IT企業に手厚い補助金で注目を集める兵庫県。地域活性化のキーパーソンは“IT系Uターン起業家”
GLOCAL MISSION Times 編集部
2017/04/27 (木) - 13:00

「キーパーソン」は誘致活動のヒーロー的存在

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──最初に誘致活動に力を入れ始めたきっかけや背景などがあれば教えて下さい。
神戸を中心とした阪神地域は人口が多いエリアですが、中山間地域はどうしても人口減少が止まらないんですよ。例えば、丹波市で言うと1960年は80,000人を超えていた人口が2015年には65,000人を割っていて、高齢化に伴う労働人口の急激な減少も大きな問題なんです。労働人口が減ると、当然ですが税収が減り、健全な地域運営ができなくなってしまうので、誘致活動を強化していこうってことで、2013年から取り組みを始めました。

──丹波市に限らず、全国の中山間地域はみなさん同じような悩みを抱えていますよね。
そうですね。それぞれ同じような悩みを抱えていますが、地域によって特徴があるので地域活性化の手段は様々だと思います。丹波で言うと、大阪や神戸からも車で1時間くらいなんですよ!交通の便が良いですし、インターネットインフラも整っているのでIT系の企業誘致に力を入れています。

──IT系の企業は大きな資本がなくても事業をスタートできますし、中山間地域はクリエイティブな仕事に向いた場所ですよね!
そうなんです。エンジニアやクリエイターの方にお話を聞くと、こう言った自然豊かで時間の流れを感じられる静かな場所は、仕事が捗るって口を揃えて言ってくれます。クリエイティビティが刺激されるみたいですね!

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──2013年から誘致を開始されたと思いますが、進捗はいかがですか?
現状は、12社(2017年2月現在)です。順調に推移していて、特に丹波篠山エリアに多くの企業が集まってますね!

──丹波篠山エリアに企業が集中するのは何か理由があるんですか?
先ほどお話した通り、交通の便が良いというのもありますが、一番大きな理由は「キーパーソン」がいたからなんですよ。株式会社ご近所の創業者で、現在は丹波市市議会議員を務める小橋さんがサテライトオフィス開設の先駆け的な存在で、丹波市の情報を発信して下さったり、企業誘致や地域活性の一躍を担ってくれています。

──そうだったんですね!
今では、株式会社ご近所さんに丹波とは縁もゆかりもない方が、何人も入社されて移住してくれていて。こういう企業さんをどんどん増やしていきたいと思ってます。ただ、丹波のことを何も知らない方が、いきなり立地するのはハードルが高いと思っているので、地元出身者を中心にUターンで戻ってきて起業されたり、サテライトオフィスを構えてもらえると嬉しいなと。

──地元出身でないと、なかなか「キーパーソン」的な存在になれないですよね。
そうなんです。地元出身の方が、小橋さんのように「キーパーソン」になってくれて、地元のことをよく知っているからこそ、「空き家があるよ」とか「ここら辺で開業されるなら、この人を訪ねた方がいいよ」とか、いろいろとアドバイスを貰えると思うので、他の地域にも「キーパーソン」を増やして行きたいと思ってますね。

県と市の補助制度でIT関連企業の進出を支援

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──一方で、誘致を後押しする補助内容も大事な決定要因だと思いますが、兵庫県の補助制度についても教えてください。
「賃借料」「通信回線使用料」「人件費」「建物改修費」「事務機器取得費」の補助があって、例えば賃借料なんかで言えば、賃借料の50%(最大5万円/月)の補助を3年間継続できます!あと、丹波市と西脇市、宍粟市、多可町に関しては、市からの補助もあるのでかなり手厚い補助になっていて、上限はありますが経費の75%を補助する仕組みになっています。

──それは凄いですね!!
起業当初って、売上が不安定だったり、先が見えない状況の中でスタートする企業さんがほとんどだと思うので、固定費の補助は凄く喜んでくれますね!中には、起業するか迷っていたときに、補助制度を知って起業を決意されたという方もいますよ。

──確かに補助金があることで気持ち的な部分で後押しされることもありそうですね。ただ、起業するってことは、そこに移住する可能性は高いですよね?そうなると、暮らしやすさも重要なポイントになると思いますが、生活環境もしくは移住者への補助金などもあるのでしょうか?
もちろん、大事な部分ですよね。移住後の生活や医療に関する支援なども各市町を中心に実施しており、その内容も充実していますよ。

故郷に帰りたいと思ってもらえる町づくりを

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──どのような地域づくりをしていきたいと考えていますか?
やっぱり進学や就職のタイミングで上京する人が多いので、そのタイミングで毎年ものすごい人数が県外に出て行ってしまうんですよね。それが原因で生産年齢人口が年々減っていて、高齢化が進んでいくことが一番の問題でして…。なので、そういった若い人たちが帰って来られる、帰ってきたいと思えるような地域づくりをしていかないと駄目だと思っていますし、それに見合った受け皿を用意していかなければならないと思っています。幾らお金の支援をしても、暮らしやすさが担保されなかったら、移住者は増えていかないですよね。

──最後に、今後の展望を教えてください。
企業の誘致で言えば、制度が根付いてきた地域がある一方で、全体的に見てみるとまだまだ根付いていない地域の方が多いのが現状なんですね。現在、PR活動で積極的にイベントへ出展したり、ツアーを組んで地元の人と触れ合う企画を立てたりしています。なので、そのPR活動を更に強化して、兵庫県の丹波以外の中山間地域でも新しい企業さんに入ってもらえるようにサポート体制を強化していきたいと思っています。

▼誘致企業のご紹介(2017年2月1日現在)

  • ①コハクWebデザイン(オフィス開設日:2015年)
    地域事業所へのIT導入による町興し
    URL:http://atoriekohaku.com/

  • ②株式会社ご近所(オフィス開設日:2013年)
    クリエイター集団によつ地域づくり
    URL:http://gokinjo.sc/

  • ③株式会社宍粟ソリューション(オフィス開設日:2014年)
    地域密着型システム開発
    URL:http://www.shiso.co.jp/

  • ④PUBLIC FARM(オフィス開設日:2015年)
    「農業×IT」地域の農家を支援
    URL:http://hyogo-it.jp/interview/public-farm/

  • ⑤株式会社いなかの窓(オフィス開設日:2014年)
    地域活性を軸とした若きIT集団
    URL:http://inc.inakanomado.com/

  • ⑥ワンズ株式会社(オフィス開設日:2014年)
    Iターンによるインターネット販売会社を企業
    URL:http://hyogo-it.jp/interview/wanzu/

  • ⑦DTFジャポン合同会社(オフィス開設日:2014年)
    「田舎×IT」で町を活かすITベンチャー
    URL:http://www.dtf-japon.com/

  • ⑧ZUTTO株式会社(オフィス開設日:2014年)
    廃校を利用したインターネット販売の西日本拠点
    URL:http://www.zutto.net/

  • ⑨株式会社ライズアンドカンパニー(オフィス開設日:2015年)
    エンディング産業に特化したITサービス
    URL:http://www.riseandcompany.com/

  • ⑩Kreativ(オフィス開設日:2015年)
    「地域密着×グローバル」淡路島を拠点にしたITビジネス
    URL:http://www.kreativ.jp/

  • ⑪株式会社Apreco(オフィス開設日:2016年)
    伝統工芸品のアップサイクル型インターネット販売
    URL:http://apreco.jp/

  • ⑫Kajiyano(オフィス開設日:2016年)
    クリエイターが集うコワーキングスペース
    URL:https://www.instagram.com/Kajiyano/
     

兵庫県産業労働部 産業振興局 新産業課長

宮口 美範(みやぐち よしのり)

【兵庫県丹波市】 人口66,062人、面積49,321?。兵庫県の中央東部に位置し、急斜面をもった山々によって形作られた中山間地域となる。気候は瀬戸内海型、内陸型気候に属し、年間、昼夜間の寒暖差が激しく、秋から冬にかけて発生する丹波地域の山々をつつむ朝霧、夕霧は「丹波霧」と呼ばれ、豊かな自然環境に一層の深みと神秘さを醸しだしている。 また、小豆の王様と言われる丹波大納言小豆は丹波市が発祥の地。
参考:丹波市役所公式ホームページ

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