社会人には2種類のスキルがあります。どんな会社に行っても通用する(求められる)スキルと、今の会社、今の仕事でしか通用しないスキルです。常にスキルアップを図るためには自分のスキルを客観視し、把握しておくことが大事。転職やスキルアップの際に役立つ「スキル棚卸」のしかたについてお伝えします。
スキルの市場価値や汎用性、将来性について考えてみる
テクニカルスキル(専門的なスキル)とヒューマンスキル(ベーシックなビジネススキル)、社会人の仕事力はこの2種類のスキルで測ることができます。
ヒューマンスキルはポータブルスキルとも呼ばれ、どこに行っても通用する汎用スキルです。コミュニケーションスキルやPCスキル、論理的な思考やチームワーク等がこれにあたります。一方テクニカルスキルはその業界や職種で必要とされる専門的な技術スキル。その企業でしか通用しないものも多くあります。常に自分の市場価値を上げていくためには、ヒューマンスキルをベースに価値の高いテクニカルスキルを獲得していくことが望まれます。ただし、技術革新が速い領域では10年先に必要とされるテクニカルスキルを予測するのは困難です。ITエンジニアが今、習得した言語は未来も必要とされるのか?残念ながら誰にも回答できないでしょう。
しかし、どんな状況でも「柔軟性」と「学び直せる情熱」があれば、必要な人材であり続けることが可能です。状況が変化した時でもヒューマンスキルとテクニカルスキルのベースは持っているというのがベテランの強みです。
定期的なスキルチェックで、今後の発展性が見込めない古いスキルには固執せず、新しいスキルの獲得にチャレンジする。それが自分らしいキャリアを創っていく上で大事なことです。
スキルの棚卸。言語化してみることが重要
転職時にはそれまでの経験や能力を伝えるためのツールとして「履歴書」や「職務経歴書」があります。同じ会社に10年以上いれば、社内異動も数回経験しているでしょうし、リーダーやマネージャーの管理職経験もある方も多いでしょう。
企業によっては職種と職能の定義があいまいなケースが多いので、第三者に伝える時には整理や工夫が必要です。
◯成果を出した仕事を支えた能力は何か考えてみましょう。
仕事のスキルの棚卸は自分が主体的に関わり、成果を出した事例を振り返って行うのが正解。その仕事でどんな役割を果たしたのか、どんな知識や能力を発揮したのか、成功に導くために、問題にどう対処したのか、どんな工夫や努力をしたのか、など詳細に思い出し書いてみてください。
その時成功の決め手となったスキルは何だったのか、自分の仕事に対する価値観やこだわりはどう影響したのかを意識するといいでしょう。成功経験を生み出した個々の能力はあなたの財産になっているはずです。
▼あなたのスキル 例
専門能力(スキル)
【ITエンジニアの場合】
要件設定スキル、必要なプログラミングスキル、システム設計スキル、業務分析スキル、業務設計スキル、PMスキルなど
【営業職の場合】
企業診断スキル、商談管理スキル、企画力、インタビュースキル
業務能力1(スキル)
顧客を理解する力、問題を見つけて課題設定する力、問題解決する力、提案力、人脈ネットワーク、ファシリテーションスキル、コーチングスキル、語学力、簿記
業務能力2(スキル)
コミュニケーションスキル、ITスキル、環境理解力、交渉力、論理的思考力、行動力、創造力、忍耐力、継続力、主体性、共感力、誠実さ、成長意欲、自己肯定力、レジリエンス(回復力)、傾聴力、説得力、自己管理能力、時間管理、適応力、変革スキル、リーダーシップ、チームワーク構築力、目標設定力、目標達成力
知識
業界知識・商品知識、法律や商習慣、組織理解、業務ルール、社内カルチャー、一般常識、一般教養
◯キャリア資産を次の仕事でどう生かすか、第三者に伝えられるよう言葉にしてみましょう。
筆者が担当した相談者の仕事能力の棚卸例
Aさん<社内システムプロジェクトのリーダー>
うまくいかなかったときに彼は何を考えどう動いたかがポイントでした。
・チームのキーマンと個別面談し本音のヒアリング
・目標を見える化し情報共有の仕方を変えた
結果としてチームがまとまり気持を一つにできたことが成功につながったと話してくれました。
共感力や問題発見力、解決力。目標の見える化×モチベーションアップも彼の重要なスキルです。
Bさん<事務職のベテラン>
ミスが多く生産性が悪い職場での改善努力がポイントとなりました。
・業務の分析、ボトルネックの発見
・新しい業務フローの構築と導入・浸透
結果として生産性アップとミス低減に成功しました。
普通の事務経験しかありませんという彼女でしたが、現場に入りこんで業務フロー設計やミス削減の旗振りから実行までをやりきったスキルを他者にわかるように言語化し転職サポートしました。
自分自身の業務スキルは企業内に埋もれてしまうと一人では価値定義ができなくなりがち。第三者の力を借りることで、「私の強み、スキル」がぐっと言語化しやすくなります。シニア世代でも自分の能力に対して価値付けが出来れば活躍するステージは広がっていきます。ぜひ一度試してみることをおすすめします。