理事会などのある分譲マンションではあまりないことかもしれませんが、賃貸マンションに住んでいる人の中には入居以来隣の住人と会ったことがない、という人も多いといいます。私たちは都会での人間関係の希薄さにもう慣れてしまいましたが、それでも特に不都合はないからぜんぜん構わない、という人が多いのも事実です。しかしながら地方移住を考えた時に、近隣住民との交流を避けることはかなり困難です。それどころかデメリットが増えてしまうことさえも考えられます。今回は地方移住の課題の一つといわれる、地方での人間関係の対策について考えてみました。
地方移住のデメリットに必ず入る人間関係
地方移住に関わるさまざまなサイトで、移住のメリット・デメリットについて見ることができますが、ほとんどのサイトに入っているデメリットは以下の6つではないでしょうか。
1. 収入減・仕事がない
給与水準が都会より低い。希望する仕事がない。
2. 車社会
公共交通機関が少なく、車が必須。ガソリン代、保険代、整備代など経費がかかる。
3. 人間関係が濃い
都会より人間関係が濃厚で付き合いに疲れる。町内会、消防団なども面倒。
4. 買い物が不便
近くにスーパーやコンビニなどがない。店が早く閉まる。
5. 医療機関が遠い
近くに設備の整った病院がない。怪我や病気の時には不安。
6. 教育水準が都会と違う
教育水準が都会より低く、進学が不安。近くに塾もない。
こうして見ると、移住のデメリット（課題）だといわれているもののほとんどは、しっかりとしたリサーチをすれば移住前に判明するものであり、対策を事前に行えばデメリットの度合いを低減できるでしょう。
ただしこの中で、事前のリサーチが難しく実際に体験してみないと解らないことが一つあります。それは近隣住民とのお付き合いや人間関係です。会社でも「一番難しい仕事は人間関係だ」といわれるほど、人との関わりは面倒なことが多く、できれば余計な接触は避けたいと思うのが当然かもしれません。人間関係が濃厚で疲れる、というデメリットの理由も都会にいる人たちには納得できるものでしょう。
実際に地方（特に人口の少ない町村部など）では自治会や青年団、消防団の活動が盛んで、都会よりも確実に人間関係は濃いものとなります。ですがよく考えてみると、地方における人間関係の濃さはその土地の生活に必要だからこそ残っているものではないでしょうか。
なぜ地方では人との関わりが必要なのか
そもそも人口の少ない地方では、人との関わりを濃厚にすることで仲間意識を醸成し、いわゆる「よそもの」を排除したり、見慣れない人間を警戒したりということが行われています。これはネガティブに考えれば「閉鎖的」ということになりますが、言い換えれば一種のセキュリティ装置ともいえます。地方出身者が集まっている都市部では人口密度が高く「よそもの」が当たり前になっているので、そもそもこのようなセキュリティ装置は成り立ちません。
つまり地方における人間関係の濃さは、必要であったからこそ残ってきているものなのです。考え方を少し変えれば、いったん人間関係ができあがってしまえばこれほど心強いことはありません。地方暮らしで解らないことは近隣の人に聞けば解決することも多いでしょうし、場合によっては仕事の紹介など、人脈が拡がっていくことも考えられます。
また小さい子供がいるような移住者家族にとっては、このようなセキュリティ装置は不審者対策として、とても有効です。もしあなたが地方移住を計画していて人間関係に不安を感じているなら、最初から完全に拒否をしてしまうのではなく、その必要性をこのような観点から考え直してみてはいかがでしょうか。
できれば移住前に人間関係を構築しておく
とはいえ、やはりどのような近隣住民がいてどのような風土の土地なのか、不安を抱えたままの移住には抵抗もあるでしょう。ここでおすすめしたいのが、移住を歓迎するほとんどの地方自治体が用意している「移住体験」や「短期移住」を試してみることです。住みたい場所で体験ができるかどうかは自治体次第ですが、少なくともその土地の風土などは事前に体験ができます。
また何回か短期移住を繰り返すことで、事前にその土地での人間関係を構築しておくことも可能です。移住前に人間関係の構築がある程度できていれば、移住後の生活の安定もスムーズにできることでしょう。都市部からの移住者を歓迎する地方自治体では、さまざまな支援策や体験ツアー、相談会などを開催しています。移住者のために用意された支援策なので、遠慮なく使っていきましょう。
まとめ
そもそも地方に都会の便利さを求めることには矛盾があります。都会でのメリットと地方移住のメリットはトレードオフの関係（どちらかが成立すれば片方は成立しない関係）であり、どうしても地方でのデメリットを許容できなければ移住自体を考え直さなければなりません。
自分が移住しようとしている土地のメリットとデメリットを計画時に列挙して、トレードオフの関係をよく整理しておきましょう。
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