挨拶は新人からではない? キャリア層こそ意識したい職場の慣習
久保田 一美
2018/12/22 (土) - 08:00

社会人として根付いてしまっているであろう「挨拶は新人からしましょう」という慣習。2年目、3年目社員であっても、管理職であってもその慣習を伝え続けてしまいます。働き方改革のなかで「誰もが気持ち良く働く職場」では、キャリア層こそ意識したい職場の慣習があります。

生産性を上げるために必要なこと

「おはようございます」、「こんにちは」、「お疲れ様です」など、気持ちの良い挨拶を今日もしていますか。働き方改革を推進する上で、職場での生産性を上げる施策は業務改善だけでは実現できません。ムリ・ムダ・ムラをなくそうと躍起になるあまり、そこで働く人たちが息苦しくなっているようでしたら、本末転倒です。

生産性を上げる施策は色々あるなかで、「誰もが気持ちよく働けること」の優先度を上げている企業はどれくらいあるでしょうか。改善をし、従来よりも業務が効率的になっても痛みを伴うものであれば、長続きはしません。

そして、従業員が気持ちよく働ける職場にある慣習の一つに、「職位に関わらず、挨拶ができていること」が挙げられます。「挨拶以外の職場環境は良いけど、挨拶はできていない」という例外はないということです。大切なことなのに、些細なこととなりがちな「挨拶」。

新卒社会人として、ほとんどの方が新入社員研修で「挨拶の仕方」を学んでいます。大きな声で、相手の目を見て、しっかりと挨拶する姿は気持ちの良いものですが、いつから声は小さくなり、相手の目を見ないようになり、自分からはしなくなってしまうのでしょうか。

「挨拶」に関する思い込みを手放す

このような経過がなされてしまう要因の一つに、新入社員時の「挨拶は新人からしましょう」というメッセージに込められてしまっているのではないか、と感じています。これは、社会人として必ず一度は耳にしたメッセージではないでしょうか。

しかしながら、新人といわれる期間は、長い社会人生活の中でもわずか1年間。職場によっては、翌年には後輩が入社することになり、すぐに2年目社員になります。そしてその2年目社員は違和感もなく、「挨拶は新人からするものだ」となり、同じようにいい伝えていきます。

3年目、4年目……リーダーや管理職層になってからも、この慣習は続いていきます。このメッセージのままで良いのでしょうか。

筆者である私は、企業や中央官庁、自治体などで研修をする機会が多いのですが、対象が新入社員だけでなく、管理職の方であっても「挨拶は気づいた人から」と伝えています。なぜなら、先に記したように「働きやすい職場は、例外なく職位に関わらず気持ちの良い挨拶が交わされている」からです。

管理職の方対象の「マネジメント能力向上」研修や、働き方改革の一環での「働きやすい職場づくり」研修などの一部でも、必ずこのことをお伝えしていますが、自身の行動を省みて、「挨拶の重要性を認識した。気がついても挨拶を自分からしていなかったので、明日から実践していく」という感想や行動宣言をされる方の多さに驚愕することがあります。

おそらく、「挨拶は新人、部下や後輩からするものだ」という根強い思い込みとなっているのでしょう。

キャリア層こそ意識したい慣習

「挨拶」とは、誰のためにしているのでしょう。挨拶とは、「あなたのことに関心をもっています」、「あなたのことを大切に思っています」ということを伝える素晴らしい慣習でありたいものです。そう考えたとき、職位などによる順番は重要ではありません。

2年目以降?キャリア層や管理職層の方であっても、気づいたら自ら大きな声で挨拶していきましょう。部下、後輩は、上司から声を掛けられたら嬉しいものです。ましてや新入社員は、自分から上司に声を掛けることにとても緊張しているでしょう。このように上司、先輩方が上下関係を意識しないで気持ちよく挨拶を交わしていたら、自身が後輩をもつようになっても、自然に自ら挨拶をし続ける人になります。

そのためにも、今日から「挨拶は気づいた人から」と慣習を変えていきましょう。どんなに仕事ができても、どんなに新しい挑戦をしたいエネルギッシュな方であっても、相手の目を見て挨拶ができなければ、信頼関係はできません。

また、働きやすい職場をつくるコミュニケーション手段は、face to faceだけではありません。離れたところで仕事を進める方にも、メールやチャットであっても、第一声だけは「おはよう」などの挨拶から。わずか5文字以内の文字があるか、ないかだけで、相手の存在をリスペクトする行為となります。生産性を高めるために、ほんの少しの思いやりまで省いてしまっては、後に続く仕事がスムーズに運ばなくなってしまいます。

働きやすい職場をつくっていく要は、キャリア層、管理職の方々。その信頼関係の第一歩は「気づいたら自分から挨拶ができる人」なのです。

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