バブル入社組が今、本当にすべきことは何か? Part 1
荒木 三香
2019/01/01 (火) - 08:00

今、企業が問題視する「バブル入社組」。同時期に入社した人数が多く、ボリュームゾーンとなっていることから、今後の企業の対応について、このところ相次いで厳しい選択をせまられているようです。 この世代が抱える苦悩、不安、本来のスキル…そして今後、この世代が何を考え、どう行動すべきかを一緒に考えてみたいと思います。

浮き彫りになったターゲット

2017年11月、百貨店大手の三越伊勢丹HDが早期退職制度「ネクストキャリア制度」の大幅な退職金積み増しと対象年齢の拡大を公表し、1988年~1992年のバブル期に大量入社した、いわゆる「バブル入社組」をターゲットにしたリストラ策が打ち出されたのは記憶に新しいでしょう。同年9月~11月にかけて他の大企業も同様に、早期退職者の募集を相次いで発表していますが、いずれもターゲットはやはり40~50代。この世代は人数が多いだけではなく非管理職でも賃金が高く、各企業にとって共通する悩ましい問題として扱われているようです。

このニュースを聞いた瞬間、真っ先に浮んだのは 前述企業に勤める友人と、そして何より全国各地に配属されている、筆者が入社当時に勤めた会社の同期や先輩たち…そう、何を隠そう筆者自身がまさに、このバブル入社組の一人でもあるのです。
入社直前にバブルが崩壊したため、さほどバブルの恩恵を受けた記憶はありませんが、最後のバブル入社組であることには違いありません。このときの同期とは今も交流が多く、決して他人事とは思えない報道でした。

入社当時の時代背景と彼らが今、抱える不安、問題

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この世代は 今まさに働き盛りであり、子どもの学費や仕送り、住宅購入のローン返済、親の介護問題などさまざまな人生の課題に直面している世代でもあります。最近よく「人数が多くプライドも高いけど正直、使えない世代」という批判まで耳にしますが、果たして本当にそうなのでしょうか?

確かに当時、いい大学を出て、いい会社に入ることがすべてのような価値観をもって入社した世代でもあります。早い段階で転職した人以外は、最後まで一社で勤め上げ、定年退職でしっかり退職金を受け取る終身雇用が当たり前の感覚だったでしょう。

しかし時代は大きく変わり、いまや人生100年時代、80歳まで働かなくてはならない可能性もある…とまでいわれます。AIの進歩により、ロボットが習得できる簡単なルーチン作業の仕事は既に減っており、65歳まで継続雇用制度でそのまま勤め退職しても、その先10年、20年とモチベーションを落とさず働き続けられる仕事、職場を再び見つけることは決して容易なことではありません。高収入であった人ほど、その後の落差を強く感じるでしょうし、この世代の都心で勤める人の半数程度は、マイホームを購入せず今も賃貸マンションで生活する人も多いと思いますが、たとえ比較的多い厚生年金が夫婦で入ってくる場合でも、退職後に都心の高額な家賃を支払い続けるには、再度どこかで働かなくては余裕がないでしょう。入社当時に想定された80歳前後を寿命とするライフプランは、いまやすっかり過去のものとなってしまいました。

先送りした問題のツケは、誰が解決すべきか?

そんななかでの昨今の、この世代を「リストラ適齢期」とする各企業の動向。これは各従業員の問題だけではなく企業側が長年、年功的賃金を継続し、職務や役割に応じた根本的な賃金制度改革をするなどの対策をとらなかったことや、問題を先送りにしてきたツケを今になって会社の収益重視のための抜本的改革のように一斉に打ち出してきたという企業側の怠慢でもある、との指摘もあります。

しかし、この世代が現在の会社を退職したのちも、生き生きと暮らしていくためには、今ここで企業努力が至らなかったことを嘆いてみても、行き場のない愚痴を吐き続けていても誰も助けてはくれません。
であるならば、会社からお荷物扱いされ、肩を叩かれることにビクビクする前に、この先の人生を今一度、根本的に見つめ直してみる価値はあると思います。

もちろん個人差はありますが、筆者が関わってきた同世代や少し上の世代の方々を思い浮かべると、むしろ前後世代とのコミュニケーションスキルや、体力、意欲、向上心などにおいても、けして「お荷物」扱いされるようなタイプの人は少なかったはずです。まだまだ新しいことにチャレンジ可能な世代です。

自分の人生の “本当のミッション” は何なのか?

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2017年、森下仁丹が「第四新卒採用」として経験を積んだ人材募集を広告に出したところ、この人材難のなか、2200人の応募があり話題になりました。性別、年齢を問わない募集でしたが、40~50代の応募が圧倒的だったようです。このことからも、この世代の抱える先行きの不安、やりがい、生き方の見直しなどによる検討段階に入っていることが浮かび上がってきます。

そうした企業への転職も一つの選択肢でしょう。しかし、実際そうした企業が採用できる人数は限られています。一番お金の必要な世代であると同時に、親の介護による介護離職を検討する人が急増している世代でもあります。既に親と同居し子育てとのダブルケアとなる世帯も存在しますし、片方の親が亡くなり、地方に住むもう一方の親を都心に呼び寄せるか、自分たちが地方に戻るかの選択に迫られている人もいるでしょう。

恐らく、地方へ移住した場合の一番の不安は「仕事があるのか?収入は?」でしょう。
たしかに東京近郊の企業と同じ給与が出る会社は少ないですが、人手不足、後継者不足、そして若い力だけではなく、経験を積んだ、まだまだ動ける世代の力も必要とされています。
それは、全国各地を転居し、最後は東京から山形に地方移住した筆者が痛感するところでもあります。

若い世代に比べ、ブランド志向が高く、けして柔軟性が高いとはいえないバブル入社組が、方向転換するのは容易なことではないことは想像できます。全員が今、会社を辞め、起業、地方へIターン、Uターン、もしくは複業しなくてはならない、ということではないことはいうまでもありません。大切なことは、人生100年時代、まだ折り返し地点でもある50歳前後の今、この先の働き方、自分らしい生き方、自分のミッションは何か? を今一度、しっかり考えてみることではないでしょうか。

次回は、その答えを探すための具体的な方策をいくつかご紹介したいと思います。

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