「働き方を考えるカンファレンス」で見えた「働き方改革の本質」とは
西村 創一朗
2017/03/22 (水) - 08:00

2017年2月15日、虎ノ門ヒルズフォーラムにて様々な分野におけるトップリーダーが一堂に会して「働き方」について考える『働き方を考えるカンファレンス2017』が開催されました。500名超の方が集まり、非常に熱気に満ちた空間で交わされた議論を通じて見えてきた「働き方改革の本質」に迫ります。

「日本人は本当に働きすぎなのか?」

「働き方」にまつわる数多くのセッションのうち、筆者が登壇させて頂いたのは「日本人は本当に働きすぎなのか?」というテーマでのセッションでした。

世の中全体が「長時間労働は悪である」と長時間労働是正の流れが進む中、そもそも本当に僕らは働きすぎなのか?という根本的なテーマについて、元AERA編集長の浜田敬子氏の司会進行の元、経済学者の竹中平蔵氏や、少子化ジャーナリストの白河桃子氏、そして本フォーラムを主催された一般社団法人at Will Workの顧問を務める株式会社パースペクティブメディアの小口日出彦さんと共に、45分に渡りディスカッションさせて頂きました。

詳しい議論の内容はこちらのレポート記事をご覧いただければと思いますが、「労働時間を考える前提として、働く人間の意思と職種を考慮しなくてはならない。時間で測ることのできるものと、そうでないものがある」(竹中氏)、「仕事が生きがいという人もいるが、生活の糧として働いていければよいという人たちも守られるべき。」(白河氏)、「働きすぎかどうかは自分で判断すべき。働き方は、自分で選ぶ。働かないという選択さえあっていい。」(小口氏)など、皆さん共通していたのが、画一的に「あるべき働き方のカタチ」を決めて押し付けるのではなく、多様な価値観、多様な働き方を認め合うことの重要性を、皆さん口を揃えて、繰り返しお話しされていました。

ポジティブに働く人が世界一少ない国、日本。

「自ら望んで働いている人、時間を惜しまず働いている人がいるのだから、上限規制をかけるのは如何なものか」という主張は、とても良く分かります。画一的な上限規制で、「働く人の意欲を削ぐ」ようなことがあっては本末転倒ですよね。 一方で、そのように「ポジティブな長時間労働」ができている人はごく僅かである、という現実にも向き合わなければいけません。
仕事に対してポジティブに取り組んでいるかどうかを測る指標としてエンゲージメント(社員の企業に対する関与の度合いと、仕事に対する感情的なつながり)というものがありますが、タワーズワトソンの「2014年グローバル労働力調査」によれば、日本でエンゲージメントレベルが高い社員は5人に1人(21%)にとどまるのに対して、エンゲージメントレベルが非常に低い社員は2人に1人(45%)にも上ります。ちなみに、世界平均は、エンゲージメントレベルが高い社員は日本の約2倍(40%)、エンゲージメントレベルが非常に低い社員は日本の半分(24%)です。
日本のエンゲージメントレベルの低さは世界屈指(調査対象国26カ国中、8年連続最下位)という現実。さらには、長時間労働が祟って心身を壊してしまったり、最悪の場合、過労死・過労自殺に至ってしまう人が後を絶たず、この問題は「待ったなし」で解決しなくてはなりません。

今こそ「自分の時間」を取り戻す時。

ただ「もっと働きたい人」と「もっと働く時間を抑えたい人」を単なる対立軸にしても、問題は解決しません。
「長時間労働」そのものが悪なのではなく、心身の健康を脅かす「望まない長時間労働」が「魔物」なのです。
そう考えると、答えはとてもシンプルです。
「望まない長時間労働」をなくし「働きたい人だけがたくさん働く」状態をつくる方法を考えれば良いのです。
そのためにまずやるべきは「長時間労働」をなくし、自分で自由に使える時間(可処分時間)を増やすこと。
その上で、自分の時間をどう使うか?は個人の自由です。家族がいる人は家族と過ごし、趣味がある人は趣味にどっぷり浸かったり、学びたいテーマがある人は勉強したり、そしてもっと仕事を通じて自己実現したいという方は仕事に取り組むなど、自分の時間を自分の心が赴くままに使える状態が、最も望ましい状態です。

会社の枠にとらわれずに働く「パラレルキャリア」という発想を。

「労働時間の上限規制」によって、「望まない長時間労働」をなくした上で、「もっと働きたい!」という人は、自分の時間を自分の意志で仕事に投資する。こんな話をすると、「会社がこれ以上働いちゃダメだっていうのに、どうやって働けばいいの?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、「はたらく場所」は会社以外にもたくさんあります。
あなたの力を必要している人は、会社以外にもたくさんいますし、キャリアアップのために必要な経験・スキルは、社外でもいくらでも身に付けることができます。

会社の枠に捉われずに、自分の好きなこと、得意なことを活かして、誰かの困りごとを解決したり、役に立つこと。そうした営みを通じて、自分自身が 「自分らしくイキイキと暮らす」こと。これが本当の意味でいま私たちに求められている「働き方改革」の本質だと思っています。そして、本来「働き方」は誰かが変えてくれるもの、与えてくれるものではなく、自ら考え、自ら変えられるものです。
現在、政府は時間外労働の上限「年間最大720時間・月平均60時間」の導入を検討しているという状況にありますが、「労働時間の上限規制」を単に「制限・ブレーキ」と捉えるのではなく、「自分の時間」を取り戻すチャンスと、ポジティブに捉える方が自分にとってプラスになるはずです。
「もし、100時間自由に使えるとしたら、何をしますか?」
自分はどんな人生を過ごしたいのか。それを実現させるために、どんな働き方が理想なのか。自分の頭で考えて、まずは昨日より1分早く帰ってみること。できた時間を、やりたいことのために使ってみること。「あなた自身の働き方改革」は、もう既にはじまっているのです。

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