2017年、経団連よりLGBTへの企業の対応の必要性の提言がありました。数年前に比べると、急速に理解が広まりつつあり、今後私たちの生活の場にも影響が広まるでしょう。今回は、これからの職場で、上司にはどんな対応が求められるかについて解説します。
LGBTとは
急速に広まったとはいえ、「聞いたことがある」くらいに留まっている人も多いかもしれませんね。LGBTとは「レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー」の略で、女性同性愛者、男性同性愛者、両性愛者、身体の性と心の性が一致しない人といった人たちをまとめた言葉です。LGBTだけでは、性的な少数派の人すべてを含んでいないので、セクシャルマイノリティーという言葉を使うこともあります。
多様な人々を認めて社会で一緒に暮らしていこうというダイバーシティの考え方が浸透していることと合わせて、日本でも一般的に知られる言葉となってきました。2015年に電通が7万人に行った調査では全体の7.6%の人が、自分がLGBTに当てはまると回答しています。実は、あなたの身近に1人は該当する人がいるかもしれないのです。
上司として必要な対応1 採用時
このように、実は社会に一定数いるのではないかと思われるLGBTの人たちに対し、今後、職場で上司としてどのような対応が求められるのでしょうか。
まず、採用時の配慮が挙げられます。2016年ごろから採用時に性別をチェックする欄をなくすなどの配慮をする大企業も増加しています。あなたの会社ではどうなのか、確認をしておいたほうがよいでしょう。特に申し合わせや規定がないときは、面接官として採用の場に立ち会う場合、自らLGBTなのだと告げて、入社時の配慮や会社の対応についての質問があるかもしれないと念頭に置いておきましょう。実際に学生のなかには、LGBTに対する配慮のある企業に就職したいという希望も増えてきています。そう聞かれた場合どう答えるか、人事担当者と社内でのコンセンサスを取っておくことが必要です。
また、性的差別にあたる質問を面接ですることは、以前から法律的にも禁止されています。「女だから〇〇は難しいのでは?」「男だから〇〇を担当してもらう可能性がある」などのいい方はもちろんまずいのだ、ということを認識しておくのも大切です。
上司として必要な対応2 自分の部署で
次は、自分の部署への対応で注意すべき点についてです。まず、全員に方針を伝えることが不可欠です。会議などで、この部署では(会社全体で、のほうが望ましいですが)性的差別を行わないという方針をはっきりいったほうがよいでしょう。そうでないと、自分の知らないところで、無意識に部署の誰かが差別的な発言をしている怖れがあるからです。
自分自身でも、どのようなマイノリティーの人たちなのか、どんなことをいったり、したりすると相手を傷つけるのか、本などを参考に理解しておくことが必要です。部署のメンバーにも、LGBTや性的差別について理解できるような研修など場を設けることや、読むことができる情報を提供すると対応しやすくなります。
上司として必要な対応3 部署のメンバーに対して
最後に、あなたの部署のメンバーに対する対応です。現在あなたの部署に在籍している人たちのなかに、カミングアウトしたくてもできない人がいるかもしれません。自分のセクシャルマイノリティーを公にするかしないかは本人の選択になりますので、もしそうではないか、と思うようなことがあっても、こちらから質問したりしないようにします。何か悩んでいる様子があれば上司として「悩んでいることがある?」と聞くのは問題ないですが、相手からいってくる内容を待つようにします。
もし、本人から相談をされた場合は、社内の設備などについて問題があるのか確認を取ることや、人事のセクションと連携をすることが必要です。他のメンバーに公にするかどうかは、本人の意思を尊重しましょう。
また、雑談やお酒の席などでも男女差別や性差別に対する発言はしないように気をつけましょう。この点が一番注意すべきポイントかもしれません。人はお酒が入ったときや、気を許して他愛もない話をしているときに、ついつい今まで思っていた価値観を口に出してしまいがちです。あなたの周囲にも、人にいっていないだけで、マイノリティーの人がいるかもしれないのです。「そういうのは気持ち悪い」「LGBTなんて親が大変だろう」などという言葉をいってしまわないように、世の中にはいろんな人がいる、ということを受けとめるようにすることが大切です。
まとめ
LGBTについて受け入れていこうとする考え方は、これからますます社会に広まっていくでしょう。もし、今まで深く考えず、性的なことに色々な発言をしていたかもしれない、と思い当たる場合は、今後、あなた自身の捉え方や価値観を変えることが重要になってくるのではないでしょうか。