「フラリーマン」急増中? 働き方改革は夫婦の「意識改革」
浅賀 桃子
2017/11/29 (水) - 08:00

「フラリーマン」という言葉をご存知でしょうか。NHKニュースで2017年9月に放送されたこともあり話題になりましたので、聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。デロイトトーマツの調査では7割以上の企業が推進しているとされる「働き方改革」の裏で、急増している「フラリーマン」についてご紹介します。

フラリーマンとは

「フラリーマン」は、社会心理学者の渋谷昌三さんが2007年、著書の中で名付けたことから誕生した言葉です。家庭を顧みずにいたことから家庭内での居場所が失われ、ふらふらするサラリーマンの姿からつけられたこの名称ですが、各企業による働き方改革を推し進める動きとともに、フラリーマンの背景も変わってきています。

政府は働き方改革において、罰則付きの残業上限規制の導入を検討していると報じられています。大手広告代理店の過労自殺問題が広く話題になったことも手伝い、各社で長時間労働の是正が進められつつあります。労働時間の管理が厳格化され、残業時間の削減が顕著な企業もみられるようになりました。

しかし、せっかく残業時間が減り早く家に帰れるようになっても、あえて帰らずに喫茶店やパチンコ、ネットカフェなどをふらふらし、残業して帰るときと同じ頃まで時間をつぶす男性が増えてきている…このような男性のことをニュース内で「フラリーマン」として取り上げられていたわけです。

ではなぜ彼らは家にまっすぐ帰らずに「フラリーマン」化するのでしょうか。

フラリーマンが急増するわけ

朝日大学マーケティング研究所の調査では、子どもと同居している既婚男性の平均38.2%が仕事帰りに寄り道してから帰宅しています。子どもと同居していない既婚男性の平均(28.3%)よりも多い結果になっています。

「子どもが小さいとどうしても子ども中心に家庭がまわるため、居心地が悪い」
「仕事で疲れているから、子どもの世話をする前に気分転換として一人の時間が欲しい」
「これまで残業で遅く、子どもの世話をしてこなかったから、帰っても足手まといになりそう」

代表的な男性側の「帰れるのに早く帰らない」理由は上記です。
NHKニュースで報じられた際、フラリーマンについて意見を求められた母親は「子育てに休みはないのに許せない」と反発していました。インターネット上でも「育児を押し付けて寄り道するのか」「子どもが小さいので猫の手も借りたいくらいなのに、逃げているようにしか見えない。私は外に逃げることができないのに」と、次々に非難の声があがっています。

「夫が毎日遅く帰るのは仕事だから仕方がない」と我慢していた女性側が、実は仕事ではなくふらふらしているだけだったと知ったときの失望、怒りを想像することはたやすいでしょう。もちろん「私にも一人の時間が必要だから」と理解を示す女性もいらっしゃるのは事実ですが、みんながみんなそういう考えではないことに思いを巡らす必要があるでしょう。

真の働き方改革実現のために

月末の金曜日の退社時間を午後3時に繰り上げ、土日合わせ2.5日の休みを家族との買物や外出などの時間に使ってもらうことを想定した「プレミアムフライデー」が2017年2月24日にスタート。この施策も、働き方改革の一環で始められたものです。しかし今のところ、「無理やり午後3時に上がったとしてもカフェなど別の場所で仕事をしないと終わらない」「ほかの日にしわ寄せが来るから意味がない」さらには「3時に終わってもそのあと何をしたらよいかわからない」といった声も聞かれます。

夫側もこれまで「残業して頑張るほうが評価される」ような職場環境だったかもしれません。それが政府の施策により急に「残業せずに仕事の効率化を図れ」という話になり戸惑っている、という声もあり、その気持ちを妻側もくみ取る努力が必要になるでしょう。

さらに「退社してからの家族の時間を夫婦でどのように使うか」について、夫婦間でしっかり話し合うことが必要です。夫側が「早く帰りたくない」と思う理由や、妻側が求める夫の家事分担内容などをお互い伝えることなく、不満を抱えている状況を筆者も仕事柄よく見聞きします。

働き方改革の目的の一つは、長時間残業せず効率よく仕事を行い、夫婦で家事育児を適切に分担し子育てしていくことです。仕事を両立して働ける社会を目指す目的があるわけですが、先述の「早く帰ると逆に足手まといになりそう」という夫側の発言からは、未だに家事育児の大半を妻側が担い、結果職場復帰が難しくなる・望まない時短勤務を余儀なくされるなどの現状が見え隠れします。働き方改革の趣旨を実現するためには、フラリーマンを生み出さない夫婦の「意識改革」が不可欠といえます。

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