ITリテラシーの発達などにより、以前よりも起業し、独立して働くことが容易になった時代ですが、一方で「組織の中で働く」という点にメリットも多いのは事実です。今回は、「独立して働く」場合と「組織の中で雇用されて働く」場合のマネー面でのメリット、デメリットを紹介していきたいと思います。
独立起業し個人事業主になった場合
まず、起業して個人事業主になった場合を見ていきましょう。個人事業主の場合、確定申告が必要になりますが、青色申告を選択すると、65万円を青色申告特別控除額として税金の課税所得から差し引くことができます。複式簿記を記帳すること、必ず期日までに確定申告を終えることが必要ですが、大きなメリットですよね。また、事業主の家族を従従業員として雇う場合は、1日6時間以上ないしは月15日以上、年6か月以上働くことが目安になりますが、その給与を課税所得から差し引くこともできます。
さらに、事業主として自宅をオフィスにした場合、光熱費や家賃、仕事で使用する携帯電話通信料などを案分し必要経費の一部として課税所得から差し引くことができますし、パソコンなどの30万未満の減価償却資産を購入した場合も、事業年度内に全額経費とすることができます。内容にもよりますが、購入した本や新聞、などについても、仕事で必要な経費と申告することができるでしょう。
そして、個人事業主の場合、取引先から仕事に対する支払いがあれば、通常所得税として源泉徴収10%プラス復興税が差し引かれていますが、経費を引いて残った課税対象所得が少なければ、先に払っていた所得税が還付されることになります。
起業した場合のデメリットは
では、デメリットのほうはどうでしょうか?まずあげられるのが、年金のことです。みなさんが雇用されている時は、基本的に厚生年金に加入していますが、この際払っている金額は、雇用主の企業と加入者個人の給与からの折半となっています。つまり、半分を会社側が支払っているということですね。それに対して個人事業主になると加入する国民年金は、加入者本人しか金額を支払いません。積み立てされていくみなさんの支払い額が違うので、将来の年金支給額には大きな差が出てきてしまいます。
また、健康保険も会社の所属している健康保険組合ではなく、国民健康保険への加入になります。医療費支払いの3割負担は国保でも同じですので、その点は特にマイナスではありませんが、病気が長引いて会社を休むことになった際はどうでしょう。事業主として働いている人には有給休暇はありませんので、休んだら休んだだけ収入が入って来ないことになりますし、会社員の場合申請すればもらえる傷病手当や、その他就業規則で守られている休業中の手当等もまったくありません。
さらに、雇用されていないので、事業主は雇用保険には加入できず、支払う義務もありませんが、そのかわり、仕事がなくても失業保険もありません。会社員に対して行われている様々な救済措置はまったくない、ということを頭に置いておく必要があります。雇用されて働いている、というのは、ある意味本当に安定してお金の面での保証がある、ということなのです。
事業主の場合、定年はない
では、収入面では、独立して働く場合、不安ばかりなのでしょうか。そうではないですよね。なぜこの選択をする人が多くなったか、というと、ひとつには、自分の力で収入を短期間で増やすことが可能という点があるからです。営業やマーケティングの努力をして仕事を見つけてくる必要はもちろんありますが、請け負う仕事が多くなればなるほど、その月の収入にすぐはね返ってきます。会社員時代には考えられませんが、前月に比べて数十万収入が増える、ということも十分あり得ます。
また、自分で事業を行っている場合には、定年というものはありません。廃業届をいつ出すのか決めるまでは続けていくことができますので、事業の内容によっては、会社員の人に比べると、会社員の60歳定年より後の年齢での収入は事業主のほうが多いケースもよくあります。70歳を過ぎても、仕事を続けていけば、収入がたくさん得らえる場合も多いのです。
どちらを選ぶかは生涯収入を考えてから
みなさんなら、どちらを選ぶでしょうか。「自分のやりがい」「働く環境」など収入面だけが決断する優先順位ではないと思いますが、独立して働く場合には、85歳、90歳位までの人生に必要なお金の額と自分の現在の会社での給与や今後定年までに得られる収入、独立した場合に予想される生涯収入をライフプランとして計算し、比較して考えることをおすすめします。それによって、副業として少しプラスの仕事を行う、という選択肢や、将来はどんどん事業を伸ばして法人化する、というようなプランも出てくるかもしれません。ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談することも考えてみてはいかがでしょうか。