働き方改革推進へ 求められる介護と仕事の両立と現状の課題
浅賀 桃子
2017/08/28 (月) - 08:00

世界の先進国の中で人口問題として取り上げられている少子高齢化。先進国の中でもとりわけ日本は少子高齢化が進行しており、人口減少社会へ突入しています。政府が推し進める働き方改革においても、今後介護と仕事の両立が重要な課題になることは間違いないでしょう。現状の整理と両立実現に向けての課題について考えます。

少子高齢化の現状

日本の総人口は2008年の1億2808万人をピークに減少に転じ、2017年1月1日現在では1億2686万人となっています。このままのペースで人口減少が続くと、約30年後の2048年頃には1億人を割り込むと予想されています。生産年齢人口と呼ばれる15~64歳の人口も少子高齢化に伴い減少しており、2017年中に60%を割り込む見込みです。

一方65歳以上の高齢人口は3,471万人と、高齢化率は27.4%に達しています。この高齢化率が7%以上で「高齢化社会」、14%以上で「高齢社会」、21%以上で「超高齢社会」といいますが、日本は世界に例を見ないスピードで高齢化が進行しています。1970年に高齢化社会に突入、1994年には高齢社会、2007年に超高齢社会になっている日本。高齢化社会から高齢社会に進むまでの時間はわずか24年。日本同様高齢化が問題になっているドイツでも42年かかっていますので、以下に日本のスピードが速いかが分かります。

このように、高齢者の急増と同時に少子化に伴い生産年齢人口(現役世代)が減少し、理論上1人の高齢者を約2.2人の現役世代で支えていることになります。2000年には約3.9人の現役世代で支えていましたので、この15~20年余りで半減したわけです。

さらに近い将来起こり得ることとして「2025年問題」があります。2025年には、第1次ベビーブームに生まれた団塊の世代700万人超が75歳以上の後期高齢者になります。後期高齢者になると要介護認定率も急増することがわかっています(65~74歳の前期高齢者の要介護認定率は4%程度ですが、後期高齢者は3割近くに跳ね上がる)。その頃には、約1.9人の現役世代で1人の高齢者を支えることになります。介護サービスの不足も予想され、働き盛りの若い世代が介護のために仕事を辞めなければならなくなったり、それに伴う金銭的、精神的な負担がかかったりといったことも懸念されています。

潜在的な介護離職の問題

介護離職の問題は、もはや特別なことではありません。三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立に関する労働者調査」によると、40代・50代の正社員が介護に直面した場合に仕事を続けられるかどうかについての質問に対し「続けられると思う」と回答した割合は36.9%に過ぎません。わからない(34.6%)・続けられないと思う(28.4%)の合計で6割を超えています。

先述の2025年には、労働力の要であり、管理職など職場の主要なポジションについていることが多いであろう団塊ジュニア世代約600万人超が50代を迎えます。介護企業の中枢を担う40代・50代の働き方への影響が大きくなる恐れがあります。

育児・介護休業法の改正

2017年1月改正育児・介護休業法が施行され、介護が必要な家族を抱える労働者が仕事との両立をはかれるように制度の見直しが行われました。

主なところでは、

・介護休業の分割取得が可能になる(上限3回)

・これまで1日単位での取得しか認めていなかった介護休暇(年間5日)の取得を半日単位でも取れるよう柔軟化

・介護のための所定外労働の免除規定が新設される

といった改正が行われました。

この改正には働き方改革推進の一環として、柔軟な働き方の制度を組み合わせたり、日常的な介護ニーズに対応しやすくしたりといった狙いがあります。また省令によって、介護休業の対象家族の範囲が拡大され、同居・扶養していない祖父母や兄弟姉妹・孫も追加されました。

介護と仕事の両立のために必要なこととは

2014年に労務行政研究所が行った介護に関するアンケートによると、介護を理由に退職した人に聞いたきっかけ上位5位は「時間的余裕がない」「上司の無理解」「職場全体の雰囲気」「同僚の無理解」「会社の介護制度が使いづらかった」となっています。また、介護に関して会社に相談できる仕組みが「特にない」と50.8%が回答しています。筆者の知人にも、認知症で入院を余儀なくされた父親の介護のことを会社の人に相談できず抱え込んでしまった方がいました。「介護休暇が使えることは知っていたが、職場として言い出しづらい雰囲気だった」とのことでした。

介護離職の増加を食い止めるためには両立支援制度自体の周知、先述の改正法に伴い可能になった柔軟な働き方等についての情報提供を積極的に行う必要があるでしょう。さらに制度が名ばかりにならず利用しやすい職場環境を整えるようコミュニケーションをとっていくことが求められます。その中で、法律だけにとらわれないその企業ならではの制度を作っていく必要性も生まれてくるように思います。

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