企業、そして働き手に求められる「働き方改革」の本質とは
黒田 真行
2017/05/11 (木) - 08:00

一億総活躍社会の実現に向けて、政府が推進している「働き方改革」。大きな変化の中で、一人ひとりが必要とされる社会を確立していくためには、企業側の取り組みはもちろん、働き手の「意識改革」も不可欠です。残りの仕事人生を悔いなくやりきるために、考えるきっかけにしていただけたら幸いです。

いま必要なのは、一人ひとりが自分の能力を活かして活躍できる社会

戦後の混乱期を抜けて、これから経済が上向いていくという希望が見えていた時代は、馬車馬のように働く企業戦士ばかりが求められていたこともありました。今ではすっかり「ブラック企業」という言葉が一般的になりましたが、おそらく当時は、さらに過酷な条件下で働いている人もたくさんいたのではないでしょうか。
しかし、環境は変わりました。現代では、長時間働くことよりも、いかに効率的に働くことができるのかが求められます。そんな中で注目される「働き方改革」。なぜ、いま「働き方改革」が求められているのか?その背景にはいくつかの要因が考えられます。たとえば…

・ 少子高齢化
・ インターネットの普及
・ 経済のグローバル化
・ 社会常識の変化
・ ITや人口知能によって激変した労働生産性
・ 景気の循環

そういった大きな社会変化の中で、人と仕事の関係や、人と会社の関係も変わりつつあります。ただ、このような変化は、いつの時代にも起こり続けていて、かつ永遠にゴールはありません。現在の、特に日本に起こっている上記のような変化が要請している成果は、圧倒的な生産性改革です。
この「働き方改革」を、単純に言うと、
「人の数が減る一方で、ITやAIという武器は発達している。にもかかわらず、それを運用する体制(働き方)が20世紀のままなので、爆発的な生産性向上が実現できない。今のうちに運用体制を根本的に変えておこう」
という流れなのではないか、と考えています。
その打ち手として今挙がっているのは、大きく分類すると2種類あります。

【面積】人材活用のカバー率を高める動き
・ミドル・シニア世代の活用
・女性が働きやすい環境づくり
・外国人が日本で働ける環境整備、など
【深さ】人材活用の幅を広げる動き
・在宅・リモートワークの推進
・副業・複業の一般化、など

この【面積×深さ】の対策が、各方面から一気に動き始めていて、それぞれがボトムから噴流を作りはじめようとしています。「働き方改革」と言われるものは、この流れを壊さずに促進していくムーブメントであると考えています。少なくとも、単なる「残業抑制」や「ブラック企業撲滅運動」で終わることはあり得ないと思います。

将来的には、兼業や副業、あるいは複業が当たり前になることによって、より多様な働く目的を実現できる社会がやってくるでしょう。このような社会になれば、当然、一つの企業に『就社』するという意識は希薄になります。専門的な能力を身につけて、専門的な仕事をするのが常識となっていくからです。

では、そういった変化の中でビジネスパーソンが備えておかなければいけないことは何なのか。それは、人それぞれ大きく異なります。強みも特徴も、やりがいだって、人ぞれぞれです。ただ、どんな人であっても、自分が必要とされ、期待されていることを感じながら働く方が、より幸せなはずです。
ただしそれは、働く側の責任だけでなく、企業・経済・国の影響によるところも大きく、近年は“女性の活躍推進”や“仕事と子育ての両立”などが取り沙汰されていますが、今後は、ミドル世代がちゃんと働ける環境や、労働力がなくて困っている業界や地方などに人がマッチングできるようになっていくことが、企業目線での課題として挙げられます。

一方、個人の目線でいくと、たとえば女性やミドル世代の活躍、働くことが難しい障がい者への訓練や働く機会の創出、移民・外国人の雇用など、様々な課題が挙げられるでしょう。
国の人口減少が進むなかで、より一層、社会全体で総生産性を担保することが求められていく。そのためには、自分の能力を活かして活躍できる人が増えていくことが不可欠なのです。

高齢化社会に対する、企業の先進的な取り組み

では実際に、多様な人材が活躍できる仕組みづくりを行っている企業の事例を紹介しましょう。

・ 大成建設
2010年より仕事と介護の両支援をスタート。まずは介護セミナーや介護に関するリーフレットなどといった情報提供から開始し、14年に介護休業制度を拡充。介護に専念するための制度はもちろん、情報伝達といった施策まで、介護に対する心理的負荷を軽減するための支援をさらに強化していくと発表しています。

・ 大和ハウス工業
15年4月より、「親孝行支援制度」を導入。これは、介護が必要な親を持つ社員の帰省旅費を補助する制度です。遠方に住む親元に何度も帰省するのは、金銭的な負担も大きい。そこで、年4回を上限に、帰省距離に応じた補助金(1.5万円?5.5万円/回)を支給し、企業が旅費を負担します。

高齢化に伴う親の介護で退職せざるを得ない人は増えており、深刻な問題です。夫婦の実家がそれぞれ離れていて、親が全く違う地域に住んでいる場合、たとえば金銭的に余裕があれば老人ホームなどの選択肢もあるけれど、そうでない場合は、自分たちでどうにかするしかありません。今後、企業のこういった施策が充実することによって、介護と仕事の両立の可能性が広がっていくことに期待したいところです。

後悔のない、仕事人生をやりきるために

一人ひとりが必要とされる社会を確立していくためには、もちろん、個人の意識改革も必要です。なんのために働いて、仕事人生を終える瞬間に、どこにたどり着いていたいのかを明確にしておくことが重要。このゴール設定ができていないと、その時々の優先事項や環境に振り回されて、後悔してもしきれない…なんて事態になり兼ねません。
仕事に費やす時間は長く、1日24時間のうち、およそ3分の1は仕事をしているわけです。残りの人生を見据えると、仕事人生の終わる瞬間は、死よりも先にやってくる。たとえば今40歳だとすると、定年まで残り25年という時間があります。20代・30代に比べれば、確かに選択肢は減っているかもしれませんが、過去に体験した反省や経験を活かしてもう一度チャレンジするには、十分な時間です。

自分の生きがいという本質と向き合い、自分の中にある成功体験を掘り返して再発見し、仕事人生の最後の瞬間に後悔しない働き方に、一人でも多くの方が、勇気を持ってチャレンジできることを願っています。
自ら主導権を持ち、他でもない自分の人生を生きるために。

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