社会起業するならNPO? 社団法人? 株式会社とどう違う?
加藤 晶子
2018/12/26 (水) - 12:00

社会起業、というと特定非営利活動法人(NPO法人)や一般社団法人などの非営利法人(法人の社員に利益を分配しない法人)をイメージすると思います。でも、その違いは?というと、意外に知らない方が多いのではないでしょうか。今回は、NPO法人と社団法人との違い、そして、株式会社との違いについてもご紹介します。

活動内容の違い

特定非営利活動法人(以下、NPO法人)と一般社団法人(以下、社団法人)の一番の違いは、その活動内容であるといえます。なぜなら、社団法人は株式会社と同様に、法に触れなければどのような事業でも行うことができますが、NPO法人は活動の範囲が限られているからです。

NPO法人は、不特定多数の者の利益のために、法に規定された特定非営利活動の範囲内で、活動を行う必要があります。

具体的には、以下の20分野です。

1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2. 社会教育の推進を図る活動
3. まちづくりの推進を図る活動
4. 観光の振興を図る活動
5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
7. 環境の保全を図る活動
8. 災害救援活動
9. 地域安全活動
10. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
11. 国際協力の活動
12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
13. 子どもの健全育成を図る活動
14. 情報化社会の発展を図る活動
15. 科学技術の振興を図る活動
16. 経済活動の活性化を図る活動
17. 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
18. 消費者の保護を図る活動
19. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
20. 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

福祉・保険・教育や環境分野、情報や科学技術分野も含まれるため、広範囲の活動を網羅しているとは思いますが、NPO法人を検討する場合には、事業内容がこの分野にあてはまるのか調査が必要です。

設立の手続き・期間・費用・必要人数の違い

社団法人の設立には、理事1名と社員2名以上が必要です。そして、設立の手続きでは、2名以上で定款の作成を行い、公証役場で定款の認証を受け、設立登記が完了します。設立にかかる費用は、自分ですべて書類を作成する場合で、登録免許税と定款認証に約10万円かかります。そして、設立が認められるまで約1~4週間の期間が必要です。

NPO法人の設立には、理事3名の他監事1名、社員も10名以上必要となります。本来、政府が決めた特定の非営利事業について、法人格を与えることを目的として始まった法人ですので、活動の基盤があるという前提のもとに、定められたと考えられます。
費用面では、設立時の登録免許税が免除されていることから、設立時の書類作成などを自分で行うと、0円で始めることも可能です。社団法人と違い、審査などに時間がかかることから、4カ月ほどの設立期間が必要となります。

税制面で優遇されるNPO法人

NPO法人は、社団法人と違い、税制上の優遇を受けられる点がメリットです。法律で定められた34種類の収益事業に当てはまらなければ、税金はかかりません。また、34種類の収益事業に当てはまる場合にも、単発で行うイベントなどの売上金は収益目的とみなされず、税金がかからないなどの判断もありますので、詳しくは管轄の税務署で個別の問い合わせが必要です。そもそも、NPO法人は寄付金や助成金、補助金などで運営資金を賄う場合も多く、これらには税金がかからないため、活動資金の大半が寄付金などという場合には、NPO法人のメリットを活かせます。

株式会社とどう違う?

NPO法人や社団法人とは違い、株式会社はその名の通り、株式を発行し、資金調達をすることが可能です。大きく事業を始めたい場合に、自己資金・寄付金や助成金のみで運営を行うNPO法人や社団法人と違い、株式を分配し、出資金を募ることが可能です。また、株式会社は営利目的に設立できますので、利益を社員に分配することが容易です。(ボーナスもその一例です。)そのほかの違いとしては、設立時に登録免許税15万円のほか、収入印紙代などで約20万円ほどの費用負担があります。費用負担だけを考えると、NPO法人や社団法人の方がメリットがあるといえますが、設立期間が1~2週間と短いので、すぐに法人格を取得したい場合には、株式会社も検討するとよいでしょう。

そして、社会起業を考えた場合に、手続きなどの違いよりも大きいのは、そのイメージにあるといえます。株式会社は営利目的というイメージが強いため、事業内容が社会貢献性の高いものであっても、NPO法人や社団法人と比較すると、社会的な評価は営利目的とうつることが多いといえます。それに伴い、寄付や助成金なども受けにくくなるというデメリットがあるといえます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。非営利法人といっても、NPO法人と社団法人には多くの違いがあります。活動範囲を限定せず、設立までの期間を短くしたい場合には社団法人、期間を長くとってもいいので、設立時の費用負担やその後の税負担を軽くしたい場合には、NPO法人がオススメといえるでしょう。

参考:特定非営利活動法人ガイドブック(東京都)

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