厚生労働省の調査によると、2016年の日本人の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳と、過去最高を更新しました。男女ともに香港に次いで世界第2位の長寿国である日本。平均寿命は今後も延びると想定されています。平均寿命が延びることで働き方がどう変わっていくのか、改めて考えてみましょう。
どんどん延びる平均寿命
ベストセラーになった『Work Shift』の著者が書いた『Life Shift 100年時代の人生戦略』の中では「2007年に日本に生まれた子供の50%は107歳まで生きる」と、平均寿命についての興味深い記載があることで注目を集めています。この平均寿命は「10年ごとに平均2~3年のペースで延びている」というデータも紹介されています。日本に関してだけのデータではありませんが、おおむね日本に関してもあてはまる結果と言えるでしょう。この傾向が続けば、人生100年時代が現実味を帯びてくることがわかります。
同時に考える必要がある点として「年金支給開始年齢」が挙げられます。従来60歳から支給されてきた年金ですが、少子高齢化が進み現役世代の保険料負担が重くなりすぎることから段階的に引き上げられ、男性1961年4月2日以降生まれ・女性1966年4月2日以降生まれからは完全に65歳からの受給開始となることが決まっています。
ただ、この65歳という年齢も平均寿命の延びとますます進む少子高齢化を背景に、今後変わることが考えられます。現在は多くの会社で「60歳定年」が採用され、「勤務延長制度」もしくは「再雇用制度」という形で65歳まで雇用する形が一般的となっています。65歳まで働き、会社を退職してすぐ年金生活に入れればよいかもしれませんが、年金受給開始年齢が遅くなり、退職してから死を迎えるまでの期間が長くなれば、その間の生活を考える必要に迫られるでしょう。
年金受給開始年齢に関しては厚生労働省の中で「75歳まで年金を貰わない選択ができるようにする」という改正案が検討されています(現在は受給者自身の意思により、支給開始年齢を70歳まで遅らせることは可能)。また、今すぐにということではないですが、「原則65歳から支給」をさらに遅くする検討がなされている事実があります。仮に70歳まで引き上げられたと仮定すると、20歳前後で学校卒業後就職し、年金がもらえる70歳まで約50年間働き続けることを視野に入れたキャリアを考える必要が出てきます。
人生100年時代に必要な、多様な価値観にあった働き方
「終身雇用」が当たり前だった時代と違い、名の通った大手有名企業に勤めていても将来は決して安泰というわけではなくなっています。大企業に勤める社員の中には「1社にずっといられるとは限らない」「今の会社を離れることになった時のために心の準備として」などの理由で、スポットコンサルティングや業務委託のサービスに登録し副業として活動をする人も増えています。
「1社にずっといられるとは限らない」という言葉に象徴されるように、労働者本人の意思で会社を変わる(転職する)のではなく、会社自体がなくなってしまう可能性についても頭に入れる必要があるでしょう。東京商工リサーチの2016年調査では、倒産企業の平均寿命は24.1年となっており、一般的に企業の寿命よりも個人の寿命のほうが圧倒的に長いことになります。約50年働くことを考えるのであれば「1社で定年まで働く」という選択肢だけを考えるのではなく、時代に合った柔軟な働き方を模索していく必要があるといえます。
とはいえ、皆が皆「副業」や「起業」といった形をとる必要はありません。「パラレルキャリア」という言葉が聞かれるようになったことからもわかるように、必ずしもお金を稼ぐということだけで考えることはなく、ボランティアからスタートするということでもよいのです。
たとえば、「プロボノ」という言葉をご存知でしょうか。プロボノとは「社会人が仕事を通じて得たスキルや経験を活用して社会貢献する」という新しいボランティア手法です。近年企業の中には、NPO団体などに自社の人材を提供するなどの形で社員のプロボノ活動を後押しする動きがでてきています。プロボノ発祥地であるアメリカでは、経理やシステム開発技術者、各種士業・コンサルタントなどがあらかじめ設定した時間の範囲内でNPOのサポート活動を行っており、日本においても本業での経験を活かし活動できるというハードルの低さ・継続しやすさから注目され始めています。すぐには金銭的な利益につながらなくとも、こうした活動で得られる人的リソースを多く持つことは、これからの人生100年時代に不可欠になるでしょう。