【観光産業を盛り上げていきませんか?Vo.2】観光産業回復へ ~地域の観光資源の発掘と磨き上げ~
亀和田 俊明
2022/07/07 (木) - 13:00

政府は6月7日に「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針)」を閣議決定しましたが、観光分野については社会課題の解決に向けた取組として位置付け、「観光立国の復活」と明記し、我が国の成長戦略の柱のひとつとして、地方経済・雇用を支える観光立国の復活を図り、地方創生を進めるとしています。今回は6月10日から訪日外国人旅行者の受け入れを再開し、全国各地で需要や消費への期待が高まる「観光」を巡る現状などについて触れてみたいと思います。

「旅行・観光開発指数」世界ランキングで日本が初の首位

新型コロナウイルス感染症の水際対策のため、約2年間にわたって停止されていた訪日外国人旅行者の受け入れが再開されました。政府は再開に先立って実施された5月24日から4ヵ国を対象とした少人数の実証事業を経て、入国枠は1万人から2万人へ拡大しましたが、当面の対象は米国や中国、韓国など98ヵ国・地域で、添乗員付きの団体旅行客に限定されます。今後、入国者数の上限拡大や訪日観光の条件なども見直されてくることでしょう。

訪日外国人旅行者の入国が再開されるなか、5月24日に国際機関の世界経済フォーラムが発表した2021年版の「旅行・観光開発指数」の世界ランキングは、調査対象となった117ヵ国・地域で日本が初めて首位になりました。日本は、前回(2019年版)は4位(2021年版の評価基準で計算し直すと2位)でしたが、交通インフラや文化資源などの項目で高い評価を得て、米国をはじめ前回の上位3ヵ国のスペイン、フランス、ドイツを抑えての1位でした。

「旅行・観光開発指数」2021年版ランキング

ランキングの算出にあたっては112の評価項目がありますが、「殺人発生率の低さ」(2位)や「モバイル端末の普及率」(2位)、清潔さといった、旅行をする上で重要な治安の良さや安全・安心面もさることながら、「口承および無形文化遺産の数」(4位)、「世界文化遺産の数」(9位)、さらに「文化・娯楽観光に関する検索の数」(4位)、各地の祭りや伝統芸能など文化や自然といった観光資源の豊かさも日本が評価を得た大きな魅力と思われます。

そして、「交通インフラ」が最も高い評価を受けました。「鉄道サービスの正確さ」と「公共交通機関の本数」が1位、「航空サービスの値段」が3位、「アクセスの良さ」が5位でした。鉄道会社が発行のICカード乗車券が外国人にとっても利用しやすくなったり、新幹線をはじめとする鉄道の時間の正確さ、LCCの運航が増えたことによる低価格化や空港から乗り継ぎ場所や宿泊地までのアクセスの良さなど利便性も大きな要因といえるでしょう。

地域経済を支える観光の存続と本格的な復興の実現へ

我が国では新型コロナウイルス感染症の影響により交通・観光需要の減少に伴い、関係事業者や地域は未曽有の危機に直面しましたが、国土交通省の令和4年度予算では、ポストコロナを見据え、公共交通の活性化とともに、地域経済を支える観光の本格的な復興の実現に取り組むとしています。「社会経済活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大」の項では、「観光を支える観光の存続と本格的な復興の実現」として、以下の事業が掲げられています。

地域経済を支える観光の存続と本格的な復興の実現
a)「新たなGoToトラベル事業」の実施
b)地域経済を支える観光の継続的支援と本格的な観光の復興に向けた施策の推進
c)社会資本の整備・利活用を通じた観光振興

最も大きな事業としては、地域経済を支える観光の需要喚起を図るため、地域観光事業支援による県民割の対象地域を段階的に拡大した上で、ワクチン接種証明や検査の活用による安全・安心の確保を前提とした仕組みに見直すとともに、平日の旅行需要の分散化策等を講じつつ、「新たなGoToトラベル事業」を実施するとしています。

さらに、地域経済を支える観光の存続のため、観光産業への継続的支援を行うとともに、本格的な観光の復興に向けて国内観光需要の回復、インバウンドの段階的復活を見据えた取組を推進するといいます。また、観光資源としての既存ストックの公開・開放などの社会資本の利活用や観光客の移動円滑化等にも資する社会資本の整備を通じて、地域の観光振興に貢献する意向です。

魅力度上位の都道府県は地域の魅力生かす観光地づくり

さて、地域の魅力を数値化した指標である「魅力度」について、ブランド総合研究所がまとめた「地域ブランド調査2021」では、47都道府県で最も魅力度が高かったのは北海道で73.4点でした。前年の60.8点から大幅に上昇し、調査を開始してから13年連続で1位を記録したほか、約9割が「魅力的」と答えています。2位には前年から6.5点上昇した京都府が北海道と同じく13年連続の2位でした。

3位は僅差で沖縄県、4位には東京都が前年と同様で続いていますが、5位には神奈川県を抜いて大阪府が前年と順位が入れ替わりました。7位は9位から順位を上げた福岡県が過去最高タイでした。8位の長崎県が11位から急上昇しています。反対に奈良県と長野県はいずれも順位を少し落とし、石川県は昨年と同順位でした。4位から6位までは40点台、7位から10位までが30点台とベスト3の道府県とは大きく点数が離れ、評価を分けています。

「都道府県魅力度ランキング」上位の都道府県の観光関連施策

「魅力度ランキング」で上位に名を連ねた都道府県は、いずれも魅力的な文化や自然など観光資源に恵まれた地域ですし、観光産業にも力を入れていますが、期せずして各自治体の令和4年度予算の施策には、「地域の魅力」や「観光地づくり」などの重なる文言が並び、そのために観光資源の発掘や磨き上げる事業が掲げられています。観光事業において新たな需要を掘り起こすとして観光庁も支援する地域の文化や自然に配慮した「サステナブルツーリズム」などは、今後、地域の魅力を引き出すという視点からも注目されるのではないでしょうか。

観光庁も令和4年度においては、地域経済を支える観光の本格的な復興の実現を図る取組を引き続き推進する意向ですが、中長期的な滞在者や反復継続的な来訪者の増加、豊かな自然や食、歴史、文化・芸術、地場産業(生業)など地域ならではの観光資源を活用したコンテンツについて、ブランディングや販路開拓を支援し、地域の稼げる看板商品の創出を図るとしています。

感染症拡大前の2019年には訪日外国人旅行者数は3188万人でしたが、早期回復を目指すものの、個人手配の旅行などが再開されないなかでは、そのレベルまでには未だ時間を要することでしょう。回復がみられるまでは旅行者数を計る観光ではなく、先ずは国内旅行者に目を向けて自治体は元より観光事業者など観光地側も地域の魅力の見直しや観光資源の発掘と磨き上げが必要でしょうし、ひいては訪日外国人旅行者の満足にもつながるのではと思われます。

ポストコロナの需要に対応するさらなる地域の魅力的な観光コンテンツの発信強化も求められます。市場ごとのニーズに応じた発信を行うことで、ファンを造成し、再訪したくなるリピーターも獲得できることでしょう。冒頭の「旅行・観光開発指数」ではありませんが、世界に誇る日本のポテンシャルは観光ともいえますので、観光地の再生や観光サービスの高付加価値化などを官民連携、地域一体となって取り組むことが重要といえます。

※REVIC観光特設ページURL
https://glocalmissionjobs.jp/lp/kankou

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