2008年にふるさと納税制度が施行されてから、まもなく10年になろうとしています。「自治体への寄附という形で地域貢献をしながらお礼の品ももらえる」ということで注目が集まり、2012年度に約130億円だったふるさと納税による寄附金額は2016年度には約2,844億円と、わずか4年間で20倍以上の成長をみせています。
何となく興味はあるけれど「なんだかよくわからない」「難しいのかな」といった声も聞かれるふるさと納税制度。そんな疑問を解決できる場として設けられている「ふるさとチョイスCafe」に伺いました。
ふるさとチョイスCafeとは
今回伺ったふるさとチョイスCafeは、東京・有楽町駅から徒歩1分という便利な場所に位置しています。カフェを運営している株式会社トラストバンクは、国内最大級のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」の運営会社でもあります。ふるさと納税サイトは複数ありますが、ふるさとチョイスは全国100%の自治体(1,788)すべてを掲載し、サイトからふるさと納税申込ができる自治体数(1,250)も他サイトを圧倒しています(2017年8月現在)。そして、ふるさと納税について気軽に相談できる「実店舗」として、2016年7月に「ふるさとチョイスCafe」がオープンしました(定休日月曜日、祝日を含む火曜~日曜営業)。
取材に伺ったのは日曜日の午前中。ちょうど「1からわかるふるさと納税セミナー」が開催されるとのことで参加させて頂きました。当日の参加者はご夫婦、家族連れなど10名程度でした。このセミナーは基本火曜12:00~/19:00~、および土曜・日曜の11:00~/15:00に無料で開催されています。各回の定員は30名ですが、年末が近づくにつれふるさと納税を検討する方も増えるため、年後半はスタッフへ相談を受けるために整理券が配られるほどの人気なのだとか。
ふるさと納税セミナー
当日のセミナー講師は、Cafeスタッフでもある高橋さん。「1からわかる」というセミナータイトル通り、「ふるさと納税という制度とは」というところから丁寧に説明してくれています。「ふるさと」という名前から、生まれ故郷の自治体に寄附しなければならないと考えている人もいらっしゃると思いますが、寄附先の自治体は自由に選べることが特徴なのですね。
続いては、参加者が特に気になるところである「寄附による控除」についての説明。グラフを使いながら話してくれました。ふるさと納税で自治体に寄附したお金は2,000円を超える分が全額税金から差し引かれますが、初めてふるさと納税をされる方は特に、控除を受けられる寄附額に上限があることを知っておく必要があります。上限を超えた部分に関しては、控除対象外となります。
ふるさと納税をした際に控除される金額の目安表をご紹介いただきました。上限金額はその人の年収や家族構成などで変わってきます。あくまで目安ですので、もう少し詳しく試算したい方は「ふるさとチョイス」のウェブサイト上で、会社員の方であれば毎年年末ごろに配布される「給与所得の源泉徴収票」をもとに入力することができます。ただし、正式な計算は前年ではなく寄附した年の年収がベースになりますので、年収が前年から大きく変動した方は注意が必要です。
これからふるさと納税に挑戦する人にも分かりやすく、ふるさと納税の流れを図解で説明してくれました。寄附金受領証明証とお礼の品は、自治体による差はありますが、同タイミングで届かないこともあるようです。なお、送られてくる証明証は確定申告時に使いますので、なくさないようにしましょう。
2015年の制度改正で導入された「ワンストップ特例制度」により、確定申告をしなくても節税メリットを受けられるようになりましたが、2016年から申請方法が変更になるなど正しい知識を身に付ける必要があります。セミナーではもちろん、ワンストップ特例制度についての説明もありました。メリットと注意点をしっかり理解した上で、確定申告とワンストップ特例のどちらを選択するかを考えると良いでしょう。セミナー終了後に、カフェのスタッフに直接相談することも可能です。
また、2016年に起こった熊本地震や糸魚川駅北大火、2017年の東北豪雨や九州北部豪雨は広く報道され、記憶に新しいところかと思います。このように地震や台風など災害が多い国である日本において、ふるさと納税が被災自治体の力になるという点も見逃せません。他の寄附と違い、被災自治体にダイレクトに寄附金が届く点がポイントです。ふるさとチョイスサイト内でも「災害支援」ページが立ち上がっており、多くの善意の輪が集まっています。
ふるさとチョイスCafeの様子
セミナー終了後も参加者の皆さんはカフェに展示されている各自治体のお礼の品を見回ったり、カフェスタッフに直接寄附のご相談をされたりしていました。自分ひとりで行うことが不安な方など、スタッフの方に確認しながらその場で寄附ができるメリットは大きいのではないでしょうか。また、実際にお礼の品を確認し、試食できる点も実店舗の魅力でしょう。筆者も高知県四万十市のお礼の品で作られた「青さのりすーぷ」を購入しました。そのほかにもおむすび、甘酒やたい焼きなど、数百円で気軽に試食・試飲できるメニューが揃っておりますので、気になる方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
ふるさとチョイスCafeへの思い
当日セミナーを担当された講師の高橋氏に、ふるさとチョイスCafeやふるさと納税への思いを伺いました。
ふるさとチョイスCafeでは、お茶をするだけではなく、お礼の品や新しい取り組みなど、色々な自治体のことを五感で「知る」ことができます。例えば「八街生姜ジンジャーエール」。これまで八街市に縁もゆかりもないお客様にとっては読み方が分からない方もいらっしゃる地域だと思いますが、生姜の有名な地域だと知ることができます。また、実際に飲んだりできますので、苦いと思っていたものが実際はこんなに甘かったのかとか、イメージが変わった例もありますね。
ふるさと納税の制度に関しては、複雑な仕組みでもあるので、初めてふるさと納税をやってみようと思って足を運んでくださった方に分かりやすくお伝えできるようにしています。特にお伝えしたいこととしては、今、ふるさと納税制度の枠組みの中で災害支援やガバメントクラウドファンディング(※)など、新しい取り組みが始まっていることです。お礼の品の形も「体験型」の、実際に寄附先の自治体に足を運んでもらうタイプのものも増えてきています。
ふるさと納税という制度を通じて、自分の生まれ育った自治体以外にも関心を持ったり、税の流れがどうなっているのかを考えたりするきっかけになるのではと思います。
(※)地域の課題解決や夢の実現を目指す自治体がプロジェクトのオーナーとなり、資金を集めること。寄附の申込が目標金額に達しなくともプロジェクトは遂行され、決済も申込時点でされる点で通常のクラウドファンディングとは異なります。
寄附金が各自治体の産業活性化や地方移住につながるなど、ふるさと納税は地方創生のチャンスとして位置づけられる制度です。地方創生はまず私たちが各自治体に興味を持つことからスタートするといっても過言ではないでしょう。ふるさとチョイスCafeで、様々な地域の魅力を直接感じる機会を作ってみてはいかがでしょうか。
(2017年9月2日掲載)