ここ10年の間に、自分は首都圏など都市部で仕事をしており、地方で離れて暮らす両親の介護を続ける人が非常に増加しています。高齢化社会が進む日本の社会で多くなってきているライフスタイルですが、介護と仕事を両立させていくには何が必要なのでしょうか。事前に準備すべきポイントを見ておきましょう。
1.急な入院などに備える 資産の話をする必要性
両親の介護が必要になった人によく聞く話は「だんだんじわじわとではなく、ある日突然病気や怪我で入院が必要になった」という話です。特に両親が70代後半になると、日ごろ元気でいたとしても、急に倒れる、転んで怪我をする、などということがより起こってしまう怖れがあります。あなたはそんな時の備えができているでしょうか。おすすめは、両親が元気なうちに、一度急な入院や病気のときの費用の準備はあるのかどうか、資産はどのように整理されているのか、話し合っておくことです。
確かに言い出しにくい話題ですが、本人が倒れてしまった後だと何がどこにあるのかが分からない状況になってしまいがちです。まずは急に必要になるお金についての話し合いから始めてみてはどうでしょうか。いざ入院となると、医療保険に入っているのかどうかも確認が必要ですし、20日程度の入院で個室を希望するとなると、自己負担は30万を超す場合がほとんどです。銀行からお金をおろす必要も出てきますので、できるだけ話をしておきましょう。
そして、できれば預貯金の整理などの話をしておくとよいでしょう。多くの口座に分散させて多数口座を持っている人もいます。あくまで両親の希望を聞きたい、心配だから把握しておきたいという気持ちを伝えていくことが大切なポイントです。
2.自治体のサポート体制を調べておく
また、介護保険だけではなく、厚生労働省が「家族介護支援特別事業」として定めたものを、各自治体の判断で支援金制度などの支援を行っている制度もあります。ただし、自治体によって取扱い内容や条件が変わってきますので、両親やあなたの住んでいる地域の福祉課などを調べておきましょう。
例:家族をねぎらう支援金、「介護奨励金」「介護支援金」
・対象者:要介護3以上の高齢者を半年以上自宅で介護している人(自治体によっては市民税非課税世帯も条件)
要介護者がいる家族の金銭的負担を減らし、日頃の介護をねぎらう目的で現金が支給。
・対象者:要介護4以上、または重度の認知症高齢者の介護にあたっている人など。
介護用品(紙おむつ、尿とりパッド、ドライシャンプー)にかかる費用を支給。
3.自分やパートナーの会社の支援体制を調べる
育児・介護休業法によって、法律で1人につき通算93日までの介護休業をすることができますし、年5日までの休暇も認められていますが、それにプラスしどのような支援制度があるのかは企業ごとの規定によります。全社員の1割から2割は介護に携わるというような時代がもう来ているので、年間100時間までヘルパー利用料を会社が負担する、介護目的の有給休暇の大幅繰り越しなど、大手企業では仕事と介護の両立を支援する制度を続々と取り入れています。
国の方針もあり、今後は中小企業にもその波は広がっていくでしょう。できる限り離職するのではなく、ある制度を利用して賢く続けていけるよう、自社にどんな制度があるのか、詳しく就業規則を調べておきましょう。また、1人で抱え込まずに、社内や健康保険組合窓口などに相談をすることもおすすめです。さらに、介護が理由の離職者の再雇用も今後もっと進んでいくと予想されますので、一旦辞めたとしても、あきらめずに再度相談してみる姿勢も大切です。
4.地方との行き来の費用を把握しておく
最後に、両親の世話や看護に実家と現在の家を行き来する交通費も意外と馬鹿になりません。医療費や介護の費用は両親本人が基本的に負担する家庭が一般的にはほとんどだということですが、自分たちが往復する交通費については負担が必要になります。あなたの実家が遠方の状況なら、航空会社は介護支援の運賃を設定している場合がありますので、活用できるとよいでしょう。また、両親が70代などある程度の年代になったら、いざというときのために、数十万円はすぐに動かせるお金を準備しておくほうが安心です。 このように、いざというときのために、調べて準備しておけることはたくさんあります。一番大切なのは、手助けが必要になったら両親がどのように生活していきたいのか、なるべく希望を聞きつつ、現実的な選択肢の中で折り合いをつけていくことでしょう。そこを理解してもらい、両親や兄弟と話し合う機会を早目に持てると一番よいですね。