人は生活しているときにさまざまな感情をもちますが、そのなかには長くもっていると“健康に害を与える感情”と、それを感じると“健康に役立つ感情”があります。今回は、感情が及ぼす健康への影響や、より健康的に生活するためにおすすめしたい1日1回の方法を紹介します。
健康に悪影響を及ぼす感情
そもそも感情とはなぜ起こるのでしょうか。人は外からのさまざまな刺激を受けたとき、何かを見たり、聞いたり、触ったり、臭いを嗅いだり、味わったり、というような自分のフィルターである五感を通して物事を認識します。
その際に脳内で神経伝達物質という物質が放出されて脳内ネットワークにその情報が伝わり、感情が起こります。みなさんも、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの伝達物質の名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
さまざまな感情のなかで、身体の中に悪影響を及ぼす感情は、怒り、悲しみ、不安、罪悪感などのマイナスな感情です。ただし、これを感じることが悪いわけではないので、そこは間違えないでください。人が何か物事を体験したとき、こういった感情を起こす、つまり脳内伝達物質を放出することは、その体験の衝撃を和らげたり戦うなどの行動を促進したりする働きがあるので必要なものです。しかし、ずっと長期間その感情をもち続けていると、心身の健康に悪い影響が出てくることが研究でも明らかになってきています。
たとえば、激しい怒りをずっともち続けていると、心臓に大きな影響を及ぼし、心筋梗塞などの引き金になりやすいといわれていますし、強い罪悪感をずっともち続け思っていることがいえないという人は、コルチゾールという物質を増やしてしまい、こちらも心疾患やガンなどに影響があるといわれています。そういったマイナスの感情は周囲や人間関係にも悪影響を与えますが、同時に自分自身の心身にも大きな影響を及ぼすのです。
どう対処したらよいか
では、どのようにすればよいのでしょうか。マイナスの感情をもたないようにしよう、ということではありません。まず、受け止めることは必要です。怒りや悲しみ、不安、罪悪感、葛藤などが襲ってきたら、「そう思っているんだね」とまずは認めて感情に浸ってみてください。その後のおすすめの方法は、1日1回、その日に思ったことを全部書き出してみることです。嫌なことでも、ネガティブな言葉でも何でも構いません。日記だと思って1日15分でよいので、思ったことを書いてみましょう。そうすると、自分の中にマイナスな感情が貯まっていかず、吐き出すことになるので気持ちが落ち着き、その感情から離れやすくなります。
また、深呼吸や姿勢を変えることも気持ちを落ち着かせ、激しい感情から一旦別の場所に行くことが可能になる簡単な方法です。マイナスな感情をまずは認めた後、大きく息を吐いて、吸って、を6回以上繰り返しましょう。吐くときは、「1,2,3,4,5,6」とゆっくり6つ数える、吸うときはあごを上げて上を向きながら「1,2,3,4」と4つ数えるとよいでしょう。両手を大きく上げながら吸うのも、マイナスな感情から離れるには役立つ方法です。
よい影響を与える感情
次に、健康によい影響を与える感情をみていきます。よい影響があるのは、喜び、楽しさ、幸福感、安心感、感謝などのプラスの感情です。こういった感情も、先ほどと一緒で、何か物事の刺激を体験したときの脳内伝達物質の働きで起こります。たとえばセロトニンなどは、多く出ると、幸せ感や安心感が増す物質として知られています。
特に、健康によい影響を与えるおすすめの方法は、他の人や物に対して感謝の気持ちを抱くことです。「感謝」の気持ちを感じると、人はオキシトシンというホルモン物質を分泌し、自律神経等の健康維持の機能に大きなよい影響を与えることが化学的にもわかってきています。自律神経によい影響がある、ということは、特に免疫系へのプラスの働きがありますので、風邪を引きにくくなり、疲労感なども少なくなります。みなさん自身も、誰かに対して「ああ、ありがたい」「感謝したい」と思うと、胸の中で何かが熱くなるなど何か感じるものがあるのではないでしょうか。それは、実際に物質が放出されているからなのです。
先ほどは、1日1回思ったことを何でも書き出してみましたが、それに続けて、その日どんな人、どんなこと、どんな物に感謝したいか、すべての感謝する人や動物や物を書き出し、それらに感謝の言葉を1日15分伝えてみてください。人間が感謝の気持ちを感じると、その効果は6時間持続する、ということも研究がなされています。夜、眠りに就く前に、感謝の気持ちで寝ると、より睡眠中のホルモン分泌を促進するでしょう。
やり続けることは、非常に健康によい、おすすめの方法です。みなさんも、ちょっとしたことで健康を改善できるこのやり方、試してみてはいかがでしょうか。