夏のボーナス支給時期を前に、転職を考えている方からの相談をよく受けます。お話を伺うなかでよく登場する言葉に「キャリアアップ」があります。しかし、キャリアアップの意味をしっかり考えずに転職しようとしているのではと感じることもあります。今回は改めて「キャリアアップ」について考えます。
キャリアアップのためには転職しかない?
「いまの職場での仕事がつまらない、やりがいが感じられない、このままではキャリアアップできない」。転職希望者への初回ヒアリングの際に多く聞かれる理由です。そして彼らが望む「キャリアアップ」のためには転職するしかない、と、転職一択になってしまっている方も少なからずみられます。
しかし、本当に「キャリアアップ=転職」でしょうか。その考えは非常に狭く危険なものといってよいでしょう。
そもそもキャリアアップとはどのようなことを指すのでしょうか。
キャリアアップは、英語のcareerとupを合わせた言葉。国語辞典を引くと「より高い専門的知識・能力を身につけること」「経歴を高くすること」「高い地位や給料の職への転職」と書かれています。もちろん現在より労働条件のよい仕事や役職を求め働く会社を変える=転職が含まれることは事実ですが、転職だけではない点にも注目したいところです。 また、「専門的知識・能力を身につける」こと自体は、キャリアアップというよりは「スキルアップ」だといえます。スキルアップとキャリアアップの意味をよく考えずに何気なく使っている方も少なくないですが、このスキルアップはキャリアアップするためのあくまで1手段であると認識すべきでしょう。
つまり、スキルアップがしたいのか、キャリアアップをしたいのかについてよく考える必要があります。
キャリアアップのために考えるべきキャリアプランについて
もしあなたがキャリアアップをしたいと考えているのであれば、切っても切れないものが「キャリアプラン」です。自分の理想のキャリアを描くにあたり、目標にする方向性などを明確にするために必要になります。
目標設定にあたっては、長期的なもの・中期的なもの(10年後など)・短期的なもの(2・3年後など)など、それぞれ時間軸をわけて考えていきましょう。もちろん長期的なものに関しては、その後更新し続けることができますので、完璧に考えられなくてもかまいません。
たとえば将来「英語に不自由なく仕事ができるようになりたい」と考えているとしましょう。これを長期目標に据えた場合、それを実現するためにどのようなアクションが必要になるか、そこから逆算しながら中期的なもの、短期的なものを決めていきます(先ほどの例では、英会話レッスンを受ける、TOEICの点数を1年後に〇点に伸ばすなど)。
これらのキャリアプランをつくり実行していくなかで、目標が軌道修正されることも当然出てくるでしょう。キャリアプランは自分の理想のキャリアを見つけるために作成するものですので、結果として当初描いたキャリアプランからずれてきたとしても問題はありません。
上述のようにキャリアプランをつくって終わりではなく、その後現状把握をしていくことが求められます。1年後にTOEICの点数を100点あげたいという短期目標を設定したとしたら、100点あげるためにいますべきことは何か、自分の克服すべき課題は何か(リーディングなのかライティングなのかリスニングなのかなど)を分析したうえで、目標実現に向けた行動改善をしていく必要があるのです。
キャリアアップを実現するために明確にすべきこと
これらの作業を行ったうえで改めて「キャリアアップ」について考えていきましょう。
先述の例で「英語に不自由なく仕事ができるようになりたい」と考えているAさんが、いまの職場では全く英語を使う機会がなかったとしましょう。「いまの仕事で英語を使わないから転職したい」と考えること自体が悪いわけではありませんが、本当に会社を変えなければ実現ができないものなのかについても思いを巡らせる必要があるでしょう。異動することで英語を使う仕事につける可能性があれば合わせて「現在の会社で異動できるかどうか」「異動できたとして、それでも転職したほうがいいのか」という点を明確にしておくことをお勧めします。
必ずしも転職をしなくともキャリアアップは可能です。転職をしなくともキャリアアップを実現できるかどうかを真剣に見定めたうえで、転職すべきなのかどうかを判断していきましょう。