サテライトオフィスを持つ企業増加中、在宅勤務との違いとは
浅賀 桃子
2018/11/29 (木) - 12:00

サテライトオフィスとは、企業・団体の本拠地から離れたところに設置されたオフィスのことを指します。中心となる本拠からみて、衛星(=サテライト)のように各地に存在するオフィスという意味で、近年では都心に本社を持つ企業が地方にサテライトオフィスを持つケースも増えてきています。

サテライトオフィス開設事例

本社を東京に置くIT企業・テラスカイは、新潟県上越市の町家を改修してサテライトオフィスを開設しました(※1)。地方創生のための「ふるさとテレワーク」にサテライトオフィスの設置事業が採択されたことによるもので、町家の外観を残しつつテレビ会議のできるミーティングルームなども設けています。

同じく本社を東京に置くIT企業・イーツリーズ・ジャパンは、徳島県美波町にサテライトオフィスを開設しました(※2)。道路・橋などのインフラの老朽化など様々な地域課題がある中、美波町発のシステム開発を地域一体となって目指すための拠点だといいます。

サテライトオフィス誘致活動の紹介

各地方自治体が中心になって、サテライトオフィス誘致活動を積極的に進めているところも増えています。いくつかご紹介しましょう。

・山口県防府市
本州の西端に位置する、瀬戸内海に面した工業都市防府市。都心からは飛行機で2時間半~3時間、新幹線利用で4時間半ほどです。特徴(※3)はサテライトオフィスから都心などにある本社オフィスのPCを遠隔操作するリモートアクセスや、ローンチカスタマー3社に無償提供(その他の企業にも優遇提供)されるクラウド環境、サテライトオフィス設置に伴う負担軽減のための一時スペースとして合同オフィスを提供し、月額わずか5,000円の利用料金で活用できる、といったメリットが用意されています。さらに山口県としても、「地方分散支援補助金」として、東京23区から山口県へ本社機能移転する企業へ移動する雇用者1人あたり50万円を補助するなど、各種優遇制度を設けています。

・京都府南丹市
南丹市では、過疎化に悩む農村の古民家に企業・団体の小規模オフィスを誘致する試み(※4)を2015年後半から始めています。都心からは新幹線等で約4時間ですが、京都縦貫自動車道の開通により神戸・大阪方面からは車で約1時間と、アクセスも徐々に良くなっています。都心ではなかなか手ごろなオフィスがなく苦労するケースも多いですが、南丹市ではなんと無料~月1、2万程度と破格の値段でオフィスを譲渡・貸与するといったメリットが。地域の空き家対策にもなるため、地域活性化にもつながると期待されています。

・静岡県(静岡市、島田市、焼津市、藤枝市、川根本町)
静岡県もサテライトオフィス誘致に熱心に取り組んでいる自治体の一つです。静岡県経営管理部では、県が現地までの交通費、宿泊費などを負担する形での「サテライトオフィス候補地見学会」(※5)を定期開催しています。1泊2日で静岡市などの候補地に出向いた上で周囲の環境などを見学できるというもの。希望企業には希望候補地での1ヶ月程度の滞在も可能です(その際のオフィス・住居賃料の一部も県負担)。補助金などの支援制度も充実しています。

在宅勤務にはない、サテライトオフィスの特徴とは

ワークライフバランスの観点で「在宅勤務」などが注目を集める中、なぜサテライトオフィスなのか?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。在宅勤務にはないサテライトオフィスならではの特徴はどのようなところにあるのでしょうか。

在宅勤務もサテライトオフィス勤務も、広義での「テレワーク」に入りますが、在宅勤務との主な違いは以下の通りです。
サテライトオフィスを設けることで、企業からみると災害や新型インフルエンザなどで事業が一時的にストップしてしまうリスクを減らせること、特に地方での開設のケースでは自然の中で創造的な発想ができることや健康促進、地方活性化などのメリットがあります。都市部では出会えないバックグラウンドを持つ人材を採用できる可能性もあります。

都内の会社で勤務していたデザイナーの友人Mさんは、義父母の介護の関係で彼らが住んでいる徳島で一緒に住むことになり、「とても今の会社には通えないから退職しよう」と退職願を提出しました。しかし、そのデザイナーが会社から抜けることは大きな損失になると考えた代表取締役の一言「徳島にサテライトオフィスを作ろう、そして、君にはサテライトオフィスの代表として赴任してもらうことにしたい。もちろん、現地でいい人がいたら採用しよう」によって、現在徳島のサテライトオフィスで働いています。義父母の家からサテライトオフィスまでは車で30分足らずの距離です。新しい人材も採用でき、サテライトオフィスのおかげで仕事と介護を両立できています。「在宅勤務では、介護との両立はうまくいかなかったかもしれません。自宅とは違う「オフィス」であり、インターネット環境も充実し、本社の人間ともテレビ会議などですぐに連絡がとれるので寂しさもありません」とMさん。

Mさんのように、サテライトオフィスによってこれまでの仕事をそのまま続けることができるケースもこれから増えてくるでしょう。これからの働き方の一つとしてぜひ検討が進むことを望みます。

※1 東京のIT企業テラスカイが高田の町家にサテライトオフィス開設 上越タウンジャーナル 2017年4月22日
https://www.joetsutj.com/articles/61604311

※2 株式会社イーツリーズ・ジャパンSO開設! 徳島サテライトオフィス・プロモーションサイト 2017年2月1日
http://tokushima-workingstyles.com/release/201208319.html

※3 サテライトオフィスは防府市 防府地域振興株式会社
http://hofu-rp.co.jp/satellite/

※4 農村の古民家で「リラックスオフィス」いかが? 京都・南丹市、企業誘致で過疎化脱却図る 産経WEST 2015年12月30日
http://www.sankei.com/west/news/151230/wst1512300031-n1.html

※5 サテライトオフィス候補地見学会を開催します 静岡県 2017年4月21日
http://www.pref.shizuoka.jp/soumu/so-720/satellite.html

 

(2017年4月28日掲載)

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