「パラレルキャリア」とは、一般的には会社勤めをしている方が、その本業以外に報酬を目的としないボランティアなどの活動を行うことを指しますが、今回は独立起業してからの「パラレルキャリア」について考えてみましょう。
副業や複業は、本業に支障をきたすのか
働き方改革や多様な人の活躍を目指し、会社員の副業や複業を認める企業も少しずつではありますが増えてきています。「パラレルキャリア」と称されるように、会社員としての本業以外に報酬を目的としないボランティアに関心をもち、実際に活動していらっしゃる方もいるでしょう。その関心ごとは、学生時代から興味をもっていたことであったり、会社員として働いているうちにやってみたくなったことであったり、将来的なキャリア形成の一環とされる方もいます。また、2011年に起こった東日本大震災を境に自身の人生を振り返り、ボランティアをはじめ、世の中の困った方々の手助けがしたいという思いが高まって、社会貢献活動に従事している方もいらっしゃいます。
このような動きに対し、副業や複業は本業に支障をきたす可能性があるので全面的に禁止とされる企業も少なくありませんが、本当に問題ばかりなのでしょうか。昨今のビジネスの中では、異業種のコラボレーションが話題をさらうことがあるように、従来にはなかったような発想は、ずっと同じ環境に身を置いているだけでは生まれません。
企業に勤めながらも、たとえば異業種の方々との出逢い、会話、交流から思わぬアイデアが創出されたり、一見本業とは関係のないボランティアの活動が本業に良い影響を与えたりすることは、珍しい話ではなくなってきました。
少なくとも、本業から離れて「自分のやりたかったこと」、「自分の好きなこと」で始める活動は、そのことがあるだけで日々のモチベーションが上がるのならば、十分な価値があるとも言えるのではないでしょうか。
フリーランス人材の増加
ランサーズ株式会社の「フリーランス実態調査2017年版」によると、2017年の日本における広義のフリーランス人材は1122万人(*1)に達したとされ、「自分の能力を生かして働きたい」と考える人が年々増加しています。この調査のなかには、すきまワーカー(副業)やパラレルワーカー(複業)も含んだ結果になっているのと、2016年の結果と比較すると副業系すきまワーカーが急増しているということなので、この流れはデータとしても明らかになっています。働き方改革、女性活躍、そして終身雇用の崩壊などを自分ごととして捉えている方は、このような時代背景を理解し始めています。
企業や団体などに所属している状況よりも色々な面で守られていることが少ない独立起業。 しかしながら、前述のような企業を本業として別の活動をすることとは違い、独立起業をしてもなおパラレルで仕事をする方もいます。
これは、本業で自身の会社をもちつつも、NPOや一般社団法人、地域コミュニティ、趣味や嗜好、志を共にする有志コミュニティなどへの参画をする、「独立してからのパラレルワーカー」の方々です。
社会保障や仕事や労働に関する契約ごとなど、いわゆる会社員とは別世界であることが多くある独立起業。本業を軌道に乗せることも大変な時期に、「ほかの活動をするなんて出来ない」という声もあります。
しかし、そのほかの活動が、自身が立ち上げた「本業の理念」と一致するのであれば、積極的に関わることをお勧めしたいと思います。その理由としては、フリーランス実態調査(*1)にもあるように、仕事の経路としては「人脈」が一番多いからです。
独立起業家としてのパラレルキャリア
独立起業をするということは、自身の「好きなこと」「得意なこと」「やってみたいこと」などの動機があって始める方がいる一方、起業初期から「収入を上げること」を目的にされる方もいらっしゃいます。どちらが良いかという視点ではなく、両方が一度に実現できたら何の問題も、不安もないのですが、そのようなケースは現実には多くはありません。
自身の能力を生かす仕事のほか、経理的な業務、営業、ホームページやSNSの更新など、現状を目の当たりにして、「本当はやりたくない仕事だけど、ほかの方が勧めてきたから」と、途中で事業の軌道を変えてしまう方もいます。
このこともどちらが良いかという視点ではないのですが、いずれにしても自身が満足する結果や現状となれば良いのです。しかし、もし後者の場合のように、「本当はやりたくない」という思いが消えないようであれば、独立起業をしようと思った原点に立ち返る必要があるかもしれません。その原点とは、「何のために自身は独立起業したのか」という理念です。
この理念さえぶれなければ、独立してからの本業であっても、複業であっても、一見遠回りに見える活動が、実は本来やりたかったことに繋がっていったり、志を同じくする人との出逢いとなり、強力な応援者になっていったりするので、独立してからのパラレルキャリアもとても大切な活動になるのです。