2015年に国会で成立した通称「女性活躍推進法」。アベノミクスの成長戦略の柱として定められ、特に女性活用の面で世界的にも遅れをとる日本企業が大きく変わるきっかけのひとつとして注目されています。それでは「女性が活躍できる企業」とは具体的にどのような企業のことを指すのでしょうか。以下で考えてみたいと思います。
働く女性に関するデータ
少し前のデータにはなりますが、ILO(国際労働機関)が世界128か国を対象に調査した2012年のデータによると、女性管理職比率ランキングで日本は96位となっていることからも、日本の女性管理職登用の大きな課題が浮き彫りになっているといえます。
政府は2014年6月に示した成長戦略のなかで、「2020年までに女性管理職の割合を30%以上に引き上げる」ことを目標に掲げました。緩やかに割合は上昇しているものの、2016年現在で係長級18.6%・課長級10.3%、部長級6.6%(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)となっており、目標達成までの道のりは遠いままです。
なぜ女性管理職の割合が増えないのでしょうか。この問題を考えるうえで「女性のキャリア」と「結婚・出産・育児」は切っても切り離せません。以下で、女性管理職の婚姻等の状況をみていきましょう。
女性のキャリアと出産・育児
労働政策研究・研修機構が実施した「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査結果」より、男女係長・課長・部長それぞれの未婚・既婚状況と子供の有無がわかります。まず、未婚率については下記のとおりです。
<未婚率>
係長男性 23%、係長女性 42.4%
課長男性 9.8%、課長女性 44.1%
部長男性 5.3%、部長女性 29.2%
係長女性よりも課長女性の未婚率が上がっていますが、離婚・死別の割合も7.3%から11.2%に上がっていることの影響かと思われます。どの役職においても女性の未婚率のほうが非常に高く、単なる偶然とは考えづらい結果となっています。
続いて、子どもの有無についてご紹介しましょう。
<子どもがいる割合>
係長男性 60.8%、係長女性 33.1%
課長男性 77.7%、課長女性 30.2%
部長男性 81.2%、部長女性 33.4%
こちらも男性と女性とで差は歴然です。管理職になる女性は結果的に、出産・育児との両立が難しかったといってよいでしょう。
女性活躍推進に優れた企業とは
キャリアと出産・育児とを両立させることを考えるためには、女性活躍推進に優れた企業で働くことが選択肢の一つになるでしょう。しかし、なかなかそのような企業の特徴や見分け方は分かりづらいもの。そこでぜひ「なでしこ銘柄」に選出された企業かどうか、という点を参考にしていただくことをお勧めします。
…と書きましたが、皆さん「なでしこ銘柄」、ご存知でしょうか。
「なでしこ銘柄」とは、経済産業省が2012年度より東京証券取引所と共同で、女性活躍推進に優れた上場企業を選定・公表する取り組みのことです。東京証券取引所へ上場している約3500社の中から、女性活躍推進の取り組みについて女性のキャリアアップ・両立支援両側面から評価を実施。女性活躍推進法施行に伴い、女性管理職比率の開示有無がスクリーニングの要件となっています。5回目の実施となった2016年度は47社が公表されました。
また、今回からなでしこ銘柄に準ずる企業として「準なでしこ銘柄」を25社選出。企業への将来的な成長を期待する観点から選別され、企業への投資促進、取り組みへの加速化を促しています。
「なでしこ銘柄」企業紹介
代表的な「なでしこ銘柄」企業としては、2012年度より5回連続で選出されているKDDIや日産自動車、東京急行電鉄などがあげられます。
例えば、KDDIの女性管理職比率はこの2年で2.2%増加、男性育児休業取得率は63%となっています。厚生労働省が発表した2016年度の男性育児休業取得率は「比較可能な1996年度以降の調査で最高になった」ことが報じられましたが、わずか3.16%。KDDIの驚異的な数字がわかります。また、日産自動車はこの10年余り「女性のキャリア開発支援」に重点的に取り組み、2017年4月には新たに女性役員が誕生しました。東京急行電鉄では、2017年度新卒総合職採用にて、女性比率が約4割とのことです。そのほか「有給休暇1時間単位での取得」「本社社員のテレワーク拡充」などの働き方改革を推進しています。2017年4月には会社施設として、育児中の社員支援を目的にした保育園を大井町線緑が丘駅構内に開園しています。
「なでしこ銘柄」の取り組みにみる女性活躍推進
少子高齢化に伴う労働力不足から、女性にバリバリ働いてほしいという思いも透けて見える女性活躍推進対策ですが、本来の女性活躍推進法には「男性を含めたワーク・ライフ・バランスの見直し」「女性のキャリアと家庭生活の両立にあたり、本人の意思が尊重されること」という目的があることを忘れてはなりません。なでしこ銘柄公表の取り組みからは、企業の女性活躍推進に対する考え方や姿勢がうかがえるといえるでしょう。