2017年2月24日より「プレミアムフライデー」がスタートしました。原則毎月末金曜日の退社時刻を午後3時に繰り上げることを推奨するというもので、金曜日の夕方から日曜日まで満足度の高い週末を過ごす目的で行われるイベントです。アメリカで11月の第三木曜日、感謝祭の翌日に行われている「ブラックフライデー」という年末商戦がモデルとなっており、買物や外食、旅行など幅広い分野の消費活動を促すことが主な狙いとされています。同時に、働き方改革などを進めることも想定されています。
プレミアムフライデーの想定効果
経済産業省のウェブサイトによると、「あるシンクタンクの試算によると(プレミアムフライデー導入により)1日当たり1,200億円くらいの経済効果があるのではないか」とのことで、経済効果の高まりやGDP向上などが期待されています。週末が約2.5日に伸びることから、レジャー、旅行業界には追い風になる可能性があるでしょう。
ただし、プレミアムフライデーは強制ではないため、賛同する企業数は未知数といえます。先述の「1,200億円」の消費拡大見込はあくまで“あらゆる企業が賛同した上での試算”であり、「大企業のみの実施なら約10分の1の経済効果になる」ともされています。
プレミアムフライデーにて懸念される点
プレミアムフライデーは月末の金曜日ということで、初回の2月24日は給料日と重なった方もいらっしゃったでしょう。給料日で懐が温かいので消費拡大につながる…とばかりはいかなかったようで、逆に月末は業務が集中するなど「3時どころか定時にも仕事が終わらなかった」という声も散見されています。
以下で、代表的な懸念点・課題をご紹介しましょう。
・日々の労働時間削減が先決
月末の金曜日に午後3時上がりができたとしても、他の曜日にその分の業務のしわ寄せが来るようでは「形だけの制度」になってしまいます。むしろ「他の曜日の長時間労働での疲れをゆっくり自宅で取りたい」と考える人が増えてしまう可能性も否定できず、消費拡大・働き方改革といった制度の狙いが薄れてしまう懸念があります。普段から残業が当たり前になってしまっているような企業の場合特に、月末の金曜日だけでなく日々の労働時間削減を考えていく必要があるでしょう。
・実施は「強制」ではなく、チェック機能もない
先述の通りプレミアムフライデーの実施は現状「奨励」のレベルにとどまり、「強制」ではありません。プレミアムフライデー公式サイト(※1)によると、2017年3月14日現在のプレミアムフライデーロゴマーク申請企業数が5,478とのことです。あくまで「ロゴ申請企業数」のため正確な実施企業数とは異なりますが、まだまだ認知度は「これから」というのが現状ではないでしょうか。別の調査(※2)でも、「プレミアムフライデーを実施する」と回答した企業の割合はわずか2.5%という結果になっています。
つまり、いくら自分の会社がプレミアムフライデーを導入しても、取引先は導入していないということは十分考えられます。このようなケースでは、「取引先から仕事の依頼が通常通り来てしまう」という懸念はぬぐえない状況です。また、どのような形で各企業内に取り入れていくか、運用上の業務整理などのチェック機能、導入していない企業への罰則なども現状ありませんので、制度を導入しても活用されなくなってしまう恐れもあるでしょう。
その他、「労働力が不足している中小企業での導入は困難」「飲食業や宿泊業では逆に仕事量が増える」といった見方もあり、「恩恵を受けるのは大企業と公務員だけなのでは」といった厳しい声も聞かれています。
「働き方改革」が肝心
政府が強く推し進めようとしている「働き方改革」。少子高齢化を見据えた労働力の確保として、女性や高齢者が働きやすいような職場を作ることや、長時間労働の是正、労働生産性の向上などが政府の「働き方改革実現会議」におけるテーマとして挙げられています。
長時間労働の是正は世界的にみても取得率が低い「有給休暇」の問題にも直結してきます。時短勤務や在宅勤務、隔日出勤など、これまで以上に柔軟な働き方を企業が認めることにより、労働力の確保や仕事の効率化などを進めることが望まれます。「最適な働き方で組織と個人の生産性を最大化する」ことを目的とした新たな人事制度を導入する企業(※3)も出てきています。
プレミアムフライデー制度はまだ始まったばかり。形骸化するか、日本の企業に根付いたものになるかは、「働き方改革」が進むかどうかにかかっているといってもよいでしょう。ビジネスパーソンの皆様も、これを機に自身の働き方、ライフスタイルの見直しをしていかれることをお勧めします。
※1 プレミアムフライデー
https://premium-friday.go.jp/
※2 「プレミアムフライデーを実施する」職場、わずか2.5% ITmediaビジネスオンライン 2017年2月23日
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1702/23/news126.html
※3 新たな人事制度の導入により働き方改革を推進 ソフトバンク株式会社 2017年2月13日
http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2017/20170213_01/