認定NPO法人ふるさと回帰支援センターがまとめた「2020年の移住相談の傾向」によると、2020年の同センターへの移住相談件数（面談・電話・メール）は前年比105％であったそうです。
2020年は新型コロナ感染症の影響を受けて、電話やメールでの相談件数が25％増加し、オンライン相談への移⾏傾向が顕著に表れています。
このように地方移住の希望者はここ数年増える傾向にありますが、反面、うまく行かなかったケースも散見されるようです。今回は、地方移住に「向いている人」と「向いていない人」について解説していきます。
地方移住のメリット
2018年に政府が行ったアンケート調査（東京都在住18～69歳までの男女1,200人）によると、東京都での暮らしやすさとして「交通の便がよい」、「買い物などの日常生活が便利」、「医療・福祉などの施設が充実している」、「レジャー施設や娯楽施設が多い」、「満足できる職場や仕事がある」などが上げられています。
一方、移住・交流推進機構（JOIN）が2018年に行った調査で地方移住のメリットとして挙げられているのは、「山・川・海などの自然にあふれた魅力的な環境」、「子育てに適した自然環境」、「子どもの教育・知力・学力向上」、「都会の生活に疲れた」、「生活コストの削減」などです。
これらのことから、地方移住をしている人たちは都会での暮らしやすさと地方移住のメリットのトレードオフを許容できた人たち、と考えることができそうです。ただしすべての人たちが、このようなトレードオフを許容できるわけではありません。現実的には、地方移住に「向いている人」と「向いていない人」がいることも確認しておきましょう。
地方移住に向いている人、いない人
多くの地方移住経験者、または受け入れる側の意見を総合すると、以下のようなタイプの方が地方移住に「向いている人」と「向いていない人」になるようです。
地方移住に向いている人
・『郷に入っては郷に従う』ことができる人
地方移住に向いている人については、移住した先の慣習や環境に合わせることのできる人ということに尽きるようです。当たり前のことですが、移住先には既に何十年もその土地で暮らしている人たちがおり、その土地特有の風習や人間関係があります。そこにうまく馴染むことができれば、日々の生活にストレスを感じることもなく、まわりから必要な援助も受けられるでしょう。
・地方での収入を確保できる人
これは必須条件かもしれませんが、どこで生活するにしても生活の源となる収入は不可欠です。近年普及した「テレワーク」や「リモートワーク」で収入を確保するか、移住先でも重宝されるスキルが必要になるでしょう。この点を考慮せずに仕事の少ない地域に生活の場を移すことは、移住に失敗する可能性をとても高くしてしまいます。
地方移住に向いていない人
・都会を基準に考えてしまう人
『郷に入っては郷に従う』とは真逆な考え方です。たとえば公共交通機関の少なさや、日常の買い物の不便さを嘆くことは、事前のリサーチ不足以外の何物でもありません。移住してから「都会ではこうだったのに…」など、すべてを都会基準に考えてしまう人は地方移住には向いていないでしょう。
・特殊な持病や難病を持つ人
特定の病院でなければ治療のできない病気や、緊急対応が必要になる持病を持っている人は、医療機関まで遠い場所にある地域での生活は避けた方がよいでしょう。これは言うまでもなく緊急時には命に関わる事態となってしまうからですが、地方においては日常の通院が困難である場合もあります。
・人との関わりが苦手な人
地方移住に関するアンケートなどで、希望する理由に「人間関係に疲れたから」と書く人がいますが、地方では都会より人間関係が濃いことを忘れてはいけません。人の少ない地域ほど、自治のために多くのコミュニケーションが必要になるのです。
地方移住で失敗しないためには？
頭では向き・不向きがわかっていても、すべてのことを事前にシミュレーションすることは不可能です。将来的に地方移住を希望するのであれば「二地域居住」や「二段階移住」から始めてみるのもよいでしょう。
これらは「短期間の滞在から地域の特色を把握する」、「週末だけ生活を地方に移す」、「最終的に移住するかどうかを決める」というステップを経て、地方移住を実現するものです。いきなり地方への移住を決めてしまうのではなく、生活のギャップを徐々に埋めていくのが地方移住を成功させるコツといえるでしょう。
まとめ
もしあなたが「地方移住に向いている人」であったとしても、家族全員がそうであるとは限りません。家族全員での地方移住を考えているのであれば、自分の思い入れだけでなく、また決して押しつけることなく、家族の同意を得てから計画を進めていきましょう。
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