあるでしょう。その場合、ストーリーで語るのが有効です。
ここでは自慢できる仕事・失敗した仕事ストーリーの基本形をご紹介します。
1.結論から話す……自分がやり遂げたことは
2.なぜそうなったのか……状況説明、そこに至った背景
3.何をどんなやり方で……目標とやり方、1人 かチームかなど具体的に
4.苦労した点……エピソード(失敗、挫折、苦労、立ち直り、感謝、復活)
5.自分なりの工夫や発見……心掛けたこと、気づき、得たもの
6.そこから何を学んだか……仕事の本質、今後について
なぜストーリーなのでしょう。それは聞き手の脳裏に情景が浮かぶから。ストーリーの中の喜怒哀楽にその人らしさが見え、印象に残るからです。ある応募者が自分の登った山の記録を写真とともにまとめて持ってこられました。客観的で豊富な情報、緻密な行動計画、感動的な登山記録と写真、気象変化などトラブル時の対応、山での出会いや気付きなど。仕事のエピソードが多い中で「その方らしい人となり」を個性的に伝えてくれ、強く印象に残りました。相手の五感を刺激するストーリー作りが大切です。
事実の羅列だけでは人は心を動かされない
面接官に「この人と一緒に働いてみたい」と思わせるような、人間力のエピソードが必要なのです。情熱をもって仕事をしてくれる人 粘り強い人、人に対して優しい人、周りの人の気持ちを感じとることができる人など。一緒に働きたいと思わせるにはラベルに書かれた性能だけでは足りません。面接官に対して内面の“人間力”をしっかり伝え、アピールする必要があります。思い入れのあるエピソードほど、リアリティあふれるストーリーで相手の心を動かせるはずです。動画で撮影して表情や抑揚もチェック。効果アップを目指してください。