副業を超える「多業」とは 地方での拡がりの可能性
浅賀 桃子
2017/07/24 (月) - 08:00

多様な働き方を認める「働き方改革」。本業に加えて仕事をする「副業」を認める企業も増えてきています。そのような中、特に地方を中心に3つ以上の仕事をかけ持つ「多業」(マルチワーク)が注目されています。「多業」とはどのような働き方なのか、なぜ地方での拡がりの可能性があるのかについて取り上げます。

多業とは

「働き方改革」がピックアップされるにつれ注目されるようになったかに思える「多業」という言葉ですが、実は新しい考え方ではありません。国土交通省の国土審議会計画部会ライフスタイル・生活専門委員会がまとめた「NPO活動を含む「多業」(マルチワーク)と「近居」の実態等に関する調査結果について」(※)に多業という言葉の定義がされていますが、この調査結果が出されたのは働き方改革が叫ばれる10年ほど前、2006年のことなのです。

上述の調査結果によると、多業とは「1つの“仕事”のみに従事するのではなく、同時に複数の仕事に携わる働き方を指すもの。ここでいう“仕事”とは、収入を得ることを目的として働いているものだけではなく、収入を伴わないボランティアやNPOの活動なども含めています」とされています。いわゆる「副業」が、本業に加えて“収入を得るために”行う仕事なのに対し、多業の場合は収入の有無は問わないことが違いとなるでしょう。

多業人口の現状推計と地方での動き

上述の調査結果によると、多業とは「1つの“仕事”のみに従事するのではなく、同時に複数の仕事に携わる働き方を指すもの。ここでいう“仕事”とは、収入を得ることを目的として働いているものだけではなく、収入を伴わないボランティアやNPOの活動なども含めています」とされています。いわゆる「副業」が、本業に加えて“収入を得るために”行う仕事なのに対し、多業の場合は収入の有無は問わないことが違いとなるでしょう。

多業人口の現状推計と地方での動き

先述の調査によると、2006年当時で多業人口はおよそ1,240万人とされています。対20歳以上人口に占める割合は12%でした。調査を行った国土交通省では、多業人口が2020年には2,100万人(同20%)、2030年には2,440万人(同25%)まで増えると推測しています。この推測値には「潜在的な多業人口(会社で兼業禁止などの制約がないなど、多業顕在化の可能性が考えられる層)」も半数程度含まれています。

この「多業」、実は地方での拡がりの可能性を秘めています。北海道石狩市では2017年度より初めて、多業(マルチワーク)の実証実験を行うことが発表されました。市内でも労働力確保が特に難しい地域をモデル地域に定め、果樹園及び民泊における就業体験を夏休み期間中のインターン学生に対し実施することで地域労働力を確保することを目的にしています。人手が必要、かつ時期の異なる短期的な仕事を組合せる「マルチワーク」が、その地域での長期的な雇用を生み出せるのではないかという期待がされています。

その他、地方で効率的に収入を増やすためには、複数の仕事を組みあわせることが大切です。逆に言えば、複数の収入源の見通しが建てられれば、地方移住も成功しやすいともいえるでしょう。

地方移住の成功に欠かせない複数の収入源

地方移住を考える際に一番ネックになりがちなことに「年間を通じて仕事が得られるのか」ということがあげられます。たとえば農業の場合、旬のシーズンは人手不足になりますが、季節によっては手が空くことも多いでしょう。漁業の場合も同様で、海が時化る冬の時期は仕事ができないことも出てくるでしょう。農業だけ、漁業だけに「専業」してしまうと、仕事が多い時期、少ない時期とバラつきが出てしまうわけですが、その部分をうまく補いうるのが「多業」の考え方と言えます。

大阪NSC(吉本興業)所属の芸人コンビ「せんのりきゅう」は、2017年4月に京都府京丹後市へ移住し、「きょうと半農半芸芸人」として活動をしています。芸人としてラジオ番組に出演したりデパートでの営業を行ったりしながら実際に農作業も行い、その様子をホームページ上で発信しています。このような「半農半X」といった形が、今後増えていくのではないかと思われます。Xのところには、その人にとっての生きがいになりうる仕事や活動を組み合わせることになります。会社員が週末に行うことも場合によっては可能ですし、島根県のように「半農半X推進シンポジウム」を開催するなど、自治体をあげて半農半Xスタイルの実践を支援するところも出てきています。

「人口流出が進み、高齢化が進行する地方」とくくられがちですが、地域の課題はその数だけ存在します。それぞれの地方での課題を把握し、需要を掘り起こすことが大切ですが、多業においては複数の仕事をする中でその地域を広く理解することに繋がる利点があります。課題が多いとされる地方ですが、課題を解決するためのビジネスチャンスにつなげられる可能性を秘めているともいえるのです。

※NPO活動を含む「多業」(マルチワーク)と「近居」の実態等に関する調査結果について 国土交通省 2006年6月14日
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/02/020614_2_.html

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