近年、U・Iターンという言葉がよく聞かれるようになってきました。U・Iターンはもともとは人口還流現象のひとつですが、今では転職を考える際の選択肢の一つとして注目されています。なぜUIターン転職が検討され始めているのか、これから検討される方がぜひ知っておきたい事柄をまとめてご紹介します。
Uターン、Iターンとは
まず、単語の意味についてみていきましょう。
Uターン転職とは、生まれ育った出身地を離れて他都道府県で就職をした後に、再び生まれ育った出身地に戻り再就職をすることをいいます。 たとえば、以下のようなケースです。
茨城で生まれ育ったAさんは、高校までは地元の学校に進学しました。都内の大学に合格するともに都内に転居、そのまま都内の企業に就職しました。数年後、茨城でマイホームを買うことを決意し、茨城の企業に転職することになりました。
このAさんのように「進学を機に地方から上京した人がそのまま首都圏で就職し、何年かたった後に出身地(地方)に戻り就職する」ケースは、Uターン転職の代表例として挙げられます。
一方Iターン転職は、現在暮らしているエリア以外で就職することを指します。 代表的なケースは以下の通りです。
東京で生まれ育ったBさんは、都内の大学に進学後都内の企業に就職しましたが、数年後長野の企業へ転職し、長野に住むことになりました。
Bさんの事例のように、一般的には「都会で生まれ育ちそのまま就職した後に、地方へ移住し再就職する」ケースで使われることが多くなっています。
なぜUターン、Iターンが注目され始めているのか
Uターン、Iターン転職が注目され始めている理由はどのようなところにあるのでしょうか。
近年地方の企業でUターン、Iターンを歓迎する動きが増えてきています。 企業や自治体の中には、条件を満たすU・Iターン就職希望者に対し支援金・助成金を出すところもあります。いくつかご紹介しましょう。
・兵庫県但馬地域
「ふるさと企業就職活動支援事業助成金」として、U・Iターン転職者への面接選考時の旅費支給金額の半額を助成しています。
・広島県神石高原町
「子育て応援住宅等取得支援事業」として、新規居住し住宅を購入する際の助成金を最大150万円を助成する制度を設けています。
・茨城県常陸太田市
新婚家庭(夫婦いずれも満50歳以下)に対し、家賃助成金として1世帯当たり月額2万円を最大36か月間支給しています。
遠方への転居を伴うU・Iターン就職を決断するにあたっては、イニシャルコストの面などで不安に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、現在ではだいぶ敷居が下がってきているといえます。
Uターン、Iターンのメリット
「都心は交通の便はいいけれど、家賃などの生活費が高い」と感じている方も多いでしょう。生活費の関係で狭いアパートに住むことを余儀なくされていた世帯も、地方では同じ金額で3倍もの広さのマンションに住めるといったことが、決して珍しくはないのです。「子供も生まれたし、広いマンションに越したいけれど、今のままだと難しいなあ」と感じていた人も、地方に転居することで解決できる可能性があります。
また、毎日の満員電車に揺られての通勤ラッシュでストレスを抱えているビジネスパーソンの方も、地方ではマイカーでの通勤になりストレスが軽減される例もみられます。
Uターンの場合特に、子育て期の家庭にはメリットが大きいのではないでしょうか。「保育園落ちた日本死ね」の匿名ブログが世間をにぎわせたのは記憶に新しいと思いますが、地方では待機児童の問題も都会ほど大きくないですし、両親の近くに住める場合はサポートを受けられ心強いでしょう。Iターンの場合でも、配偶者の出身地(配偶者にとってはUターン)の場合はUターンに近いメリットが得られやすいといえます。
企業側のメリットも当然あります。
代表的なところでは
・都市部の人脈を手に入れられる
・その地域周辺のニーズだけでなく、都市部で働いていた人材からの新しい視点やニーズをもとに、新製品をリリースするなど会社の発展につなげられる可能性が高くなる
といったところがあげられるでしょう。
多くの企業がひしめき、競争も地方に比べ激しい傾向にある都市部で働いているビジネスパーソンは視野が広い傾向があると評価している企業も少なくありません。また、転居を伴う転職になり、生半可な気持ちでは決断できないのが一般的であることから、いざ決断した後は企業への定着率が比較的高いとされ、この点もメリットと言えるでしょう。
それでも不安だと思うあなたへ
特にIターンの場合、自分にとって見ず知らずの土地に行くことになり、不安になるかもしれません。また、都市部に比べると同じような仕事があるのか、給与面でも同じ水準は望みづらいのでは、といった点を気にされる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「トータルの生活費ではどうなのか」「一生に何度もあるわけではない子育て期の環境として現在の都市暮らしのままでいいのか」など、少し視点を変えて考えてみてはいかがでしょうか。日頃のストレスをためずに働ける環境をU・Iターン転職にて実現できる可能性も十分にあります。各自治体や企業も以前に比べ、インターネット上などでUIターンに関する情報提供が充実してきていますので、まずは色々調べ、不安に思う点を確認してみることをお勧めします。
(2017年3月25日掲載)