インターネットの普及に伴い、IT企業を中心に「リモートワーク」が広まってきています。近年では2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震が導入の契機になったとする企業もみられます。震災からしばらくの間、交通網が麻痺しオフィスへの出社が困難になったことから自宅待機を余儀なくされた方も多かったでしょう。リモートワークと私たちの働き方について考えます。
リモートワークとは
リモートワークとは、その名の通り「遠隔で働くこと」です。元々の英語remote workは、「従業員が自宅を主として働き、Eメールや電話を使いながら企業の人とコミュニケーションをとる仕事の仕方」「職場のシステムに接続されたコンピュータを使いながら、自宅から会社の業務をする状況」と定義されています。
日本では、リモートワークのほかにも在宅勤務、テレワーク、モバイルワークなど、似たような言葉が使われています。
在宅勤務は会社に所属しながら、その名の通り自宅で働くこと。テレワークとは、遠いという意味の「Tele」と仕事「work」を組み合わせた言葉で、リモートワークとほぼ同義と捉えていただいてよいでしょう。モバイルワークはAndroidやiPhone、iPadなどのモバイル端末が急速に普及したことにより普及しつつある、場所を選ばない働き方で、テレワークの一形態です。自宅勤務に限らず、コワーキングスペースやサテライトオフィスでの勤務などでも活用されています。
日本のリモートワーク普及率とその理由
国土交通省が実施したリモートワーク(テレワーク)普及率は2011年度で19.7%となっています。また、総務省の2016年調査では在宅勤務の普及率22.9%、サテライトオフィス勤務可能割合は15.8%となっており、調査方法や年度は違えど、現状だいたい2割程度であることが分かります。特に中小企業での導入率が低い傾向が見られており、導入に踏み切れない主な理由としては「IT環境の整備にかかる初期費用がかかる」こと、さらに「リモートワークを認めるにあたっての制度構築が難しい」ことなどがあげられます。セキュリティ面で懸念を示す企業もまだ多いのが現状です。
参考までに、1970年代のアメリカがリモートワークの発祥地とされています(マイカー通勤による渋滞・大気汚染緩和等を目的にロサンゼルスで開始)。グローバル企業から中小企業までリモートワークは広く定着していますが、YahooやIBMのようにそれまで認めていた在宅勤務を廃止する企業もみられるようになっています。理由としては「チームで成果をあげるためには、仕事を一緒にするメンバーが離れた場所にいることは望ましくない」ということがあげられています。つまり生産性が向上しないから廃止するということです。
働き方改革とリモートワーク
リモートワークの普及により、育児中に思うように働けずにやむなく退職に追い込まれる労働者の減少につなげられたり、地方に移住し退職を検討している優秀な労働者を引き留められたり、現在地問わず労働者を採用できたり…といったメリットが考えられるでしょう。現に政府は、働き方改革の一環として「お試しサテライトオフィス」の取り組みを推し進めようとしています。
リモートワーク先進国のアメリカ企業が、生産性向上が難しいことを理由の一つに廃止する方向に舵を切るところが出てきたのと相反して、日本では政府主導でリモートワーク普及の方向に進んでいます。
意識変革こそが働き方改革のカギ
リクルートや日産自動車では、全社員がリモートワーク制度を利用できるようになっています。リクルートでは個人情報・機密情報を扱う時はオフィスへ出社することが条件とし、情報流出のリスクを減らす工夫がされ、日産自動車ではオンラインでリモートワーカーとオフィス従業員とをつなぐシステムを活用し連携を取るようになっています。
リモートワークは育児・介護と仕事の両立を図りながら生産性向上につなげていけるかが定着のカギとなります。厚生労働省が2017年5月に発表した男性育児休業の取得率は3.16%。前回調査から0.51%の上昇で初めて3%台に乗ったものの、政府の掲げる目標「2020年度までに男性育児休業取得率13%」にはまだ遠い現状で、男性と女性とが互いに意識変革をする必要性があるといえます。
レッドフォックスでは、2016年5月から、育児・介護などの理由で毎日の出社が難しい労働者に対し、リモートワークを6ヶ月間を上限に認める制度を開始。早速男性エンジニアが本制度を活用しているといいます。法律で取得可能とされていても、社内風土として「男性が取りづらい」といった“パタハラ”のようなことが行われていれば、いくらリモートワークを取り入れようとしても真の働き方改革にはつながらないことは間違いありません。
取り入れ方によって、生産性向上につながる可能性を多分に秘めているリモートワーク。机上の空論で終わらぬよう、企業はもちろん、各人の意識変革こそがリモートワークの定着、地方創生へのカギとなるのです。