2018年4月から大きく変わった契約社員「無期転換ルール」を解説
浅賀 桃子
2018/11/27 (火) - 14:00

2013年4月に改正労働契約法が施行され、2018年4月で5年が経過します。この改正労働契約法で注目を集めた新しいルールが、契約社員などの有期契約労働者に適用されうる「無期転換ルール」と呼ばれるものです。この新ルールによって自身の働き方が変わる可能性があります。以下で解説します。

「無期転換ルール」と対象の従業員

現在契約社員やパート社員といった形態で働かれている方は特に、改正労働契約法の内容をよく認識しておく必要があります。

 1.同一の企業との間で有期労働契約(〇年〇月〇日から1年間など、契約期間が定められている契約)が「5年を超えて反復更新」され、
 2.「1回以上有期労働契約の更新」が行われており
 3.現時点で「同一の企業との間」で労働契約を結んでいる 労働者が、企業に対して「無期労働契約への転換を申し込む」ことができ、「労働者から有期労働契約期間満了日までに申し込みがあった場合、企業は無期労働契約への転換をする」というルールのことです。契約社員・アルバイト・パート・嘱託などの名称を問わず、これらすべてに該当する有期雇用者「全員」が対象になります。原則企業側に、労働者からの申し込みを拒否することが認められていませんので、労働者が希望さえすれば転換が実現することになります。

ここで、毎年1年間の契約を更新しているAさんの例を元にして、具体的な申し出のタイミングについてみていきます。

2013年4月1日~2014年3月31日(1年)
2014年4月1日~2015年3月31日(2年)
2015年4月1日~2016年3月31日(3年)
2016年4月1日~2017年3月31日(4年)
2017年4月1日~2018年3月31日(5年)
2018年4月1日~2019年3月31日(5年超)

Aさんの例では、2018年4月1日~2019年3月31日までの間に無期転換希望を申し出ることで、2019年4月1日から無期労働契約がスタートすることになります。

なお2013年3月31日以前に開始された雇用契約の期間は、この5年の通算には含まれません。また、その契約期間中に一度でも契約を解除した期間が6カ月以上ある場合(これを「クーリング」といいます)は勤続年数がリセットされ、その期間より前の契約期間は通算されないことにも注意しましょう。 ただし、産休や育休で仕事から離れる場合は含みません。産休や育休の場合仕事はしていなくとも、労働契約自体は続いているとみなされるためです。

無期労働契約とは

上記3.で出てきました「無期労働契約」という耳慣れない言葉に戸惑われた方もいらっしゃるかもしれません。無期労働契約とは有期労働契約と違って「契約終了の期間が定められていない労働契約」のことを指します。

現状有期契約労働者の約3割が、通算5年を超えて有期労働契約が更新されています。しかし、どんなに契約が反復更新されていたとしても、有期労働契約のままでは企業側から労働契約更新を拒否される可能性があります。有期労働契約者への不安軽減や待遇改善の意味合いもあって2013年に「無期転換ルール」がつくられました。無期労働契約への転換が実現すれば突然の契約打ち切りの不安におびえる必要もなくなります。さらに、解雇されるリスクも低くなるでしょう。

ただし勘違いされがちなのですが、無期労働契約=正社員ではありません。労働契約法自体も、契約期間以外の契約内容に関しては企業にゆだねる形となっています。

正社員との待遇の違いは?

契約期間の定めがなくなるだけということで、そのほかの待遇面(給与や賞与、昇給、休日、福利厚生など)は原則これまでと同一になります。すなわち、仕事量や仕事の内容、責任も変わらないと思ってよいでしょう。

更新のタイミングで「会社から切られるのではないか」という不安がなくなるメリットがある反面、「正社員登用への道が遠ざかる可能性がある」というデメリットも考える必要があるでしょう。企業の立場で考えれば、正社員よりも低い条件で雇用し続けることができるため、あえて正社員にしなくてもよいと考えたとしてもおかしくありません。

もちろん、これまでと同じ仕事量や内容、責任の度合いを維持しつつ切られずに働き続けることを望むのであれば、この制度は願ったりかなったりであるといえるでしょう。

「無期転換ルールの申し込み権を得られる」人が急速に増えると予想される2018年4月以降に関し、現在有期雇用で働いている方々は「この権利を行使する」のか、それとも「あくまで正社員を目指す」のか。無期転換後の仕事内容や条件がどうなるのかというところも各企業の方針によって大きく変わってくることが見込まれます。いまのうちから新ルールの概要を理解し、自身の今後の望む働き方を考えていく一助にしていただきたいと思います。

(2017年12月5日掲載)

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