税理士、弁理士、行政書士…世の中には法律に大きく関わる「〇〇士」の仕事が多くあり、自分の知識を活かして独立したいと目指す人も多くいます。今回は、未経験から資格を取って独立することは可能なのかどうか、押さえておくべきポイントを解説しましょう。
まず必要なのは資格の取得
みなさんもお分かりのように、こういった「士業」といわれる仕事に就くためにまず必要なのは、資格を取ることです。税理士、社会保険労務士(社労士)、行政書士、弁護士、というような資格には、高度な専門家としての、その分野の仕事の独占権がありますので、必ず資格が必要です。つまり、非常に時間と労力をかけて勉強しないといけないことを覚悟する必要があります。
独学で頑張る人も中にはいますが、働きながらの独学ではなかなか効率よくいかないでしょう。資格の学校などに通ってまでその道を目指したいのか、その年数とお金をかけてもよいと思えるのかどうか、しっかり自分自身への確認が必要です。特に、税理士、公認会計士、弁護士などは非常に難しく、合格するのに何年もかかる資格です。
かかる労力や費用も考えよう
弁護士になるために難関な司法試験を受ける必要があることは、多くの人がご存じでしょう。他の資格もなかなか厳しい現状があります。
たとえば税理士になるためには、行政機関での一定期間の税務の仕事経験がある人以外は、税理士試験で会計や税務に関する11科目の中の5科目以上の合格が必要です。働きながら学校で勉強し、数年に渡って努力しながら科目合格を目指していく人がほとんどですし、合格率も各科目10~15%と非常に低い率となっています。資格をとってからどれだけ収入が稼げるのか、40代・50代の場合、今から得られる収入を考えると、労力やかかった費用に対してコストが見合わないかもしれない、という点についても考えるべきでしょう。
チャレンジしやすい資格は?
さまざまある士業の資格のなかでも、比較的チャレンジしやすいのは、社労士や宅地建物取引士(宅建士)、行政書士などです。社労士については、短大か高専以上の学歴で受験資格が得られますし、行政書士、宅建士は誰でも受験ができます。しかし、試験実施は年1回で、合格率も税理士よりは高いですが、15~17%程度なので、決して易しい資格ではありません。
また、資格が取れたら即それだけで独立開業が可能なわけではないことにも注意が必要です。社労士は2年以上の実務経験と事務指定講習の修了、全国社会保険労務士連合会への登録が必要です。実務経験は、受験の前でも後でもよいのですが、その職種としての経験がないといきなり開業しても顧客を獲得することは非常に困難でしょう。
また、宅建士の場合も、試験に合格するだけでなく、宅地建物取引士登録をし、修了後、宅地建物取引士証交付の手続きをする、ということが必要です。登録については、実務経験2年以上か、登録できるための講習を受けることが必要になります。顧客を見つけること、業務の経験を積むことを考えると、いきなり開業よりはやはり不動産関係の会社で働くほうがよいでしょう。
行政書士についても、資格を取得して、日本行政書士会連合会の名簿への登録が必要です。ただ、実務経験が必要ということはありませんので、いきなり開業することは可能ではあります。また、行政書士事務所を開業している人は、単独で行っていることも多く、それほど求人が多いとは限らないこともあります。
自分がチャレンジしたいかどうかよく考えて
このように、社会人になってから、士業で未経験から開業することは「できる」といえます。ただ、試験への合格が必須ですし、その資格を使っての実務経験を積むことが重要となってきます。その際にやはり40代・50代からの転身は、雇用されにくいのは事実ですので、まずは収入や場所などの条件よりも経験が積める場所に就職する努力をすることが大切だといえるでしょう。
社労士の場合は、年金事務所や行政からの仕事などを請け負うこともできるので、独立しながら事務所の場所を借りて企業のような顧客を継続してもつのではなく、都度請負中心で仕事をしていくことも可能ではあります。ですが、収入的には大きくは望めないと考えてください。
結論としては、資格を取って独立開業することは可能です。しかし、長期的な計画で進むことが必要になってきます。長い人生のライフプランやマネープランを考え、そこまでの時間をかけてでもチャレンジしたいかどうか、家族は賛成してくれるだろうか、自分の胸によく聞いてみることがポイントです。漠然と考えているのではなく、ぜひ、ファイナンシャルプランナーやコーチ、キャリアコンサルタントなどと一緒にみなさんの生涯の計画を紙に書いて可視化してみることをおすすめします。