副業・転職・再就職には、「リカレント教育」が必要?
荒木 三香
2019/01/09 (水) - 08:00

「ライフスタイルや、ライフステージの変化に合わせて、多様な仕事を選択したい」、「ワークライフバランスを確保して、健康に、柔軟に働きたい」、「仕事ぶりや能力の評価に納得して、意欲を持って働きたい」など “働き方改革の実現”に向けた対応策の一つとして、「リカレント教育」への拡充がはじまっています。

「働き方改革」で大事なことは、時間だけじゃない

平成29年3月28日に公表された「働き方改革実行計画」では、働き方改革の実現に向けて、大きく3つの課題となる、「処遇の改善(賃金など)」、「制約の克服(時間・場所など)」、「キャリアの構築」が提示されました。働き方改革といえば、長時間労働や裁量労働制のことばかりが取り上げられますが、この改革の意義は、決して“働く時間”の問題だけではありません。

この実行計画には、「10年先の未来を見据えたロードマップ」を掲げ、働く人の視点に立った課題にもとづく9つの検討テーマと、19の対応策が出されましたが、その一つとして最近特に注目されている「リカレント教育」などの、個人の学び直しへの支援や、職業訓練などの充実などが挙げられています。

リカレントとは「反復する、回帰する、循環する」という意味で訳されますが、OECD(経済協力開発機構)が提唱する生涯教育構想の一つでもあります。個人が必要に応じて、教育と就労を交互に行うこと、生涯にわたって学び続けることを勧める教育システムでもあります。
日本では、まだまだ欧米のように成熟したシステムには至っていませんが、今回の実行計画の中では、いままでの生涯学習とは別の、具体的な施策として打ち出されています。

多様な仕事、働き方を選択したい、という希望増

「リカレント教育など、個人の学び直しへの支援や職業訓練などの充実」に対して、働く人の視点に立った課題という観点から、現場との意見交換会で寄せられた声には、次のようなものがありました。

・社会人の学び直し希望…49.4%
・副業を希望する就業者…約368万人
・65歳以上でも働きたい高齢者…65.9%
・学費の負担などに対する経済的な支援…46.1%
・就職や資格取得などに役立つ社会人向けプログラムの拡充…35.0%
・土日祝日や夜間における授業の充実…34.0%

このほかの現状の課題としては、民間企業における一人当たりの教育訓練費が減少していること、また育児等で離職した女性の学び直しと再就職を支援するリカレント教育課程が注目されていること、合わせて第4次産業革命によるIT・データ等の働き手に必要なスキルが変化し、これに合わせたスキルの獲得が必要とされていること、などが挙げられています。

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これからの方向性と、具体的な施策は?

今後の対応の方向性としては、個人、企業、政府による人材投資を抜本的に強化し、集中投資を行うとされ、子育て等により離職した女性のリカレント教育や、高度なITなど個人の主体的な学び直しを通じたキャリアアップ・再就職への支援を、抜本的に拡充することや、より実践的な職業教育を行う専門職大学を創設するなど、体系的なキャリア教育を推進する方向にあります。

具体的な施策としては、雇用保険法を改正し、専門教育講座の受講費用に対する教育訓練給付を拡充するために、いくつかの見直しがありました。

・給付率:最大6割→7割へ
・上限額:年間48万円→56万円へ
・受給可能期間:離職後4年以内→離職後10年以内へ

上記の改正とともに、学び直し講座の充実や多様化にも力を入れる方針です。その例として…

・子どもを保育園に預けながら受けられる教育訓練を拡大
・土日・夜間講座を増設
・完全eラーニング講座を新設
・高度なIT分野を中心に、今後求められる能力・スキルの講座を開拓
・IT、保育、介護などの長期離職者訓練の拡充
・学び直しに関する情報を一括して閲覧できるサイトの構築

など、個人の学び直しに向けた支援や講座等の充実が、ますます進むことになるでしょう。

最近注目のリカレントには、どんなものがある?

リカレント教育の担い手として、企業の人事施策以外に、教育機関としては次のようなものがあります。
大きく分けると、専門職大学院、大学院、大学、専門職大学/短大(※2019年度開学)、専修学校、民間研修・教育事業者、などがあります。

政府が推進しようとしているリカレント教育の中でも、おそらく皆さんが何気なく日常の中に、すでに取り入れて活用している学びもあるでしょう。最近よく耳にするものには、学べるオンライン生放送で有名な『Schoo(スクー)』や、実践的な授業やオンラインでの学びも可能なMBAの『グロービズ経営大学院』などがあります。そのほか、『放送大学』の社会人向け通信制大学・大学院なども、従来からある生涯学習としての、学び直しの場として有名でしょう。今後更に、こうした学びの場の拡充が進む方向にあります。

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これからがチャンス!費用も内容も充実で、副業・再就職に有利!

なぜいま、リカレント教育などの“学び直し”が必要なのか、副業や転職、そして再就職を希望する人にとって大切な学びの機会であり、チャンスであるのか、ご理解いただけたでしょうか?

もちろん、これらの学びを通して、あらたに独立・起業にチャレンジすることも可能でしょう。

この先、どういう働き方をするにせよ、いままでと同じ仕事、同じ会社に残るにせよ、今後ますます勢いを増すAIの進化や時代背景を考えると、私たちは、生涯にわたって何らかの「学び」を模索しつづける以外に、これからの人生100年時代を、自在に泳ぎきることは難しくなってくるのではないでしょうか。

参考:
働き方改革実行計画(概要)
産業人材政策室 「リカレント教育の担い手について」
BizHINT 「リカレント教育」
文部科学省「社会人の学び直しに関する課題等について」

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