春からの入社を目指し、転職を考えているという読者の方もいらっしゃるかもしれません。転職を考えるようになる原因とは、いったいどのようなことなのでしょうか。統計データを踏まえてみていきましょう。
職場の人間関係と転職の関係
厚生労働省が5年に一度実施している「労働者健康状況調査」(※1)によると、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスがあると回答した労働者の割合は60.9%となっており、それらの内容についてたずねた調査項目では「職場の人間関係の問題」が男女ともに第1位となっています。男性35.2%、女性48.6%と、男女別にみると特に女性に多くみられています。
さらに同じく厚生労働省の「雇用動向調査の概要」(※2)では、転職者が前職の会社を辞めた理由のランキングが掲載されています。「出向などその他の理由」「定年・契約満了」を除く1位は男女とも「労働条件が悪かった」ですが、女性の2位には「職場の人間関係が好ましくなかった」が入っており、答えた割合もここ数年増加傾向にあります。
これらの統計結果から、職場の人間関係を初めとするストレスが転職の原因として見逃せないことが伺えます。
増加傾向の労働者メンタルヘルス不調
先述の「労働者健康状況調査」からは、メンタルヘルス不調になる労働者の数が増えていることもわかります。過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業または退職した労働者がいる事業所の割合は全体で8.1%(前回調査時より0.5%増加)となっています。全体でみるとまだ少ない印象を持つかもしれませんが、事業所の従業員規模が大きくなるほどこの割合が上がり、500~999人の事業所で77%、1,000人以上の事業所では実に9割を超えています。
企業側も増加傾向にある職場のメンタルヘルス不調の問題を改善すべく、社内外に相談窓口を設置するなどさまざまなメンタルヘルスケア対策に取り組んでいます。とはいえ、皆さんひとりひとりが職場でストレスを極力感じずに働き続けるためには、個人で出来るメンタルヘルス対策もあります。以下で、代表的な対策をご紹介しましょう。
物事の捉え方を変える
同じ物事を体験しても、感じ方は人それぞれ異なるものです。たとえば、ミスをして怒られたときに「あの上司イライラする」と思う人もいれば「私は何でミスばっかりするんだろう」と落ち込む人もいれば、「私のために上司は叱ってくれているんだ、今度はミスしないように頑張ろう」と気持ちを切り替える人もいるでしょう。起こったこと自体は変えられませんが、物事の捉え方は自分次第で変えることができます。メンタルヘルス不調になりづらい人は、ストレスをため込まない物事の捉え方を自然に実践しているものです。
客観的にアドバイスをもらえる存在を複数持つ
筆者も会社員時代、職場の上司とうまくいかずにひとり苦しんでいた経験があります。「自分のことは自分が一番分かっているから、相談しても解決しない」と当時は思っていましたが、たとえその場で解決策がすぐに出なかったとしても気持ちは楽になるものです。さらに、自分では気づいていない部分から、新たなフィードバックがもらえるかもしれません。いろいろな視点からのアドバイスをもらえるためには、相談相手の選択肢を複数持っておくことが望まれます。
人間関係悪化を初めとする職場ストレスは、転職してどこの職場に入っても起こり得る問題と言えます。自分自身でできるストレスをためづらくする対策を並行して行うことで、転職という形以外にも状況が改善する余地ができるかもしれません。
※1 平成24年 労働者健康状況調査 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/h24-46-50.html
※2 平成27年雇用動向調査結果の概要 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/16-2/
(この記事は、2017年3月22日に公開されたものを再掲しています。)