連載⑦ 子どもたちの成長を全力で応援する、魅力あふれる武雄市こども図書館
GLOCAL MISSION Times 編集部
2025/01/09 (木) - 17:00

2017年10月にオープンし、7周年を迎えた武雄市こども図書館。絵本を中心に約2万冊の本を所蔵し、毎日おはなし会を開催しています。また、体験型ワークショップの数は日本一を誇り、365日年中無休で三世代が楽しみに通う、唯一無二の場所です。今回は、武雄市こども図書館の魅力について、図書館司書の緒方千恵さんにお話をうかがいました。



■武雄市こども図書館に勤めるまでの背景についてお聞かせください。

生まれも育ちも、生粋の武雄っ子です。子どもの頃、近所に旧武雄市図書館があり、そこで本を読むことが生活の一部になっていました。高校時代、図書館職員の方に「図書館で働くにはどうしたら良いか?」と聞いたところ、どうしたらなれるか教えていただき、それがその後の道標となりました。大学生のときに現在の武雄市図書館がオープンし、そこで働きたい一心で、図書館司書の資格を取得。卒業後、武雄市図書館に就職しました。

武雄市こども図書館ができてから、素晴らしい絵本作家さんとの出会いがあり、絵本の魅力をもっと伝えたいと思うようになりました。そこで、新たに目指したのが「絵本専門士」です。読み聞かせボランティアさんと絵本の知識を深め、楽しんで絵本を紹介する技術を一緒に考えることができたら良いなと思い、3年前にこの資格を取得しました。子どもたちとその周りの大人の方々に絵本の魅力を伝えられたと思っています。

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■武雄市こども図書館はどのような場所ですか。

武雄市こども図書館は開館7周年を迎えました。年間約100万人、平日で約1,800人~2,000人、休日は約3,000人以上が来館します。「遊びから学びへ」をコンセプトに、全力で子どもたちの成長を応援する図書館です。

まずは図書館に来ていただいて、武雄の豊かな自然の中にある図書館を雰囲気ごと楽しんでほしいと思っています。来ていただいたら、絶対に好きになってもらえる自信があります。
子どもだけでは図書館に通えないので、子どもたちを連れて来るパパやママたちにとってやさしい図書館にしたくて、設計から関わらせていただきました。
図書館司書目線で棚の高さを調整し、テーマごとに本を並べたり、子どもたちがワクワクするような仕掛けを作ったりしています。
授乳室には調乳用温水器を用意していますし、使用済みのオムツも置いて帰っても大丈夫です。

図書館の特徴のひとつが天井を低くした「ひみつのへや」。おばけ、妖怪、魔女、魔法、探偵、恐竜、忍者など、子どもが大好きなテーマを集めた秘密基地のイメージです。好きな本を持ち込んで、のんびり寝転がりながら読めるんですよ。家のようにくつろげるような空間です。

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2階にはカフェがあり、フードコートとして利用していただけます。飲食を購入する必要はなく、授乳や離乳食タイムにも活用できます。
はしゃいでも大丈夫で、静かにしなければいけないという図書館ではないので、1日いられる滞在型図書館だと思います。

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■武雄市こども図書館のサービスについて教えてください。

365日、朝9時~夜9時まで開館しています。夕方の5時で閉館しても良いのではないかという声もありましたが、絵本は子どもたちだけのものではなく、保育園の先生たちが仕事終わりに来られることもありますし、おやすみ前の絵本を選びに親子で来館されることもあるので、夜の9時まで開館しています。
図書は15冊までで2週間、雑誌2冊とCD・DVD2点は1週間、合計19点まで貸出できます。

毎日おはなし会を開催していて、平日は赤ちゃんのおはなし会、土日はどの年齢でも楽しめるおはなし会です。ホンモノに出会える機会として、有名な絵本作家さんたちにもお越しいただいています。

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武雄市図書館のワークショップ数は日本一で、今もなお増え続けています。同じことの繰り返しはつまらないので、常に新しいワークショップを更新するようにしています。

普通の図書館ではできない体験をさせてあげたいという想いがあり、「本だけではない価値づくり」を大切にし、いろいろなイベントを開催しています。

例えば、佐賀県には動物園がないので、長崎バイオパークから動物たちを呼び、芝生広場を動物でいっぱいにしたり、サガン鳥栖とコラボをして芝生でサッカーをしたり、廃棄予定だったユニフォームをいただいてエコバッグをつくったり。イベントがあるときは必ず絵本のフェアも組み、イベントの前後でワクワクさせたいという狙いがあります。

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また、子どもたちにいろいろな体験をしてもらいたくて、小学生向けのお仕事体験「キッズラボ-おしごと研究室」を始めました。これまで、アナウンサーやサッカー選手、アーティスト、パティシエの体験会を開催しています。無料ですがクオリティはしっかり担保しているんです。武雄市には魅力的な仕事がたくさんあることを伝え、子どもたちが進学などで武雄を離れても、将来的に武雄に戻って働く選択肢を持ってほしいと願っています。

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2か月に1回、2Fの九州パンケーキカフェさんと共同で「キッズパンケーキ教室」も開催しています。参加申込日に一瞬で申し込み枠が埋まるほど大人気のイベントです。

■利用者さんたちは、武雄市子ども図書館をどのように利用されていますか。

3世代での来館が多いのが特徴です。例えば、武雄市のおじいちゃん、おばあちゃんの家にお孫さんが遊び来て、「こんな図書館があるよ!」とお孫さんを連れて図書館に来る。図書館はいつでも楽しめる自慢ポイントであり、「いつでも武雄に帰っておいで」という、子どもたちへのアピールにもつながっているのではないかなと思います。

昨年から 始めた新しいイベントとして、その月にお誕生日のお子さんに向けたハッピーバースデーおはなし会があります。特に未就園児の場合、みんなに「おめでとう」と祝ってもらえる機会が少ないですよね。ここでは特別な帽子をかぶり、手作りのワッペンをつけてお祝いします。みんなにお祝いしてもらえるので3世代で来られる方も多く、最後に家族で記念写真撮影もできます。みんなで幸せを共有し、成長を見守れる図書館でありたいと思っています。

武雄市こども図書館ならではの特徴として、パパが多いということも挙げられます。およそ8割がパパが一緒に来ますね。正直、ここまでパパが来てくれるとは想像していませんでしたが、絵本や紙芝居を子どもに読んであげる光景がたくさんあり、本当にずっと一緒にいるんですよ。

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■図書館スタッフや利用者同士のコミュニケーションはいかがですか?

読み聞かせをしてくれるボランティアさんが、ママサポーターとして週2回来てくださり、おはなし会をしながら、その前後で同じ月齢のお子さんを持つママ同士をつなげる役割をしています。ですから、ママ友ができやすい環境だと思います。

ママサポーターさんは、そのほか、図書館周りの環境整備やトイレの汚れのチェック、お子さんの見守りのほか、先輩のママとしてママたちのお悩み相談にものってくださったりします。絵本を介して、ママたちも話しかけやすいようで、「いい病院を知らない?」など、地域の情報を聞いていたりしています。


■毎日通える場所があるのは心強いですね。利用者さんから、武雄市の図書館はここがいい!といったお話があれば教えてください。

イベントに参加してくださったママたちが、「いつも、こんなにイベントをやっているの?」「調べなくても土日は何かやっているし、すごく楽しいよ」とお話しされているのを聞いて嬉しかったです!

それから、こども図書館ができて以来、隣の市からずっと来てくださっている親子がいるのですが、お子さんが小学校に入るタイミングでなんと武雄市に家を建てて引っ越してこられたと聞き驚きました。引っ越すならこども図書館の近くがいいとご主人と考えてくださっていたそうです。この図書館が移住の決め手になったことが感動ですね。

ほかにも、小学校の公共施設見学で図書館に来た子どもたちが、「この図書館のことなら何でも知っているよ」と自慢している様子を見て、なんとも微笑ましかったですね。大人も子どももこの図書館のことを誇りに思っているのだと思います。

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■最後に、新しく武雄市に移住してくる方々に対して、図書館を通じて伝えたいメッセージ を教えてください。

親御さんたちからは、「こども図書館のおかげで本好きな子どもに育った」「字を覚えるのが早かった」という声をいただきます。いつでも無料で楽しめる図書館があるのは魅力的な環境だと思います。

武雄市は水害のイメージがあるかと思いますが、図書館の周りは浸水しませんし、熊本の震度6弱の地震のときも、本は1冊も落ちませんでした。きっと、自然の大きな力に守れている場所で、子育てしやすい環境だと思います。いつ来ても楽しめる図書館のある武雄市に移住していただけたら嬉しいです。

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