激増する自治体業務が大問題?! BPOサービスを活用した地方創生は救世主となるか?
GLOCAL MISSION Times 編集部
2022/01/31 (月) - 15:00

新型コロナ感染拡大防止のための接種券発送やワクチン接種の準備、各種支援金・給付金の準備などで、自治体の業務が激増しています。このような緊急事態時の業務は、体制の準備など待ってはくれません。自治体には、本来の公共サービスを提供しながら、このような突発的な業務の発生時にもしっかりと機能することが求められるのです。そこで昨今、自治体での利用が増えているのがBPOサービスです。今回はBPOサービスの概要から活用の事例、地方創生に役立つ理由などについて解説していきます。

BPOサービスとはなにか?

BPOとはBusiness Process Outsourcingの略で、企業が行う業務の一部をまとめて外部に委託するアウトソーシングの一形態です。業務を外部委託することをアウトソーシングと言いますが、BPOサービスと一般的なアウトソーシングとは何が違うのでしょうか?

BPOサービスとアウトソーシングの違い

一般的なアウトソーシングは業務(プロセス)の「一部」を切り出して外部委託することがほとんどですが、BPOサービスはソフトウェア開発で言えば企画段階から設計、運営まで「一括」して外部に委託するのが特徴です。

たとえば、もともとノウハウを持っていないような業務を顧客から依頼されてしまった場合、ノウハウの構築から人材の確保、慣れない業務の管理までを行うのは非効率になるばかりでなく、その業務の完遂ですら危うくなってしまう場合があります。このようなときに活用されるアウトソーシングの形が、BPOサービスなのです。

また一般企業の場合は、顧客に受注辞退を伝えればトラブルになるような事態は避けられるかもしれませんが、自治体など公共機関の場合は、業務を辞退するという選択肢は無い場合があります。

自治体がBPOを活用しなければならない理由

冒頭で書いたように、自治体には本来の業務である「公共サービス」を安定的に提供する責務があります。自治体は、役所での窓口業務のみならず、水道や下水道事業、図書館や公民館の運営、学校等の教育業務、医療・介護・子育てなどの社会保障サービスまで、ありとあらゆる公共サービスを提供しています。このような主たる業務をコア業務と呼びますが、先述のような緊急事態が発生し他の業務が増えたとしても、コア業務をおろそかにするわけにはいかないのです。

自治体業務に従事する地方公務員は、そうそう簡単に増やすことはできません。コア業務を犠牲にせず突発的な業務に対応するためには、どうしても外部の力を借りる必要があります。ここで通常のアウトソーシングのように業務の一部を切り出そうとすると、自治体内にその業務のノウハウを持ち、委託先を総合的に管理できる人間を置く必要が出てきます。

しかしながら突発的に発生した業務の中には特殊なノウハウを必要とするものも多く、すぐに自治体で対応できるものばかりではありません。そこで、BPOサービスの活用が必要になってくるのです。

自治体のBPO活用事例

それでは実際に、自治体でBPOサービスを活用した例にはどのようなものがあるのでしょうか?

城の管理・運営を民間事業者に委託 

静岡県掛川市では、市内にある掛川城の管理・運営を地元でホテルを経営する民間事業者に委託(BPO)。独自のノウハウを活かして貰うことにより、以下のような効果を見込んでいます。
・関連施設の一体管理による管理経費の削減
・サービス内容の拡大
・3年目以降は、現在3,100万円かかっている指定管理料を独立採算(補助0円)で運営
・営業利益を住民が利用できる施設に投資として還元予定

社会保険の受付業務等を委託 

千葉県白井市では、国民健康保険や国民年金、後期高齢者医療に関わる届出などの受付業務、システムへの入力業務などを一括して外部に委託。コア業務に職員が集中できるよう、業務プロセスを改善しました。また受付のプロセスや誘導に関しても受託企業のノウハウを活かし、来庁者の待ち時間を1時間から20分程度に改善しています。

他にも、各自治体で「定額給付金関連事業」や「大規模接種センターの運営業務」などにBPOサービスが活用されており、スムーズな自治体運営にBPOサービスは欠かせないものとなりつつあります。

地方創生にもつながるBPO

上記の「自治体のBPO活用事例」にある掛川城の事例では、地元の企業にBPOサービスが依頼されていました。また他には自治体の依頼がきっかけとなり、別の地方にあった企業が、自治体のある地域にサービスセンターを設立したという事例もありました。必要な業務があれば雇用が生まれ、人の移動や地域での消費が発生します。それは自治体の税収にも変化をもたらし、再び地域の利益へと還元されていきます。このようにBPOサービスは地域の活性化、つまり地方創生にもつながっていくのです。

まとめ

突発的な業務ばかりではなく、定常的な業務へのBPOの活用が進めば、自治体を中心として地域創生の輪が拡がっていきます。またBPOサービスの活用は、自治体自身の効率化にも有効です。今ある公共サービスを民間事業者の目で見直せば、地域の更なる発展にもきっとつながることでしょう。

<参考>

都心部で「DX」「副業」「在宅ワーク」が進む中、地方企業がチャンスを掴む方法とは。
https://turnup.tokushima.jp/column/local-companies-and-human-resources

業務効率化、コスト削減をもたらすBPOとは?アウトソーシングとの違いも解説
https://www.kokuwa.co.jp/blog/archives/278/

地方創生や雇用拡大も、自治体BPOの成功例を紹介
https://bizdrive.ntt-east.co.jp/articles/dr00081-006.html

5分でわかる「BPO」とは|対象業務や具体的な事例を解説
https://www.persol-group.co.jp/service/business/article/2497/

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