人材は資産。「攻めの経営」にチャレンジする地元徳島の企業を支援
徳島県プロフェッショナル人材戦略拠点 マネージャー 前田圭一郎 さん(上記写真〈徳島県プロフェッショナル人材戦略拠点メンバー〉:前列右側)
GLOCAL MISSION Times 編集部
2023/09/28 (木) - 16:00

国では、「地方創生」の一環として、東京をはじめ大都市に集積するプロフェッショナルな人材に、地方有力企業への転職を促し、その人材の活用により、地方の企業が成長することで雇用も増加(人口も増加)し、地域も活性化するとの理念の下、「プロフェッショナル人材事業」を構築しました。
これを受け、東京都を除く46道府県に「プロフェッショナル人材戦略拠点」が設置され、徳島県では平成27年12月1日に開設されました。

【徳島県プロフェッショナル人材戦略拠点について】
https://www.our-think.or.jp/292986/

徳島県プロフェッショナル人材戦略拠点のマネージャーを務める前田圭一郎氏に、事業の取り組みや徳島県内企業への想いなどについて、お話を伺いました。


前田様のご経歴についてお聞かせください。

1954年、徳島県生まれです。一橋大学経済学部卒業後、株式会社富士銀行(現みずほ銀行)に入行し、支店長を3ケ店務めました。
2007年に日本毛織株式会社に転職し、グループ会社3社の社長、経営企画室長、事業開発室長を経験して、2019年に退職しました。

銀行時代は外から、その後は当事者として中小企業の経営に関わってきました。
その間、新規事業の開拓やM&A、一方でリストラや事業譲渡なども経験しましたので、中小企業経営者のご苦労は多少なりとも理解できるのではないかと思っています。

その後、親の介護の関係で主に徳島で生活するようになり、現在は千葉との二拠点生活を送っています。
徳島県プロフェッショナル人材戦略拠点のマネージャーには2022年の5月に着任しました。


「徳島県プロフェッショナル人材戦略拠点」のマネージャーになったきっかけを教えてください。

たまたま縁があったとしか言いようがありません。
徳島に戻ったときに、高校の同級生の前任マネージャーから後任を探しているとのお話を伺いました。

私は高校卒業から徳島を離れていて、現在の徳島については知見がないので躊躇しましたが、中小企業経営と人材に関わる仕事であれば、これまでの経験が活かせるのではないか、そして少しでも故郷のお役に立てるのであればと思い、手をあげた次第です。

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<県庁前ヨットハーバー「ケンチョピア」と徳島のシンボル「眉山」>


実際に徳島の経営者とお話しをするなかで、徳島の経済や県内企業を取り巻く環境をどのように捉えていますか?

徳島には著名な大企業に加えて、製造業ではガラス加工機メーカーの坂東機工株式会社や超小型のサーマルプロテクターを開発した大塚テクノ株式会社などのニッチトップ企業をはじめ、特徴的で高い技術力を備えた企業が数多く存在していて、徳島経済のポテンシャルは決して低くないと思っています。

環境面では、生産労働人口の減少が問題になっています。徳島の生産年齢人口は、2020年は40万人でしたが、2030年には35万人、2040年には29万人になると推計されています。これに伴って、経済規模の縮小、労働力不足など、社会的・経済的な問題が深刻化するのが避けられない状況です。

地元企業にとっては、そうした環境変化への適応がもっとも重要な経営課題の一つであり、限られたリソースでより高い付加価値を生み出せるよう変革が求められています。


「徳島県プロフェッショナル人材戦略拠点」としては、何を意識して外部人材活用の取り組みや県内企業の支援をされているのでしょうか。

近江商人の経営哲学である「三方よし(買い手よし・売り手よし・世間よし)」が広く知られていますね。当拠点では、「人材・企業・地域(徳島)」の三方よしの実現を目指しています。
人材活用への支援は、地元企業を成長させ、地域を活性化するための手段のひとつです。あくまでも本事業の目的は地域の活性化だと考えています。

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<鳴門の渦潮>


手ごたえは感じていますか?

相談件数と成約件数をKPIとして設定していますが、ともに2022年度は設立来のピークを更新しました。企業の人材ニーズの強さを実感しています。

しかしながら、一方で当拠点を利用されていない企業もたくさんあります。
そこで、2022年度からは新規相談企業数・相談件数と新規成約企業数を増やすことにも注力しています。

また当拠点では、プロ人材に該当しない非プロ人材(一般人材)の採用についても積極的にサポートしています。企業の継続的な成長のためには、将来を担う人材が必要との企業ニーズにお応えするためです。一般人材は将来のプロ人材との位置づけです。


新規の相談件数を増やすためにどのような取り組みをされていますか?

効果的なのは金融機関との連携です。徳島では、2021年12月に阿波銀行、徳島大正銀行、四国銀行、徳島信用金庫、阿南信用金庫と連携を開始しました。
その効果もあって、新規相談企業数は順調に増加していますね。

企業の実態や課題を理解している金融機関や中小企業の支援機関からの紹介であれば、実権者との面談もスムーズに進むので効率的ですし、今後も連携を強化していきたいと考えています。


昨今、全国で広がってきた、「副業・兼業人材活用」については、どのような可能性を見出していますか。

優秀な人材を確保するためには、「採用・育成・定着」の3つの視点が必要になりますが、現在の人材市場では、地方の中小企業ほど、それらが困難になってきています。

「副業・兼業人材活用」はそれらの問題解決につながる新たな取り組みだと思います。
正規雇用ではなく、リモートワークで必要な人材を必要な期間だけ活用できるのは企業にとって大きなメリットです。社内の活性化や人材育成にもつながるのではないでしょうか。企業の理解が深まれば、さらに広がりが期待できます。


企業に副業・兼業人材について説明したときのリアクションはいかがですか?

2022年2月にアンケートを実施したところ、副業・兼業人材に「関心がある」との回答は約2割で認知度は充分とは言えません。副業への偏見や先入観がある方もいますが、多くは人材の具体的な人物像や活用方法がイメージできないことから湧く不安や懸念があるからではないでしょうか。

今後、成功事例の紹介や関連情報の発信を通じて気軽に相談できる環境を整えたいと思います。


今後、どのように副業・兼業人材が広がっていくと思いますか?

企業が抱える経営課題は多種多様です。経営者はその課題の解決にあたって、リソースと相談しながら優先順位をつけて取り組まざるを得ません。

限られたリソースを有効に活用するためにも、副業・兼業人材を含め企業の人材ニーズに沿った提案をしていきたいと思っています。多くの課題に副業・兼業人材の活用が可能ですが、とくに注目しているのがDXへの取り組みです。

生産年齢人口の減少が避けられない今、企業はスリムで筋肉質の強い体質に変貌し、生産性を高め付加価値を増やしていく必要があります。
その武器となるのがデジタルです。業務改善、生産性向上、新規事業の開拓などにデジタルの活用が欠かせません。ですので、デジタルに強い人材が不足している中小企業にこそ副業・兼業人材を活用していただきたいですね。

人材紹介会社によると、副業案件で相談が多いのはIT関連で、DX推進とシステム開発の人材ニーズが高いようです。今後社内のDX推進プロジェクトに副業人材が参画するような形が増えていくのではないでしょうか。

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<阿波おどり 総踊り>


最後に、徳島県内企業の経営者や担当者の方々にお伝えしたいこと、メッセージなどをお聞かせください。

経営者や人事担当者の方にお伝えしたいことは、あらためて「企業は人なり」「人材は資産」だということ。
社員だけでなく、関係する人たちも大切にしてほしい。
経営者一人でできることは限られています。明確な経営ビジョンを持って、全社で共有し、社員が生き生きと働き、持つ能力を存分に発揮できるような職場環境を提供してほしい。今は、働き手が企業を選ぶ時代です。

また採用にあたっては、その人の能力や価値観はもちろん、企業風土、経営理念に共感しているのかなどを慎重に検討していただきたいですね。
ミスマッチによる短期退職は企業だけでなく、求職者にとっても大きなマイナスです。求職者も「人」です。

最後に、私の好きな言葉「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」
(エリック・バーン)

自ら変わろうとすれば、未来は変えられます。適者生存!環境の変化に適応していきましょう。これからも私たちはそうした「攻めの経営」にチャレンジする企業を支援してまいります。



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