注目される副業・複業、押さえておきたい人事労務関連規則
浅賀 桃子
2017/06/02 (金) - 08:00

少子高齢化による労働力不足を補うため、政府が推し進めている「働き方改革」において注目を浴び始めている副業・複業(以下副業)。これらを容認する企業も増えつつあり、独立を考えている方、副収入を得たい方など、関心を持つ方が増えています。ただ、実際に副業をするにあたっては、事前に押さえておきたい人事労務関連の規則があります。注意すべき点等をまとめてご紹介します。

副業のパターン

副業は、「複数の企業に属する」パターンと「所属企業は1か所+個人で副業」するパターンとに分けることができます。
複数の企業に属するパターンの代表的な形は、正社員として企業で働き、副業として他社のパートアルバイト、派遣社員等で勤務するというものです。中には、本業も副業も両方パートアルバイトという場合もあるでしょう。
一方、所属企業が1か所の場合、副業をFX、アフェリエイト、クラウドソーシングなどを活用するなど、企業に属さずに個人で行うケースが考えられます。

法定労働時間と残業代の考え方

複数の企業に「雇用」されるパターンの副業を行う場合、法定労働時間と残業代の考え方に注意が必要です。

ご存知の方も多いかもしれませんが、労働基準法で定められている「法定労働時間」は1日8時間・1週40時間です。これを超えたら割増賃金(いわゆる残業代)の支払が必要になります。
それでは、複数の企業で雇用される場合で考えましょう。
Xさんは、A社で9時から18時まで1時間の休憩をはさみ実働8時間勤務した後、B社で20時から23時まで3時間働きました。A社・B社それぞれの会社でみれば法定労働時間以内におさまってはいるものの、Xさん個人としては8時間+3時間=11時間の勤務となり、前述の1日8時間の法定労働時間を超えていることになります。この場合、企業は残業代を払わなければならないのです。

なおこの場合残業代を支払うのはA社かB社かについては考え方が2つあります。行政通達内では「後で働く会社」、すなわちB社に支払の義務が発生するとしています。一方、「後で契約した会社」に支払の義務が発生するとする考え方もあります。つまり後で契約した会社は、他の企業ですでに働いていることを知っているはずだから、ということです。実務上どちらで行うべきか判断が難しいところであり、現状、法の解釈が曖昧になっていることは否めず、今後の法整備に期待したいです。

社会保険や年金、所得税、労災保険の考え方

続いて、社会保険や年金、所得税、労災保険の考え方についてです。

<社会保険・厚生年金>
社会保険・厚生年金に加入するための要件(※)は以下の通りとなっています。
・週30時間以上働く方(必須)
・週20時間以上働く方(従業員数501人以上の会社必須、労使合意があれば500人以下の会社でも加入可能)
・月収88,000円以上
・年収106万円以上
・雇用期間1年以上

2016年10月より加入要件が緩和され、「パートでも加入義務となった」といった声が聞かれるようになりました。すなわち、副業先でも加入対象になるケースが増えることになります。
両方の企業で加入要件を満たす場合は、どちらの企業かを選択し、選んだ企業の年金事務所で手続きをし、各企業の収入先に応じた保険料として按分された額が給与控除されることになります。

<所得税>
本業の会社では「甲欄」という扱いとなり確定申告は不要ですが、副業先の会社では「乙欄」という扱いになり、確定申告が必要になりますので注意が必要です。

<労災保険>
問題になりがちな点を先述のXさんの例をもとに考えてみます。
XさんがA社の業務を終え、B社に移動する際に通勤災害にあった際は、B社の労災保険が適用されます。
また、労災保険の補償に関しては労働者の平均賃金を元に金額算出されることになります。A社での収入よりもB社での収入が少ない場合は、B社の労災保険で補償される金額も少なくなることになります。一時入院などの程度の軽い災害であればそこまで意識しないかもしれませんが、仮に障害が残るような障害の場合、ずっと支給される障害補償年金の額が少ないままになるというデメリットが発生する可能性があります。

必要な自己管理意識

働き方改革の目的の一つとして、長時間労働の是正が挙げられますが、企業を掛け持ちすることにより結果的に長時間労働になってしまう可能性もあるわけです。「自分の意思か否か」という問題はもちろんありますが、長時間労働でメンタルヘルス不調になったり、長期休職を余儀なくされ労災申請をすることになったり、といったことでは働き方改革の意図するところからかけ離れた結果になってしまうでしょう。上記でご紹介しました点も踏まえながら、これまで以上に労働時間等を自己管理していく意識を持つことが求められるようになるといえます。

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