現職の不満がきっかけで、転職を考えるケースは多いと思います。「今すぐでも辞めたい」と思うその気持ち。「退職してからゆっくり考えよう」というその行動。ちょっと待った! です。本当に、今の会社でやれることはありませんか?
「今」を捨てたら、もったいない
「転職理由」と「退社理由」は、異なるもの。私は、キャリアアドバイスそのようなお話をしています。転職理由は、職を変える理由、目的。退社理由は、今の会社ではダメな理由です。 現職への不満を軸に転職活動をすることは、結果、同じことで転職を繰り返すことがあります。ゆえに、軸が定まらないうちに現職を辞めてしまうことはおすすめしません。
転職活動は、現職でやれることはないか? 現職でやり残したことはないのか?
それは外に行けばあるのか? を考える時間でもあります。
また、職務経歴書を書くなかで、自分は何を工夫したのか? 何ができたのか? などを考え、もし書くことがないと思ったときには、現職は、アクションを実践できる場所として活用することができます。
しかし、辞めてしまったら、相対比較もなくなれば、自分がアクションする場所もない。
つまり、現在進行形で進めていることもなければ、やろうと思ってもやれる場所がないということになります。
退職してしまったら、それはすべて過去のことになってしまって、面接でいえることもそれ以上増えることはありません。
現職を活用しつくす。そこから見える未来もある
私はよく求職者の方にこんなお話をします。
「もし精神的に辛くなるほど、辞めたいという気持ちにまでなっていないのであれば、できるだけ残って、現職を活用しましょう」
現職でこのままやっていても、得られるものがない。そう判断したから転職活動を始めていると思います。であるならば、その転職活動のために、現職を活用しましょうという考え方です。
こんな方がいました。
「今の会社で仕事をしていても、何も成長しないから今すぐ辞めたい」
実際にいろいろヒアリングしていきましたが、数字の目標がなく、何も結果として提示できるものがありませんでした。
「では、今の会社で残り2カ月頑張って、自分が何を結果として残せるか、また自分がどういう考えで仕事をしているのか、などを意識してみてください。今の会社を辞める覚悟ができているのであれば、残りの期間を転職活動のために今の会社を活用しましょう」というお話をしました。
結果としてその方は、今の会社を活用する、今の会社での自分がどういう仕事をして、何を考えているのかなど、集中して向き合い、職務経歴書の内容、面接での発言の仕方に具体性が出ました。最初は面接で話すことも多くはなかったところから、内定までこぎつけたのです。
また、この考え方によって、今の会社に残ってもいいのでは? まだやり切れることがあるのでは? というふうに、現職に目的をもって残るという結果になった方もいました。
転職はゴールではなく、スタート
誰もが、「今の会社から出れば、幸せになる」「今の会社から出れば、何かが変わる」と思って転職活動を始めますが、それは環境を変えるだけであって、自分は何も変わっていません。たしかに、環境が変わると多少の影響はありますし、最初は新鮮でモチベーションがアップすることもあると思います。
しかし、転職活動はゴールではありません。そこからがスタートです。毎日働くのは自分です。現職を冷静に客観的に見つめることは、自分の働く姿勢にも大きく影響します。
現職のとらえ方が変わると、仕事の姿勢も変わり、仕事の結果にもつながります。もしかすると答えは、転職だけじゃないのかもしれません。現職でやれることを発見するチャンスにもつながります。
「今すぐ辞めたい、もう辞めちゃおう」の前に、是非、一度立ち止まって。現職を客観的に見つめてみると、ちょっと違う視点で発見があるかもしれません。
(2018年1月30日掲載)