連載⑩移住してからのコミュニティ。地域の人が仲間になる!そんな武雄の暮らし。武雄市地域おこし協力隊
山崎裕次郎さん
GLOCAL MISSION Times 編集部
2025/02/14 (金) - 10:00

2023年4月に武雄市に地域おこし協力隊制度で移住した山崎裕次郎さん。武雄の魅力を動画配信する動画クリエイターとして活躍しながら、2024年12月には、誰もが交流できるゲストハウス&カフェ「yol」をオープンしました。初めての地方移住で、どのように地域に溶け込み、起業に至ったのかについて、詳しくお話しいただきました。



■まずは、山崎さんの自己紹介をお願いいたします。

東京都出身です。もともと、大学の研究員としてアフリカの露店商人の研究をしていました。しかし、コロナ禍でアフリカに行きにくくなり、これまでの経験を活かして、日本の地方で何かできないかと考え、妻の出身地である佐賀県に移住することにしました。30代は大学のポストがなかなか空かないので、その間、自由に生活してみようと思ったのも理由のひとつです。

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■地域おこし協力隊になろうと思ったきっかけは何でしたか?

アフリカの露店商人研究で経営戦略を調べていた際、現地の経営学に足を踏み入れた経験があり、そのやり方を日本へ逆輸入できないかと考えていました。アフリカの研究から離れ、地方で何かを始めるにあたり、資格を取得したほうがよいと考えていたところ、日本で経営に詳しい方は中小企業診断士の資格を取得されていることを知り、中小企業診断士を目指すことにしました。

そんな中、専門誌で地域おこし協力隊になった方の成功事例を読み、そこで初めて「地域おこし協力隊」の存在を知りました。調べたところ、佐賀県では武雄市で募集していたので、応募したという流れです。

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■移住して最初に関わった地域の人とのエピソードを教えてください。

地域おこし協力隊の第二次選考のとき、武雄市で行政の方と市内を回ったり、市と連携している住民の方を訪問したりしました。地域の人とお会いするとき、私は自己紹介に加えて「朝、何時に起きますか?」「お昼ご飯はいつもどこで食べていますか?」など、答えやすく、少しでもその人の生活が分かる質問をするようにしていました。そうすることで、相手を知るきっかけとなるからです。藪から棒に質問するのではなく、私が自己紹介をするときに、相手に聞きたいフックポイントを作ります。
例えば、朝起きる時間を聞きたかったら、自己紹介で「早起きが得意です」と伝え、朝の話しているんだなと推測しやすい状況をつくります。「ラーメンの食べ歩きが好きです」と自己紹介をすれば、「普段、昼ご飯はどこで食べていますか?」という質問につなげやすいですよね。

私が研究していた人類学は、現地に密着しながら、相手を質問攻めにせずに、その人の生活を知る学問です。実践的に質問力は鍛えられており、「相手が答えやすい質問をする」ことにつながっていると思います。



■地域で知り合いを作る上で、最初にどのような行動を取られましたか?

歩くことが大切だと思っていて、自分の生活圏や気になる場所など、Googleマップ上にある道は全て歩きました。すると、例えば、コンビニエンスストアまでにかかる時間や繁華街の様子、マップと実際の違いなど、地域のことが具体的に分かるし、人と話すときに「地域に関心がある人」と見てもらえます。朝、昼、夜で同じ道を歩いていても、そこで出会う人が違うんですよ。高校生のたまり場なども知っているので、それを地域の人に話すと驚かれます(笑)。
歩いて新しいお店を見つければ、「このお店に行ったことがありますか?」「美味しいですか?」と、雑談から地域の人たちとの会話を発展させる引き出しを増やしたいと思っています。人と近づきやすくなるので、地域おこし協力隊の仕事にも役立っていますね。



■ところで、なぜゲストハウスを開業しようと考えたのでしょうか?

武雄に友達を呼びたいと思っても、武雄市が温泉地ということもあり、手ごろな宿泊施設がなかったからです。宿泊料が高いところが多く、20代、30 代の人が一人で遊びに来るにはハードルが高い。そこで、敷居を下げたゲストハウスをつくりたいと思いました。アフリカの研究をしていたこともあり、海外の方と地域のかかわりの入口は宿泊だと思っているので、国際交流にも役立つはずです。

また、武雄市で暮らしていくうちに、ゲストハウスだったら時間の融通を利かせやすいと思ったのも理由のひとつです。起業を考えて、商圏や観光客数の統計などを調査するなかで、柱が1本なのは心もとないことに気づきました。地方で事業をする場合、仕事の柱は 2、3本立てると、生活が安定してリスクヘッジになりますし、快適に暮らせるコツだと思います。

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■地域の人々と仲良くなる中で、驚いたり感動したりしたことはありますか?

武雄市に限ったことではないかもしれませんが、ゲストハウスを始めるとき、分からないことを親身に教えてくださる方が多かったですね。地域おこし協力隊の活動が3年間という期限があることもあって、3年後にどうするかといった相談をした際、空き家や空き店舗の情報を共有してくださったり、改修工事をしてくれる工務店を紹介してくださったりしました。無事にゲストハウス事業を開業できたのは、温かい地域の方々のおかげです。

武雄市には大きな企業があまりなく、個人事業主が多い印象があります。それでいながら、人口5万人近くをキープできている特殊なまちですね。経営者が多く、商工会議所もその現状を知っているので、小規模事業向けのサービスが充実していると思います。
商工会議所の起業相談窓口の方はとても温かく、補助金の申請や自分が始めたいサービスと似た仕事をしている方に連絡してつないでくれるなど、迅速に動いてくださいます。市役所も同様で、親身になって相談にのっていただけます。こうした行政の動きの良さや人の温かさは、武雄市の特性だと思います。



■地域の行事やイベントに参加された経験はありますか?その際の雰囲気や印象を教えてください。

荒踊(あらおどり)という伝統舞踊のような行事に参加したことがあります。武雄は地域コミュニティがマイルドで、行事やイベントに絶対に参加しなくてはならないという雰囲気はありません。地域の行事であっても、他の地域の人が参加することができますし、強制されることは特にありません。何も手伝っていないから申し訳なくて参加できないと考える必要はありません。人が集まってワイワイしたい人はしてもいいし、ワイワイしたくない人はしなくてもいい。かといって、冷たいわけではなく、話しかければきちんと答えてくださる、ほどよい地域のつながりを感じますね。

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■移住当初に不安だったことや、実際に住んでその不安がどう変わったか教えてください。

地域のつながりがどの程度強いかは気になっていました。移住に成功した方のインタビュー記事を読んで、地域の人から野菜をもらえるような関係を作らないといけないのではないかとプレッシャーになっていたんです(笑)。実際には、武雄市の人は良い距離感があり、心配することはありませんでした。

地域にどれくらい溶け込むかは個人の尺度だと思います。人の成功体験が絶対ではありません。私も歩くことは大切で、地域を歩きまわったと話しましたが、それはあくまで私のアプローチであって、みなさんに散歩をしてくださいと言っているわけではありません。

「地域に溶け込まなきゃいけない」「頑張らないといけない」と自分を追い込まず、まずは自分がどういう暮らしをしたいのか、自分の人生をどれだけ充実させるかを中心に考えたほうがよいし、人それぞれのやり方があると思います。



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