まちと仕事を面白くするオープン・イノベーション ?イノベーションはなぜ、身近で面白いのか?/地域活性機構 リレーコラム
GLOCAL MISSION Times 編集部
2018/02/02 (金) - 08:00

以前にもまして、「イノベーション」という言葉が、メディアを飛び交うようになりました。今どきの言葉のように聞こえますが、人類進化の歴史を営々と積み重ねてきた本質的な活動ともいえるでしょう。わかったようでわからない、でも私たちを豊かにしてくれるイノベーションの箱をオープンしてみましょう。

明治維新はファッションも御一新

「オープン」(開く)という言葉から、明治時代の文明開化を連想しています。今年2018年は1868年の明治元年から150年、つまり“明治150年”を迎えます。当時の日本社会は明治を迎えて政治も社会も文化も大変革となり、「文明開化」ともいわれました。
明治初期、市井にまで西洋文明が入ってきて、おサムライさんはちょんまげを切り、ハカマをズボンに履き替えて、見た目にも社会が大きく変化しました。すき焼きの元祖、牛鍋を堂々と食べ始めたのもこの頃といわれます。この大変化を「文明開化」、「御一新(ごいっしん)」と呼んだわけです。
150年前のご先祖さまたちも、変化に直面して、それまでなかったような(前例のない)いろいろなことを新しくしました。

コトやモノをドッキングすると、新しいモノゴトが生まれる

イノベーションを説明するとき、私はよく、「リノベーション」の親戚ですといっています。リノベーションは接頭語がRE-ですから、再びの意味が強くて、建物の修復や元通りにすること。再び新しくする意味で、ビジネスを仕立て直すときにも使えるそうです。「イノベーション」の方は、接頭語がIN-ですから、内側に向いて深く掘り下げ、新しいものを生み出すことになります。掘り下げた成果は私たちを便利に幸せにしてくれるというわけです。
ではその「イノベーション」をどう生み出していくのか。さまざまな説明がありますが、20世紀の前半まで活躍された経済学者シュンペーターさんの新結合、つまり新しいコトやモノをドッキングして、役に立つ物が生まれる現象をいうのが一般的です。
別の言い方をすると「一見、関係なさそうな事柄」を結びつけることなのです。だからPPAP(Pen-Pineapple-Apple-Pen)はイノベーションです。アップル・ペンは持っていませんが、消しゴムの付いた鉛筆は、イノベーションの成果として、ありがたく使っています。

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イノベーションは「新しい収益の柱を建てること」

現代のように、物がいきわたった世の中では、欲しいものやサービスは、イノベーションが作ります。
身近な例を挙げます。先日いつもの通り、多種多様なご馳走の香り立つデパ地下に行きましたが、何にも欲しくないのです。私はその時、食事の後でお腹いっぱいでした。ところが、品のいい風呂敷付きのついた和菓子を発見。ウケそうな手土産として、すぐ購入しました。食欲を満たす以外の価値の提供には反応したわけです。
ビジネス展開において大切な「創業守成」。同じことをしっかりこなしていくこと「守成」は、事業継続のためにとても大切な仕事ですが、時代が激しく変わっていく中では、どんどん新しい商品やサービスを創っていくこと「創業」が生き残っていくために重要になっています。
新しいこと、これまでなかったものを作り出すのは大変です。この難しいチャレンジに挑む人を「イノベーター」といったり、起業家といったりします。
私は「イノベーション」を分かりやすく理解するため、あえて「新しい収益の柱を建てること」といっています。収益はお金だけでなく、人を喜ばせることすべての価値といってもいいでしょう。事業の存続が以前にもまして大きなテーマになっている今、新しい価値や収益を上げる活動、イノベーションは大きな注目を浴びているわけです。

人類の英知と努力でぞくぞく本物のイノベーション

イノベーションは、欲しかったものやサービスと出会って、人の行動や社会まで変えてしまう現象なので、そう簡単に起きるものではないけれど、起こそうと思わなければ起きないものでもあります。
前述のとおり、私たちは、この難しいイノベーションにチャレンジする人を、尊敬を込めて「イノベーター」といったり、起業家・アントレプレナーと呼んだりします。
人を喜ばせることができたらイノベーションの一歩、社会の人々を喜ばせることができたら本物のイノベーションと呼んでいます。
イノベーションは、単なる革新的なモノだけではなく、仕組みや形のないモノもあります。モノのイノベーションの代表格としては、携帯電話、スマートフォン、パソコン、自動車・電車、全自動洗濯乾燥機などが挙げられるでしょう。
  仕組み、プロセスの代表格としては、コンビニエンスストアやヤマト運輸、佐川急便などの宅急便があります。変革の声が高まっている大学や先生の教え方なども、イノベーションが起きそうな分野かもしれません。これらは、世の中の常識やルール、暮らしやモノの買い方など生活文化まで変えているので、“これまで”を壊しているという意味で、破壊的イノベーションといったりします。
もう少し具体的に見ていきましょう。

(例1) POSレジ スーパーのレジ
バーコードをかざすと商品と価格が入力できますが、さらに重さを量る仕組みと組み合わせることで、とうとうセルフレジができました。私は列が短いのでセルフレジが好きですが、この仕組みの出現で、買い物の精算方法が選べるようになり、私もショッピングセンターでの行動パターンが変わりました。

(例2) 宅急便
宅急便ができる前は、普通の人が使える運送方法としては郵便局の小包か、せいぜい駅の鉄道便しかなくて、重たい段ボール箱を家に取りに来てくれることはありませんでした。その利便性たるや魔法に近いと思います。『魔女の宅急便』という映画がありましたが、お母さんから届く宅急便は今も愛情を運んでくれるサービスのイノベーションです。
いまこの便利な仕組みの存続が議論になっていますが、かけがえのない仕組みを守るために、私たちも時代に合わせて今一歩、変わらなければいけないかもしれません。

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暮らしの中で活躍するスイスの時計たち

(例3) 腕時計
腕時計の世界も大イノベーションの好例です。1970年代日本のクオーツ式腕時計が世界を席巻して、スイスやアメリカの機械式の時計産業は壊滅状態になりました。その後、多岐にわたる改善改良の後、そもそも人が時計を持つ価値や意味を考えはじめます。
時計が時を知るだけのものであればひとつあればいいし、正確なほどいいということになります。それを極めた製品が電波時計ではないでしょうか。でも世界の銘品といわれる、何百万円も何千万円もする時計は、ほぼみな機械式です。以前スイスのジュラという街の高級時計メーカーに行った時も、アラブの王様の時計を作っていました。正確さだけなら、セイコーやシチズンに頼んで欲しいところです。しかし、スイスの時計は、正確さを超えて、ステイタスを表すものに価値や文化を変えています。
一方、「スウォッチ」という、おしゃれでカラフルな時計があります。電池式ですから正確さはクオーツと同じですが、一個あればいいというのでなくて、洋服にあわせて何個も持って着替えるおしゃれが楽しめます。これも行動を変えるイノベーションです。イノベーションは、単なる技術の革新ではなくて、暮らし方や文化さえも豊かに変えるものです。
「イノベーションは、〇(なにか)× □(なにか)で、フタひねり。」と申し上げています。ひねり方は、技術・ノウハウであったり、面白味だったり、よその国の常識だったり。これを仲間と一緒にやったら速いし、うまくいきます。
いま、私たちがほぼ共通に持っている「当たり前」を飛び越えて、新しい「当たり前」を作る。そしてまた飛び越える。だから開発会議で全員が賛成したら、考え直した方がよいとまでいわれるほどです。だから根回しの予定調和はイノベーションと対角にあります。感謝の反対語が「当たり前」だそうですから、イノベーションはひとさまに感謝してもらうタネを作る活動かもしれません。

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オープンなイノベーションで幸福になる

新しい「当たり前」を、邪魔せずに受け入れるまちや市民の雰囲気が大切なのだと思います。
イノベーションを起こさなければ!というのではなくて、日々工夫して生きていること自体がイノベーションです。イノベーションは楽しく、人と自分、家族や仲間を豊かに、幸せにすることだと思います。
時代の変化が激しくて、ついつい縮こまりそうになりますが、ピンチはチャンス!ピンチにはチェンジすることでチャンスとなります。
イノベーションはチェンジの一種。オープンとは仲間と知恵や力を貸したり借りたりできること。まちと仕事を面白くするオープン・イノベーション。地域の仲間、地場産業の同業者、クリエイティブな市民とともにオープンに考えて行きたいと思います。

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