2015年の国勢調査によれば、人口減少する地方都市が増えるなか、福岡市は2位の都市を大きく引き離し、人口の増加数と増加率で政令市中1位になりました。若者の人口比率が高く、また起業する若者の割合が高いのも特徴です。人口流入のためのヒントはあるのでしょうか?データをもとに福岡市の文化やその魅力に迫ります。
交通の利便性が良い 国際色豊かなアジアのゲートウェイ
アジアや九州の玄関口といわれる福岡県。その県庁所在地である福岡市の人口は2017年2月1日現在、1,556,775人、政令市中5位です。
福岡市は、全国規模で展開する企業の支社や支店が集中する支店経済都市として発展してきました。 福岡国際空港は、都心部から近くアクセスが良いのが特徴です。九州最大の繁華街である天神から空港までは、福岡市地下鉄で11分、JR博多駅からはわずか5分。国内便は札幌から沖縄まで飛んでいるので、主要都市への日帰り出張も可能です。
国際線は、ソウル(仁川)、釜山、済州、北京、大連、上海、広州、台北、高尾、香港、マカオ、マニラ、バンコク、ハノイ、ホーチミン、シンガポールなどアジアの主要都市を中心に、グアムやホノルルへの便も就航しています。
国土交通省が2017年1月に公表した2016年「クルーズ船寄港回数」では、年間328回の博多港(福岡市博多区)が1位となりました。
空路、海路ともに利便性が良いため、連日多くのビジネスパーソンや観光客が訪れる国際色豊かな街となっています。
また、不動産物件の価格や賃料が安いのも福岡市の魅力です。
NTTレゾナント運営の不動産総合サイト「goo 住宅・不動産」によれば、賃貸マンションの家賃相場は、天神から地下鉄で約10分の福岡市早良区藤崎では3LDK~4DKで10万円。新宿からJRで約10分の東京都杉並区荻窪のマンションでは3LDK~4DKで20万円なので、東京に比べて約半分の賃料で借りることができます。
福岡市の都心部に近くても賃料も安く、福岡市地下鉄や西鉄電車、西鉄バス、JRなど交通アクセスも良いので、通勤時間も当然短くなります。2015年の世界の都市総合力ランキング(GPCI)によれば、「通勤・通学の利便性」は、世界40都市中2位でした。
※1位シンガポール、2位福岡、3位ニューヨーク、4位ロンドン、5位東京
安くておいしい食文化が良い レストラン数は世界の都市中4位
福岡市は食文化が発達しているため飲食店も数多くあります。福岡市の2015年の調査によれば、世界の都市人口1,000人あたりのレストラン数は、東京、パリ、ミラノに次いで福岡市は4位でした。
博多港の取扱金額は478.91億円で3年連続日本一になっています(2015年)。これが新鮮な魚が安く食べられる所以です。
福岡といえば、博多ラーメン、うどん、もつ鍋、水炊き、餃子、明太子など福岡名物の食べ物が数多くありますが、実は焼き鳥も隠れた人気です。焼き鳥の店舗数は21大都市中1位。福岡の焼き鳥店には独特の文化があります。関東では焼き鳥といえば鶏肉ですが、福岡では豚バラ肉がメインです。焼き鳥店に入ると太鼓でドンドンと威勢よく迎え入れられ、着席するとキャベツがたっぷりのった皿が運ばれます。酢醤油のタレをかければおつまみに。
”安くてうまい” 店が多いのも福岡の特長です。
海や山が近くレジャーに良い 余暇を楽しめる場所が多い
九州のビジネスの中心である福岡市ですが、自然に囲まれているので遊ぶところが多く、さまざまな余暇の過ごし方ができます。福岡市には、中央区、博多区、東区、南区、西区、城南区、早良区の7つの区がありますが、今回は4つの区のお薦めスポットを紹介します。
・天神/大濠公園(中央区)
福岡市の中心、天神は、大手企業の支社や支店も多く、デパートやショッピング施設、ホテル、屋台などが並ぶ、福岡の経済の中心です。
天神から地下鉄で3分も行けば、福岡市民の憩いの場、大濠公園があります。黒田官兵衛の嫡男、黒田長政が福岡城(舞鶴城)を築城する際、外濠(大堀)として作ったといわれています。1周約2km、ジョギングする姿も多く見られます。
・博多駅/キャナルシティ博多(博多区)
九州の玄関口であるJR博多駅は、東海道・山陽新幹線や九州新幹線の発着駅です。
JR博多駅と西鉄天神駅の中間地点に位置する大型ショッピングモール、キャナルシティ博多には映画館や劇場が併設され、グランドハイアットホテルが隣接されています。博多駅と天神駅どちらからも徒歩10分ほど。最寄りは地下鉄、中洲川端駅です。
・志賀島(東区)
志賀島(しかのしま)は、古代から大陸との海上交易の起点として歴史上重要な役割を果たしていました。教科書にも掲載されている金印(漢委奴国王印)が発見された場所としても有名です。
志賀島へ陸続きで渡ることができる海の中道は、両サイドが海の景色になるのでドライブデートのコースとしても有名です。水族館「マリンワールド海の中道」もあります。
・シーサイドももち海浜公園(早良区)
福岡ソフトバンクホークスの本拠地「福岡 ヤフオク!ドーム」や福岡タワー、海に浮かぶ結婚式場、テレビ局などが建っています。高層マンションが並び住宅街としても人気が高いエリアで、小学校から大学までの教育機関、総合病院、総合図書館が揃っています。
天神から車で都市高速道路を使い15分ほどで百道浜(ももちはま)のビーチへたどり着きます。
住み心地が良い 福岡市が1位を獲得した項目をデータでみる
福岡市が1位を獲得している項目をみれば、人口増加の理由がわかるかもしれません。
福岡市が公表している「データでわかるイイトコ福岡『Fukuoka Facts』」によれば、以下の項目で福岡市は1位を獲得しています。
福岡市では人口増加のための施策も実施しています。
そのなかの一つが「福岡クリエイティブキャンプ」。福岡市内のIT・クリエイティブ系企業への UターンやIターン転職や移住を支援するもので、県外からの移住を伴って市内クリエイティブ企業に就職した場合、応援金として40万円が交付されます。
ここまでデータをもとに福岡市の魅力を分析してきましたが、それだけではわからないのが福岡の市民性。福岡市外から来た人はどのような印象を持つのでしょうか。
古くからアジアの玄関口であり、支店経済都市でもあるためアジアや日本全国から転勤者が福岡市に来るためか、開放的で、「来るものは拒まず」の精神で、初対面の人にも気さくに話しかける人が多いようです。新しいものや流行に敏感で派手好き。ノリがよく、祭り好き。九州のなかで一番といった意識が強くプライドが高いところも。男性は他人のために一肌脱ぎ、女性はしっかり者。このような印象を持つ人が少なくありません。
福岡市では、「よそ者」として扱われることが少なく、食べ物は安くておいしい、そして家賃が安く住み心地が良い、そのため移住者が増える。このような福岡の文化から好循環が生まれているのかもしれません。
(2017年3月22日)