転機を活かして、より良いキャリア形成へ
久保田 一美
2017/08/02 (水) - 08:00

働き方も多様化する社会が広がっていく中で、自身のキャリア形成をどのように築いていくのか。高度成長期時代における終身雇用制度や年功序列の社会は、もはや過去のものになりつつあります。このような変化の過渡期において、キャリアプランを考えることは難しい反面、プランを考えたとしても不測の事態もあり得ます。しかし後者の場面であっても、秘訣やしなやかさを備えていれば、ご自身のキャリアが開かれていくのではないでしょうか。

「転機」をどう捉えるか

社会人経験がある方であれば、初めての入社の時はほとんどの人がそれまでにやったことのない業務に就き、スキルを積み上げていきます。現在は学生であれば、企業のインターンシップを通じ、短いものでは1日や2日、中長期であれば数ヶ月単位、女性であれば子育てなどを理由に一旦企業を退職し、ブランクの長い方が再就職する機会として、ママインターンなども始まり、事前にリアルに経験できることも可能になってはきています。

このような制度は、実際に就職する前に職場での理想と現実のギャップを埋めることになり、企業側にも自身にとっても非常にメリットがあり、注目を集めています。

しかし、そのようにして入社した企業であっても、会社の業績動向やコスト削減、新規事業の強化など様々な都合で、思いも寄らなかった部署への異動やグループ会社への出向、地方への転勤などは良くあることです。

そのような転機を迎えた時、「思い描いていたキャリア形成とは違う」と感じ、新しい経験をせずに辞めてしまうか、「まずはやってみよう」と思うかで、将来が変わるということがあります。

不測の事態、人との出逢いでキャリアが築かれる

かくいう筆者の実経験ですが、新卒で入社した会社では、自身がやりたいと思っていた仕事内容で配属され、やりがいを感じ、後輩も出来、この仕事をずっと続けたいと思い始めた社会人4年目にして、それまでに全く経験値の無いマーケティングの部署への「異動」を経験しました。

今でも鮮明に覚えているのは、その異動を通達されたシーン。「異動したくない」という気持ちばかりが溢れていましたが、実際にその新しい業務をやってみると、また別のやりがいを感じ始め、その後20年以上に渡り、マーケティングの分野でのキャリア形成をしていくことになったのでした。

また、筆者が30歳の頃に訪れた「転職」については、将来的なキャリア形成を見据えて自分から行動を起こしていた時に、「人との出逢い」をきっかけにもたらされた機会でもあり、キャリアアップの道に進むことができたと感じています。

そして、それらを振り返ってみれば、自身が予測していなかったような「偶然」のことが創り上げたものであると言っても、過言ではないと思っています。

より良いキャリア形成のための5つの行動指針

文系出身でシステムエンジニア、理系出身で営業職。このように、社会人としてのキャリア形成において、一部の職種を除いては、学生時代に学んだことではない分野で働くことになる人も少なくありません。

入社後間もない頃なのか、それとも筆者のようにキャリアを積んでいる道半ばの頃なのか。いずれにしても不測の事態をどう捉えるかによって、キャリアはより良い方向に切り開かれることを提唱しているキャリア理論があります。

それは、スタンフォード大学 ジョン・D・クランボルツ教授が提唱する「プランドハップンスタンス」(計画的偶発性理論)です。これは、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」として、その偶然を計画的に設計し、自身のキャリアを良いものにしていこうという考え方です。

働くということにおいて、どんなに望んでいても、その希望にならないことも多くあります。そのような時、この理論のように捉えることによって、自身のキャリア形成がなされる可能性が大きくなるということなのです。

しかし、ただその偶発性を待つのではありません。そのために必要な心構えとして、クランボルツ教授は次の5つの行動指針を提唱しています。

・「好奇心」新しいこと、人、学びに興味を持つこと
・「持続性」失敗やミスに屈せず、結果が出るまでやり続けること
・「柔軟性」固定観念、こだわりに捉われず、行動すること
・「楽観性」楽しく取り組み、ポジティブに考えること
・「冒険心」リスクを取ってもやってみること

このような心構えがある人に、偶発性が訪れると言われていますが、さらに言うならば、この偶発性が起きたときにそのチャンスを掴まえることが大切です。

予想しない偶発的なこととは、ある時は「人」との出逢いによって、ある時は予想もしなかった「コト」によってもたられされることが多く、筆者の現在までのキャリア形成においても、多くの部分で当てはまっていると感じています。

だからこそ、このキャリア理論を知ることになった方には、転機や不測の事態が起きた時にも恐れることなく、この5つの行動指針で、自分らしくキャリア形成を築いていただきたいと思います。

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