2018年のセンター試験地理の問題でも話題になった「北欧」。そのひとつ、デンマークは世界一幸せな国と呼ばれています。国連が毎年行っているWorld Happiness Reportにて2013年、2014年と世界一に輝き、以降もトップ3の常連国であるデンマーク。その理由のひとつに「ヒュッゲ」があるかもしれません。いま世界でブームになりつつあるヒュッゲをご紹介します。
デンマークの暮らしに根付く「ヒュッゲ」
日本ではまだあまり知られていないかもしれないこの「ヒュッゲ」ですが、2016年頃から世界的なブームになってきています。このヒュッゲ(Hygge)は、「人と人とのふれあいから生じる温かく居心地の良い雰囲気」を指すデンマークの言葉です。各人が自分のライフスタイルを大切にしているからこそ、幸福度ランキングの上位常連にもなっているわけです。
このヒュッゲという言葉、名詞としてだけでなく「ヒュッゲする」という動詞としても使われています。デンマークでは朝が早く、7時くらいから働き始めるかわりに、夕方4時ごろには仕事を終え家に帰ります。そして、家族がいる場所=「ヒュッゲな空間」であり、仕事よりも家族を優先しリラックスタイムをもつ。プライベートに仕事をもち込まないというのが、デンマーク人のヒュッゲ精神だとされています。
欧米でも「ヒュッゲ」がブームに
2016年度のイギリス流行語大賞候補に選ばれたり、2016年のオックスフォード辞書選出「世界の今年の言葉」の最終選考に残ったりと、欧米でもここ1~2年ヒュッゲがブームになっています。デンマーク人のマイク・ヴァイキングが書いた「THE LITTLE BOOK OF HYGGE」は、イギリスやカナダ、アメリカでベストセラーになっています。このほかにもヒュッゲ関連の本がライフスタイル、インテリア、料理など複数のジャンルから出版されるなど、欧米人のヒュッゲへの注目はかなり高くなっています。
日本でも徐々に注目?
日本でも、2017年11月にTBS「世界ふしぎ発見!」という番組でデンマークを取り上げたこともあり、徐々にヒュッゲへの注目が集まりつつあります。先述の「THE LITTLE BOOK OF HYGGE」は、2017年10月に「ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方」として、日本語版が出版されています。
このヒュッゲの考え方を、日本のライフワークに取り入れることはできるのでしょうか。日本とデンマークの仕事とプライベートに対する考え方の違いがうかがえる統計をご紹介しましょう。
イギリスのある企業がフルタイムで働く内勤職約2000名を対象に「1日8時間の就業時間中、バリバリと仕事ができている時間はどのくらいですか」と質問したところ、平均約3時間という結果が出ており、それ以外の時間で罪悪感を覚える行為として「SNSチェック」(47% / 44分)「ネットニュースのチェック」(45% / 1時間5分)「私用メールのやりとり」(27% / 14分)などがあげられています。イギリスの統計ではありますが、日本の企業からの回答としても違和感がないほど、思い当たる節がある方もいらっしゃるかもしれません。しかしデンマーク人はそういったことはしないのだとか。
プライベートに仕事をもち込まない代わりに、仕事にプライベートをもち込むこともないのがデンマーク人の特徴のひとつでもあります。オン・オフがはっきりしており、時間の無駄は徹底的に省かれています。必然的に労働時間の短縮になり、生産性もあがることになります。デンマークでは週37時間労働であり、これを破ることによる罰金まであります。
日々の中の小さな幸せを感じることこそ、ヒュッゲの精神につながる
先述のWorld Happiness Reportにおいて、日本は50位前後をうろうろしています。筆者がカウンセリングをするなかでも「忙しい生活に追われ心の余裕がない」「情報が多すぎる」「なんとなく日々のタスクをこなすだけになっている」といったビジネスパーソンの声をよく聞いています。そんな方々にこそ、ヒュッゲの精神は役に立ちます。
寝ている時間を除き、1日のおよそ半分を過ごす職場のスペースに自分の好きなアート作品を置く、自分にとって安心できる手触りの良いひざ掛けを置く、アロマディヒューザーで気に入った香りを焚く…ちょっとした工夫で職場環境がよくなり、小さな幸せを感じられることでしょう。これこそが「ヒュッゲする」一歩になります。
プライベートを大切にしつつ、仕事の時間はしっかり集中する。職場でも心地よさを与えられるような工夫をすることで気持ちを落ち着かせ、効率よく進めることができる。このようなライフスタイルは、日本でも実現不可能ではないでしょう。ストレスフルな職場環境にいる方はぜひ、このようなちょっとした工夫から「ヒュッゲ」してみませんか?